第二十一録:罪の跡 五節「一芝居。」
「…ヨリツグ、あれは近衛騎士だね。」
俺へ耳打ちしてきたウル、その様子から緊張が伝わってくる…
可能性は限りなく低いが戦闘になればどうなるかわからない。
「強いよな?」
「大まかだけど僕が二人いると思ってくれ」
魔力の残留がないウル、それなりにダメージの残る俺…
後衛のレミリアたちも魔力の消耗は激しい。最低限の警戒はするが
彼らはゴルドーさんの部下だ心配はいらないだろう。
「きょ、教官!?」
千木の驚きの声、この人たちが教官。
国をあげての異邦者の召喚だからだろう
わざわざ近衛騎士に教育と育成を任せているのか。
気だるそうな男はチラリと千木たちの無事を
確認し捕まっているのは霜田だけなのを認識。
「…君たちがゴルドーの…言っていた噂の2人か…」
青年からリブラーと呼ばれた気だるそうな男
ゴルドーさんから俺と夜天羅の事を聞いているなら好都合だ。
「あぁ、アンタたちは?」
「俺は近衛騎士団副団長リブラー・ロードル」
「僕は近衛騎士のロッカ・ペンタゴニアです」
副団長!?…いや、事態を見ればおかしくない
この霜田が招いた事態は霜田の独断専行。
この2人に伝えてここに来ていない。
それも大人数を巻き込んでだ
まぁ…それも教会のせいではあるが。
「…味方、でいいんだよな?」
嘘をつく可能性もある、だが俺は信じたい
ゴルドーさんの仲間であるこの二人を。
それが言葉としてでてしまう。
「それは…この状況の…説明次第かな…」
「僕たちは説明を求めます!」
俺は霜田が夜天羅の能力を
コピーしようとした事、危険なため気絶させた事。
そして魔法"聖痕"を掛けられている事をを話した
魔王ノ宿木については一旦伏せる。
「──なるほどな…教会の差金か…」
「ずいぶんと…舐められたものですね!」
近衛騎士たちも教会と
折り合いが悪いのか?明確な怒りを感じる。
「…その能力は…魔王ノ宿木…だな?」
唐突。夜天羅の邪気…魔王ノ宿木について言い当てられてしまう
それに対して僅かに動揺が漏れてしまった。
「当たりか…」
「っ!お前様!?」
ヒュン…風を切る音共に俺の本能がうるさいほど警鐘を鳴らす。
右、飛来するそれを視界に収める。
鉄球が俺の左顔面を捉える、即座に避け次の攻撃に備え刀を抜刀。
「ックソ!?」
なんだって襲ってきやがる!?
さらに眼前にはロッカがロングソードを構えていた、迎撃──
ガァン!!鉄がぶつかり音が爆ぜる、隣のウルがフォローに入る。
「助かった!」
「ハハ!いいさ!…で、これはどういうつもりだい?」
鍔迫り合いをしているウルとロッカ、睨み合う二人
俺はロッカに刀を振るう─はずだった
割り込んできたリブラーの鎖に邪魔をされウルと分断
俺は距離を詰めてきたリブラーへ刀を振るうが鎖で防がれる。
「アンタら──」
俺が怒りから文句の一つでも言おうとした時
リブラーは俺にだけ聞こえるように小声で話す
「理由は…アルカラドで後日話す…今は戦うふりをして撤退しろ。」
…何か、あちらも事情があるのか。
信用…できるか微妙なとこだが
戦力的にも今は逃げるしかないだろう。
「ッ!?」
危機を察知し飛び退くリブラー
その瞬間大地から黒い棘が生え無数に
分岐していき次第に壁が出来上がる…これはネローズの!
ウルの方を見る、アイコンタクトを
交わし刀を納刀、全速力で俺たちは森の方角へ走る。
言葉通り…か、無事に逃げる事ができすぐに馬車に飛び乗り出発。
混乱が頭を支配する、リブラー、ロッカの
反応から教会に対して敵対に近い何かなのは間違いない…
なのに襲ってきた、もしや教会は関係ないのか?
単純に霜田を保護する目的か?
それにしては対応が過激だ…不明な事が多すぎる…
「ヨリツグさん!一先ず治癒しますわ」
「あぁ助かる」
荷台に座りレミリアから治癒魔術を受ける
…こうして俺たちは慌ただしくアルカラドへの帰還を始めた。




