表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第三章:アルカラド編
109/250

第二十一録:罪の跡 一節「終幕」

[エミリー!?なぜ─]

思わず振り返ったグングニルだが遅かった。

即座に変形したレーヴァテインは

ロスト・レクイエムを胴体に深々と突き立てた。

左手で刺さったレクイエムを握り引き抜こうと抵抗を見せる。

["ディープダウン"発動!]

リーン…鈴音が澄んだ音色が一度響いた。

その瞬間、グングニルの左手がダラリと力なく垂れ下がり

光を放っていた各部位のセンサーは暗くなり反応を示さなくなる。


「や!ヨリツグ!上手くいったかい?」

「あぁ…バッチリだ」

ニックの…グングニルの敗因はウルを放置したことだ

罰光を破壊して魔力がほとんど無い事で戦力外と判断した。

戦闘から外れたウルがエミリーとレーヴァテインの

応急処置をしたなど想像もしてなかったんだろう…

だから反応が遅れ決定打を受けてしまった。


ガシャンッ!!グングニルの頭部背面の装甲が外れ動きを見せた。

地面に落ちてきたそれは──

「やっぱり…そこにいたかニック」

戦闘の最中、ライカの願い星を発動前だ…

神聖防御があるにも関わらず、俺が投擲した

鉄棒を手で防いだ、その違和感は当たりだった。


「気安く…俺の名を口するな!!」

柏木博士の手記とは見た目が違う。

外見は人だったと記されていたが

目の前にいるニックはまさしく人形ロボットだ。

機械のフレーム、無機質な頭部、その表情はないのっぺらぼう。

[…ニック、貴方その姿!]

「穢らわしい人の皮など!とうの昔に捨てた!」


「そも!俺たちは人ではない!異邦神

 あの寺に残った魂の残骸そのリサイクルだ!」

エミリー、ニックの出自…

俺たちが訪れたあの廃寺に祀られていた神の残魂

その魂を使って生み出された試作品。

だから彼らは人より神に近い、研究の末生み出された魂の正体。


「ハハ!君はなぜ動けているんだい?」

エミリーが駆るレーヴァテインの

メインウェポン、ロスト・レクイエム

能力はディープダウン、あらゆるシステムを

強制的にシャットダウンする…

しかし目の前にはニックが立っている。

[…システムを頭部と胴体で独立させて

ディープダウンが効果を発揮する前に物理的に切り離したのね]

「…正解だ、一度それを喰らえば対策はする」


「で、どうするんだニックもう勝負はついたぜ?」

「僕たちも特段、君を殺す理由はない

 人類全滅をしないのであればね!」

「…貴様らに!なにが!」

怒り、怒り、怒り、ニックを支配する感情と言う名の化け物…

「…俺たちはお前の気持ちを理解できる」

「は?」

一瞬の唖然の後すぐに憤怒と怨嗟に塗れた

黒い感情を吐き出すように叫ぶ。

「貴様ァ!!人間が!俺から全てを奪い去った

 エゴの塊が!!理解できるだと!?ふざけるなァ!」

「いいや、できるさ…俺とウルにも

 世界なんざどうでもいいくらい大切な存在がいる。

 だからもし同じ目に合えば…正直お前みたいになってもおかしくない。」

「──ッ」


隣にいるウルも頷く。

そうだ、ニックの怒りも慟哭も理解はできる

夜天羅が殺される…そんなの想像もしたくない

なにより守れなかった自分を許せない。

「なら…なぜ俺を止めた!?」

「わからないかい?答えは君の後ろさ」

「ニック…」

不安そうな声がニックの背後から聞こえる

思わず振り返ったニックの後ろには

レーヴァテインから降りたエミリーがいた。


「お前にはまだ大切な存在がいるだろ」

「それに僕らはエミリーに頼まれたのは

 君を止めること、殺すことじゃない」

そう、俺たちはディープダウンの後も停止した

グングニルからニックを引き摺り下ろす予定だった

まさか対策して自力で脱出するとは思わなかったが。


…対峙するはニ千年の時を超えた二人

怒りに支配されていたニックは

今、明確に動揺している、今まで目を逸らしてきた考え。

一度でも彼女を意識してしまえば一度でも彼女に

許されてしまえば、怒りが揺らいでしまう、維持ができなくってしまう。

「ニック、私は…貴方を──」

ドンッ!街全体が揺れるほどの衝撃と地鳴り。

辺りを見渡すと夜天羅たちが急いでこちらに向かってきた。


「お前様!」

「ウル!ヤバイわ!街が!」

「てんじょーが落ちてくるー!?」

その報告に上を見る、確かに落ちてきている

派手な戦闘の影響か?なんにせよ脱出を──

「……と、止まりましたわ?」

地鳴りが収まり天井の崩落も止まった。

不可解な出来事に混乱する。


「みなさん…早くお逃げになってください」

「だな、話は後だ行くぞエミリー!ニック!」

二人に声を掛けて動くように促す。

だが二人は動かない、それに俺たちへ怒りを

向けていたニックは静かだ…明らかにおかしい

「ありがとうございます、でも…

 私たちはそちらへ行くことは叶いません。」

「何を言っておるんじゃ!?」


「いちいち聞くな、お前たち生物は気にしなくていい事を

 気にする…そしてこう言う"知らなければよかった"と…本当に嫌いだ」

悪態をつくニック、その様子はどこか

落ち着き払った様な…何かを諦めた様な声色。

エミリーとニック、二人の様子に嫌な予感が背筋を這う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ