第二十録:vs.グングニル 五節「音を置き去りに」
[くっ!このっ!!]
鳴り響く鉄の音、弾ける剣戟に火花が散る
俺とウルによる二対一の状況。
それでも拮抗しているのは機体の性能と
生身の様に機体と同期しているからだ。
さすがは高性能機、防衛の要。
正面戦闘を俺が担いながらウルが突撃を繰り出す
人形から変形して逃げ様にも追跡から逃れられない。
ニックの勝ち筋は一つだけ、夜天羅たちを見つけて魔法を解除する事のみ。
ただ、俺たちも攻めあぐねている。
攻撃が通る様にはなったが厄介なのは罰光…
それにあちらも本気を出している。
ゆえに拮抗状態、一進一退が続く。
「ハハ!しぶといね!」
「流石としか言いようがねぇな…うお!!」
陸橋を走る俺とウル、ビルに隠れたグングニルを追うが
次の瞬間、罰光がビルを薙ぎ払いながら迫ると
俺は上空にウルは地上へ避ける。
分断された、そうしてグングニルが
狙ってくきたのは空中にいる俺だった。
銃口が俺を捉える、俺はそれを悠然と見つめる
光が集光をしてゆく…だが文字通りの横槍が入る
ウルの突撃が罰光へヒットした。
[ぐっ!クソ!!]
衝撃で銃口が横に逸れてビルへ発射される。
瓦礫が降り注ぐ中、グングニルは上空に移動
瓦礫を足場に駆け上がり追う俺たち。
グングニルは銃口を向けると罰光を最大出力で
放つためにチャージを開始。
すぐにチャージは終わるだろう。
回避は間に合わない。
なら…このまま攻めるしかない!だが火力が足りない
神聖防御を無力化しても堅牢な魔術防御が邪魔をする。
「ハハ!ヨリツグ!アレは僕の全身全霊を持って阻止しよう!」
「どうする!?」
「この槍の本領をお見舞いしてやるのさ!」
不安定な足場、それをもろともしないウルのバランス
感覚この状態から全力の突撃をするつもりだ…
なら俺はそれを後押ししてやる
「ウル!俺が発射台になってやる!」
俺はどっしりと構えた、両手組む。
意図を理解したウルは俺の両手に足を乗せた。
「ヨリツグ!遠慮は?」
「いらねぇ!かましてやれ!!」
「だよね!!」
槍の内部が高速回転し唸りを上げ紫電が爆ぜる
あまりの回転数に赤熱してゆく槍の先端。
そして、ウル全体が紫電に包まれる。
ウルの動きに合わせて打ち上げる。
刹那…罰光が発射された、迫り来る死の極光
「"オーバーフロー・ライトニングボルト"」
[は?]
罰光と衝突したかに思われた次の瞬間ウルは罰光を
破壊してグングニルより上空へ滞空していた
置き去りにした雷鳴がウルを讃える歓声のように鳴り響く。
「ハハ!これヤバイね!魔力を
ほとんど持ってかれたよ!ヨリツグあとはよろしく!」
「おう、まかせろ」
罰光という最大の障害がウルと引き換えに取り除かれた、あとは──
[…罰光を破壊すれば勝てるとでも?]
ニックは自分が人間、それもたかだか数人に
追い詰められている。そのどうしようもない静かな憤り。
「勝てる、アイツが作った好機を無駄にするはずがないだろう?」
[…夢想を抱いて死ね]
マシンガンと剣を携え牽制に俺に発砲しながら
向かってくるグングニル、それを正面から迎え撃つ。
「そんな豆鉄砲が効くわけねぇだろ!!」
ノーガードで突っ込む。
解魔の瞳を全開放した俺には雨粒に等しい。
(コイツ!!さっきから!50口径だぞ!?
それも魔術強化済み弾を生身でッ!)
グングニルに接近、袈裟斬りで切り掛かる。
剣に接触、火花を散らす。
剣戟を繰り返す、互いにその全てを防ぎいなす
「やるなぁ!」
[ほざけ!お前は人であるデメリットを忘れているだろう!」
「なんだよ!もう負けた時の言い訳か?」
[っ!お前のスタミナは有限だが俺には
その上限がない!いずれはお前が押し負ける!」
「それまでお前が持つかな!?」
フェイントをかけた横薙ぎが腰部の翼を裂く。
たまらずバックブーストで後退。
[ッこの!?]
「逃がすかよ!!」
俺は追う、このまま攻めてグングニルを削る
その時、瓦礫が飛来する。
マシンガンが効かず質量で押しつぶしにきた
だがこの程度の瓦礫は難なく切り捨てる。
「がっ!?」
瓦礫ごと飛行形態に変形したグングニルが突っ込んでくる
回避が間に合わず間一髪防御を挟むが吹き飛ばされビルに激突。
「ぺっ…やるじゃねぇか」
血を吐き捨てる、一発には一発で返された。
眼前を見ると剣で突き刺しに来るグングニルが視界に入った。
回避─はしない、迎え撃つ。
刀を構え脚に力を溜め足場を壊す勢いで一気に駆ける。
グングニルの剣と俺の刀が衝突する。
その結果、魔術防御を制して刀が剣を引き裂き
勢いのままグングニルの右腕を両断。
「終わりだ!」
[まだだ!まだ!終わらせてなるものか!]
グングニルは左手を振りかぶり俺を叩き落とす
地面に激突するもののすぐに体勢を整える。
そのまま激情に任せたまま俺に突っ込んでくる
左腕の内蔵ブレードを展開し振り被る。
「いや…終わりだよ」
この戦いを終わらすのは俺じゃない、俺ではダメなんだ。
俺は視線をグングニルの背後へ向ける
その背後の上空から飛来するは黒い竜。




