現実逃避中
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豪華なんだか、質素なんだか。
スイートルームなんだか、牢獄なんだか。
振り幅が大きすぎて、どっちが正解か分からない。
天蓋付きの白い大きなベッドは王子様仕様。繊細な模様のレース飾り付き。
でも、その横にある大きな窓は格子付きで牢獄仕様。
座面から背面まで真っ白で縁取りは金色の大きなアームチェアは王子様仕様。もちろんオットマンもお揃いだし。
でも、その正面の壁はセメントがボロボロと崩れ落ちていて、触れるとたぶん手を切るようなちょっと危険な牢獄仕様。
そんな、ちぐはぐは部屋で。
かなり、ちぐはぐな二人の会話。
「ずっと一人なの?いつから?」
「さあ。分からないな。くろたえ姉さまと離れ離れになって、長い時間が過ぎたよ。」
「くろたえねえさま・・?しろたえは、弟くんなんだね。」
「おとうとくん・・?あ、それいいね。ぼくは、おとうとくん。それでいこう」
「・・いいけど。で、お姉さんは、どこにいるの?」
「さあ。分からないな。あ、でも、はっきり分かっていることもある。」
「あるんだ・・。なに?」
「君を送信してくれたのは、くろたえ姉さまだってこと。これまでいくつか失敗もあったけどね。いつか必ずわたくしの元に、男児をひとり、送信してくれるって約束してくれた。くろたえ姉さまは、必ず約束を守ってくれる。これで証明できたね。」
「できたね、じゃないよ!えっ?えぇぇぇ!なに?送信ってなに?男児をひとり、って言い方が震えるほど怖いよ。それより!失敗ってなに?いくつかの失敗ってなに?どういうこと?」
「質問が多すぎて困ってしまうね。」
白い王子様は、またもや極上の笑顔でそう言った。




