保健室再び、再び
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こむらさきが送信を見届けたあとの、保健室。
1台のベッドの真ん中あたりに、それの名残りがゆらめいていた。
それの名残り―空間のたわみ+ゆがみ。
正常な座標を示す正常な空間は、それに引きずられて、たわみやゆがみが生じる。
周囲の空間は、慣性によって、それに、引きずられ、引っ張られる。
それ―時間的閉曲線。CTC。
量子情報ならば、比較的簡単に情報送信が可能になった、ここ裏国において、量子情報ではないものを送信することは、原則、禁じられている。あくまでも、原則、だが。
その名残りは、量子情報ではないものを送信したことの、唯一の証拠。
空間に一時的な歪みは生じるが、それは、すぐに元に戻る。何もなかったかのように。
ゆえに、それが消滅してしまえば、何も残らない。文字通り、名残りも何も残りはしないのだ。原則として、量子情報ではないものの送信は禁じられているのだから、証拠なんて、ないに越したことはない。
おおむらさきは、それが残っていないことを確認するために、保健室に来たのだ。それが、おおむらさきの責務、業務、仕事。
彼女は、名残りが消えたことを目視確認し、ベッドを整え(少し乱れていた)、医療ワゴンの上の小物類―脱脂綿や体温計を所定の位置に戻し(少しズレていた)、体重計(アナログにも程がある)を一瞥して保健室を出る。扉にはもちろん鍵をかけた。
そして、おおむらさきは、ふうっと一息ついた。これで、一件落着。元通り




