銀縁メガネと大量の・・
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あっち側に突入しても、何も変わらない。灰色セメント床が続いてるだけ。突拍子もない何かが待ち受けているわけじゃなかった。強いて言えば、ちょっとだけ、匂いが、かわった。
外の匂いじゃない、匂い。僕らの小屋の中の匂いに近いような・・古いモノたちが発する匂い。三人横並びでくんくんしてたら、いつの間にか、人がいる。え?いつの間に?じゃなくて、誰?
「あー、やっぱり入って来ちゃったんだね。そのうちきっと入ってくるよーって言ったのよ、わたしは。」
「えーと、え?やっぱり?そのうち?」
「やっぱりはやっぱりで、そのうちはそのうちよ。で、門限はあるの?ないの?」
「え?もんげんって門限?なんで?」
「門限は門限よ。叱られるでしょ、門限破ったら。それによって案内ルートが変わってくるから聞いてるのよ、わたしは。」
「え?案内ルート?なに?なんで?」
「疑問形で返すの、やめてくれないかな。話が前に進まない。時間だけが進んじゃうわよ。とりあえず、最短コースで案内するから、ついてきて。」
「はい、ついていきます。」って優等生的返事したのは、みちる。いずれにせよ、僕もあおいもついていくつもりはあったから、反対意見はでないけど。これって、十分に突拍子もないことっぽいけど、それにしては空気感が普通すぎて、どう反応していいか迷う。
銀縁メガネの女の人について、ずんずんてくてく歩いていく。前方に、また改札口があって、女の人が首から下げたカードでピっとする、ゲートが開いて、その奥にある大きな半透明の自動扉が開いた。
「うっわぁぁー・・」
灰色セメント床大空間に、何本ものベルトコンベアと、何人ものメガネの女の人。そして、壁面を埋め尽くすのは、巨大本棚と無数の本たちだった。