第十九録:与えらたのは─ 二節「溢れる幸せ」
私とニックは自室でドロシーの整備を始める
背面カバーを空けて内部パーツを露出
一部を魂を内蔵させるパーツに置換する。
内蔵させる魂は私とニックの魂を少しづつ分け
人工シナプスも同じく分けて内蔵。
作業自体は二、三時間で終わる。
「…このまま魂が馴染むまでドロシーは
スリープモードにしておくね」
「朝には起こせるからしら?」
「多分ね!しばらくは実験も何もない日だから
ゆっくりドロシーの様子を見てあげられる」
ちょうど休暇の時期もありこの四日間は
当直の職員しかいない、明日の当直は博士だ。
この日は少し寂しい日を過ごした
ニックと居るのは楽しいけどドロシーがいない。
次の日、違和感…いや声で目が覚めた。
「あ!エミリー!エミリー起きた!」
視界に入ってきたのはドロシーだった
それも電子的な声ではなく流暢に喋っている。
私はすぐに体を起こした
「ドロシー!起きたの!?」
スリープモードからの起動には外部スイッチを押す必要がある
もしやと思いニックを見てみるもまだベッドの上だった。
となればドロシーは自力で起動した事になる。
「すごいじゃない!」
ドロシーを抱えると笑顔の絵文字を表示した
私はすぐにニックを起こす。
「それは!すごいじゃないか!」
ニックにドロシーの現状を伝えると私と同じ反応をする
「ドロシーすごい?」
「あぁ!」
飛躍的に成長したドロシー
私たちはそれに喜びを分かち合った、まるで─。
その時、自室のドアが開いた
全員の視線が注がれる、現れたのは柏木博士。
ドロシーの事に夢中でノックに気が付かなかった。
「柏木!柏木!どうしたの?」
無邪気に止める暇もなく博士の足元に走って行ったドロシー
恐らく…博士ならドロシーの変化に気がついてしまう
私とニックに緊張が走る
「…ドロシー、順調に育っているようですね」
「ドロシー!元気!柏木は?」
「元気ですよ、年相応ですけど」
右手で腰を軽くたたく博士、何気ない一言さえ勘繰ってしまう。
「博士!今日はどうされたんですか?」
ニックが博士に訊ねた理由を問う。
その声色には少し焦りを感じる
「あぁそうだ、ちょっと付き合ってくれませんか?」
「僕ですか?」
「いいや、みんなです」
「柏木!ドロシー!も?」
「そうですよ、行きましょう」
博士はそう言って私たちについてくる様に促す
疑問に思いながらも後をついてゆく。
着いた場所は博士の個人ラボ
ここは研究所内で博士が借りている所だ。
ラボとは言ったが殆ど趣味の部屋。
中には工具とロボのパーツが至るところに鎮座している。
さらに進んだその奥の整備台には─
「君たちに見せたかったのはこれさ」
人形のロボットがいた。
顔はディスプレイ型でサイズは人間の
小児サイズのロボット…どこか、そう。
「ドロシー!ドロシーに似てる!」
「博士…これは?」
「ドロシーは元は趣味で制作していた
管理ロボなんです…まぁ管理と言っても私のですが。」
「で、その延長でお手伝いもして貰おうと人形ボディを
作っていました、それをドロシーにプレゼントです」
柔らかく優しさに溢れた笑みを浮かべる博士
魂…心が芽生えたドロシーが最初に触れた物だった。
「柏木!ありがとう!ありがとう!」
いつも以上にはしゃいで走り回る
「…ニック、エミリー、君たちがドロシーに
魂を分け与えた事はこの子を見てすぐにわかっていました。」
私たちは目を合わせた、やはり博士にはバレてしまっていた…
やはり生みの親には嘘をつけないようだ。
「すみません」
二人して頭を下げた
バレた以上素直に謝罪をするのが一番だ。
「あの─」
「それを理解した上で私はドロシーに義体を提供します」
「その…なぜですか?」
「私は今回の件については悪く捉えてはいません
むしろ良い兆候と思っています。」
「ただし、ドロシー?」
「なにー!」
「私以外の研究員にはバレない様にしてください、これは約束ですよ?」
博士は右手の小指をドロシーのアームに持たせる
あれは確か博士の故郷の約束の時にする動作だ。
「柏木!わかった!」
「とまぁ…色々と言いましたがこの義体は
まだお渡しできません、ドロシーに魂があるのなら
調整しなければなりませんしドロシー自身の
チェックもしましょう、手伝って頂けますか?」
私とニックは博士の提案に二つ返事をした
まだ…知らないこの数日後に地獄が
訪れる事を、この街が死ぬ事を誰も知らない。
閲覧ありがとうございます!
今日は投稿が遅い&短めになります
追記、加筆しました。




