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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第一章:旅立ち
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第一録:月の瞳と鬼 一節「家族」

目が覚める、時間はまだ早朝と呼ばれる時間

名残惜しいが心地の良い布団から起き上がり背伸びをした。

今日も良い目覚めから1日が始まる寝巻きからジャージに着替えて

洗面所へ向かい扉を開けて備え付けられた洗面台で歯磨きを済ませ玄関に向かう。


昔ながらの引き戸を開けるとカラカラと小気味良い音を鳴らす

一歩外に出ると柔らかな日差しと早朝の住んだ空気が自身を包み込む。

軽くストレッチを行い深呼吸をする、少し冷たい空気がは胃を満たした。

「よし」

気合いを入れて階段を小走りで降りてランニングへ向かう

毎朝の習慣としてランニングを行なっている。

体力作りもそうだがこの後の剣術の軽い練習の為の準備運動も兼ねてだ。


「おや覡さんの、おはよう」

「宮崎のばぁさん、おはよう」

ランニングを開始して少し走った所初老の女性に声を掛けられる

ご近所で檀家さんの宮崎さんに出会う、宮崎さんは飼っている犬の散歩中だ。

「今日も元気だねぇ」

「元気なのが取り柄みたいなもんす」

「それは羨ましいねぇ」

「あぁまた、旦那の月参りよろしくってお父さんに伝えておいてねぇ」

「りょーかい親父に言っとく、じゃ」

2、3言葉を交わしたあと再びランニングへ戻る。


20分ほど走り家に帰る、そのあとは境内の端で竹刀を軽く素振りと型の練習を

30分してから家に戻りシャワーを浴びる。

その後は高校の制服に着替えてから居間へ向かう。

居間に近づくに連れて食欲そそるいい匂いが漂う居間の扉を開ける、すると─

「おはよう縁嗣(よりつぐ)、ご飯できてるわよ」

キッチンからエプロンを取りながら出てきてのはお袋の(かんなぎ) 柳子(やなこ)

テーブルの椅子に座り新聞を広げているのは(かんなぎ) 宗高(むねたか)

「おはよう、縁嗣(よりつぐ)

俺の親父(ちちおや)にしてこの寺の住職、坊さんらしく頭を刈り上げて法衣を身につけている。

「おはようお袋、親父(おやじ)


にゃあ

足元から声がした、服越しでもわかる暖かでふわっとした感触。

見ると飼っている猫のコイスケが尻尾をピンと立て黒く艶やかな体毛で

足に擦り寄っていたこちらの視線に気がつき黄色の瞳がこちらを見つめてくる。

「コイスケもおはよう」

たまらず抱き上げるとゴロゴロと喉鳴らし嬉しそうに目を細めていた

家族に挨拶を済ませて自分の席に座る。

対面キッチンの腰壁にある定位置にコイスケを座らせる。

コイスケは賢い、この位置以外の場所には登らず壁を引っかいたりなど

イタズラをしない猫だ元野良とは思えない。


「いただきます」

挨拶とともに家族で食卓を囲む

今日は焼き魚、卵焼き、味噌汁と王道だが手間暇がかかったメニュー、母に感謝。

「あ、親父(おやじ)、宮崎さんが月参りよろしくだってよ」

今朝の出来事を親父にそのまま伝えた

うちでは食事中の会話は特に禁止はされていない。

もちろん口に物を含んでは御法度だが

父曰く団欒は言葉を交わすことから始まる。

「そうか、今月だな…よろしく頼まれた」

にかっと快活な笑顔を見せる。


「はいあなたあ〜ん」

「あーん」

お袋は笑顔で親父(おやじ)に卵焼きを差し出すと

嬉しそうに差し出された卵焼きを頬張る、それを見てニコニコするお袋。

「やめてくれよお袋…」

朝から親がイチャイチャしてるとこを見させられる年頃の息子の身になってくれ。

「なにおう、毎日だからいいじゃないか」

「縁嗣も結婚すればわかるわよ」

「「ねー」」

息ぴったりに相槌を打つ夫婦

毎日朝から色々としんどいんだ、たまに愚痴を言うくらい許してくれ。


「グレない俺は偉いよ…」

「お前は俺たちの息子だぞ非行に走るわけないだろう」

「縁嗣は自慢の息子よ」

何故か俺を褒める方向にシフトした二人

むず痒いが悪い気はしないむしろおだてられてちょっと機嫌がよくなる。

…なんかちょろいな俺

「はいはい、ありがとごちそうさま」

俺は朝食を食べ終わり箸を置く席を立ち食器をシンクに持っていき水に浸す。

「あらー今日も早いわね、じゃあいつも通り()()

 お弁当持って行ってあげて」

キッチンには保温ができるタイプの弁当箱が置いてある

俺はそれを手に持ちキッチンを後にした。


「…()()も早く出てこれれば良いんだがな」

「しょうがねぇよ…あれからまだ一年しか経ってないんだぜ?」

()()はまだ外には出れない。

「…なんせお前の”恋人”だからな」

親父はここぞとばかりにニヤニヤと笑みを浮かべている

お袋に至っては暖かい眼差しで俺をみる。

「…ンだよ」

ちょっとムスッとした声が出る

「いんや〜何もないよなぁ〜母さん」

「えぇ、私達と同じじゃないなんて思ってないわよ〜」

白々しいセリフ、白々しい表情を見せる両親二人。

このッ…!年中花畑夫婦がッ!


「彼女との時間増やすためにわざわざ早く起きてるなんて

 そんな事口が裂けても言えないわ〜」

お袋から致命的な一撃を喰らわせられる途端に顔に熱を感じ両親から顔を背ける。

「…行ってきます!!」

これ以上なにか言われる前に会話を切り上げ居間の扉を開ける。

「行ってらっしゃい」

両親の言葉を背に受け扉を閉める

顔は見えないが笑顔で見送ってるんだろう。

「…ほんといい子に育ったわ」

「あぁ、そうだな…頑張れよ縁継」

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― 新着の感想 ―
ごく普通の日常から始まるかと思いきや少しずつ明かされる秘密の片鱗に引き込まれました。家族との温かいやり取りやコイスケとの触れ合いに心が和みますが終盤の彼女に関する描写が百点満点です!このあとどうなるん…
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