第二十一録:罪の跡 二節「罰光」
「この街は崩壊します、今は私たちが
何とか街のシステムを使い現状を保っています。」
「ならなおさら早く逃げますわよ!」
レミリアの言葉にエミリーは静かに首を左右に振る
拒否…隣で立っていたニックから煙が上がり膝をつく
「ニック!お前!」
「うるさいぞ人間」
崩壊を止めるためのシステム処理の
負荷が身体に影響を与え始めている。
エミリーはニックを支える、そのエミリー
にすら頭部の液晶にノイズが走りはじめている。
「なんで!ここまできてそれはないでしょ!?」
「だね…ニック、君は生きて向き合うべきだ」
そうだ、ウルの言う通りだこんなところで死なせてたまるものか。
俺たちが動き出したその時──
「うおっ!?」
「っ!」
突如一人でに起動したレーヴァテインが
俺たち全員を抱えて飛び始める、振り解けない!
今し方、全力の戦闘をした…余力がない!
「エミリー!ニック!」
夜天羅が叫ぶ、しかしその声は虚しく
空に消える…ザザッ、ノイズがレーヴァテインから聞こえる。
[ありがとう…ございます、みなさんのおかげで
私は目的を果たせました…思い残すことはもう…」
「まだ!あるだろ!?」
[安心してください、他の方々は事前に避難をされています。]
俺の言葉に反応がない、一方的にエミリーの言葉を受信している。
街が、エミリーとニックが遠ざかってゆく
どうしようもない状況を白い街が
消えてゆくのをただただ見守ることしかできない、歯がゆい
──街が崩れてゆく。
私は彼らにレーヴァテインを
託して崩れゆく街から脱出をさせた。
私は座り、ニックの頭を膝に置く。
彼は…私がシステムを起動した時それを
察知して私が潰れてしまわない様に庇った。
その時、私は彼があの頃のニックが戻ってきた気がした。
「…結局、僕は何も成せなかった挙句
僕のせいでドロシーを死なせ、君も巻き込んでしまった…」
「貴方が提案しなければドロシーとの
あの日々はあり得なかったわ、私は…いいのよ。」
死ぬのは怖い…でもニックを置いていくのは
それ以上に嫌だ、あぁ、そっかこれが──
「ニック、実はね──」
レーヴァテインは飛翔し渓谷から地上に上がった
俺たちを抱えたまま静かに着地、腕から解放される
「クソ!!」
行き場のない怒りを地面にぶつけた
救えなかった!俺の力ならできたはずだ!
救えたはずの命がこの手から滑り落ちた
自分が信じていたものが
ガラガラと崩れる様な虚無感が襲う。
「ままならないものだね…」
そう呟くウル、平静を装っているが強く握られ
震える拳は自身の不甲斐なさを悔いている様だ
重たい空気、暗い雰囲気、全員が
後悔に苛まれていた…そんな中。
夜天羅が慌てて俺の元へ来た。
「おま、お前様!」
「夜天羅…どうし──」
彼女のほうへ視線を向けた
俺は夜天羅が両手で抱えた者に驚く。
「私はドロシー!!」
夜天羅の腕の中のロボットはそう言って
ディスプレイに笑顔を作り手を振る。
「─ドロシーは生きているわ」
「なん…だっ…て?、そんな!そんなはずは!」
「貴方を止めた後に探したわ…
せめて弔ってあげたかったの…」
「そしたら…奇跡ね、消えかけの魂で
生きていたドロシーが居たわ
あの子は必死に生きようとしていた。
必死で繋ぎ止めたわ、自分自身を賭して…
回復するのに時間は掛かったちゃったけどね」
「そんな!…僕は!じゃあ!」
「私も貴方も…あの頃は無垢だったのよ…
疑う事を知らなかった。そう、プログラムされていた」
ニックにこの事を伏せていた理由
怒りに支配された彼に言っても
信じてはくれないだろう、むしろ怒りを加速させる。
だから彼を止めた。
「私は彼等を信頼してドロシーを託したわ…ちょっと強引だったけどね」
声を詰まらせるニック、それは次第に嗚咽へと変わってゆく
「あぁ!クソ!こんな!こんな身体じゃ、もう涙も流せない!!」
彼は両手で顔を覆う、無機質な顔とは真反対の感情…
これが、これが罰、あまりにも眩しく目が眩むほどの希望と言う名の罰。
「僕は!なんだってこんな!死なせることしかできなかった!」
「貴方が死なら私は生、私たちは
離れるべきじゃなかったの…あの時、私が離れてしま─」
「違う!断じてエミリーのせいなんかじゃない!」
「私はもう貴方から離れないわ…貴方の罪も罰も
一緒に背負っていきたい、あぁ、これが──」
私は彼を抱きしめて呟いた。
街が崩壊する轟音の中、私と彼だけが静寂に包まれた。
「──僕もだ」
プツンッ……二人のヒューマノイドの
電源が落ちた、すると崩壊が加速する。
街が瓦礫の山になってゆきついには全てが地中に沈んでゆく…
もはや誰も触れられない、埋もれた街。
悲劇のヒューマノイド、その心を知るものはもう
誰もいない…願わくば魂の輪廻の果ての再会を──




