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司書雑談

56 

「まったく。こむらきは小生意気(こなまいき)なのよ。“黒縁”だからって、威張っちゃって。」

せいらんは、ブツブツつぶやきながら、自分の持ち場に戻るべく、螺旋(らせん)階段を上っていた。

「なにがコスパよ。コスパなんてうっちゃっておけばいいのよ。だいたい、タイパって何よ。新しいつるつる言葉でしょ。そういうのは、裏国には似合わないのよ。そういうのとは別の次元で、私たちは、業務を遂行してるんだから。」

「せいらんたら、かなり頭に血が上ってるわね。落ち着きなさい。気を付けないと、足、(くじ)くわよ。」

「どうして、あおやぎはそんなに落ち着いていられるの?小生意気なこむさきのこと、どう思ってるの?だいたい、あのこは昔から・・」

「それ、韻を踏んでるの?」

「韻なんか踏んでないわよ。何言ってるのよ。呑気なんだから。くれない?黙り込んでどうしたの?おなか痛いの?」

「・・・空調が滞ってるって言われて・・反省してる。はやく戻ってチェックしたい気持ちが抑えられない。」

「私も同じよ、くれない。ブッカーが滞ってるなんて言われたら、平気じゃいられないわ。」

3人は、後になり先になり、それぞれの速度で螺旋階段を上がっていく。

「ところで、“つるつる言葉”ってなに?」

「あら、知らないの?井上ひさし大先生が最初に使ったーって言われてるんだけど。つまり、流行語のように広く浅く使われているうちに、その言葉の本来の意味や豊かなニュアンスが失われ、注意を引くことなく聞き流される言葉、のこと。」

「なるほど、言い得て妙ね。大切なものが、つるつると滑り落ちていくイメージを端的に言い表している、さすがは井上ひさしだわ。」

「ねぇ・・ところで・・」

「うん・・」


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