第十九録:与えらたのは─ 三節「怒りと怨みを」
──義体は三日の調整を終え後は
ドロシーを接続するだけになった、しかし。
「おかしいね…もう約束の時間だ」
「あの子どこ行ったの?通信も応答なしよ」
朝からドロシーの姿が見えない、また施設内を
探検でもしているのかと思ったが今日は義体に
接続する日でこの時間に戻ってくる約束をした
「ドロシーは約束を破る子じゃない…探しに行こう!」
「そうね!」
私とニックは自室を出て手分けして研究所内を探し回る
建物内は個室などもあり一部屋づつ探すのは手間がかかる。
その間もドロシーへの通信を何度も試みている
しかし依然として応答はない。
1時間は施設内を探しただろうか…
ふと私はおかしな事に気がついてしまう
人が、人間が誰もいないのではある。
休暇期間は終わったはずだ、それなのに研究員が誰一人としていない。
違和感に気づくき異様な状況に恐怖と焦りが私を襲ってきた。
[…なぜ誰もいないんだ?]
通信をしていたニックも違和感に気がつく。
意味不明な状況にザワザワと胸騒ぎが大きくなっていく
悪趣味な実験、ドッキリ、あらゆる可能性を考えた。
[ニック、私は博士のラボへ行ってみるわ]
[わかった!一度博士とも合流しよう!僕も向かうよ]
そうして私たちは通信を繋げたまま
ラボへ向かう、ニックはラボまで遠く、逆に私は近い。
走りすぐに博士のラボへ到着する。
扉を開けて中へ入る、嫌に静かな部屋。
「柏木博士?」
名を呼んでみるも返答はない
博士もいないのだろうか…
「エ、ミリー…か?」
か細い声が奥から聞こえてくる。
私は急いで声の元へ駆けつけた、そこで目にしたのは──
「は、博士!?」
壁に背をもたれかけ地べたに座る柏木博士がいた
その…その腹部を抑えた手を見る、白衣や床を赤く染めていた。
私は博士に駆け寄ろうとした、だがそれは叶わない。
[ニック!は──]
バンッ!乾いた発砲音が鳴り響く、同時に私の頭の一部が弾ける。
…ここからは記憶ではない、私の非常用メモリが残した記録。
私を撃った人物は─
「…高性能なロボットでも人間に近づけるとこんなに鈍いのね」
「エミリー!!カ、カトレア!君は、うぐっ!なぜです!!」
「なぜ?私から計画を奪った日から
ずっと!ずっと!復讐を考えてた!」
私と柏木博士を撃ったのは絶叫するように
恨みつらみを発露させるカトレア副主任だった。
ドアが乱暴に開かれる音が響く。
「エミリー!博士!」
最悪のタイミングでニックが到着してしまう
彼はカトレアが私や博士を襲った事を知らない
私が頭を撃たれた際に通信が切れてしまっている。
「あら、来たのね被験体002遅かったわね…何もかも」
嫌な笑みを浮かべるカトレア副主任
ニックはこの状況を見て固まってしまう
「な、なにがどうなって!?か、カトレア副主任!二人を助けないと!」
「助ける?私がしたのに?」
再び言葉を失うニック、カトレア副主任の行動が理解できない。
「な、なぜ!?」
「アハハハ!!実験道具が生意気にも
対等に話しかけてくるんじゃないよ!!」
ニックに向けて発砲、しかし運良く回避したがその場に尻餅をつく
「や、やめ…なさい!カトレア!!復讐のために
計画をめちゃくちゃにするのですか!」
「計画?これは!こいつらは!アンタの計画であって私の計画ではない!!」
「だ、だから殺すのですか!!」
「殺す?破棄するだけよおかしな事を言うわね」
「…そんな考え方では、そんなあなたの方法では
この計画は絶対に成功し得ない。」
よろよろと立ち上がる博士
致命傷ではないが出血量は無視できない。
「知った風な口を…!」
怨嗟渦巻くドス黒い瞳が博士を睨む
「ッエミリー!!」
ニックは私の名を呼ぶも私は反応できない。
彼の表情は悲嘆に暮れた顔をしていた。
「気持ち悪いわ…人間でもないくせに」
カトレア副主任は心の底からの軽蔑をニックに向けて見下ろす。
「こんな!こんな事をしでかしてどうするおつもりですか!」
「アハハハ!アンタたちを始末するために
人払いをしたのよ?それに全部仕込み済みよ?
後はここを燃やせば証拠は残らないわ」
…施設内の火災により博士も、私たちも
事故で亡くなったと見せかける。
その後にカトレア副主任は本来の自身が
立案した計画を進めるつもりだろう。




