枯れた噴水の下には何が眠っていた!?
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干からびて灰色になったセメントがひび割れて、部分的に亀裂が走っている。それを、ちょっとずつはがすのが僕らの楽しみ。かさぶたをちょっとずつはがすような快感。はがしすぎると血が滲んで痛くなるってわかってるのに、止められない。
セメントは薄っぺらくてぺりぺりめくれる。ちょっと爪を立ててぺりぺり、ぺりぺり。止まらない。ちょっとだけ伸びた爪の先ににセメントの薄い水色のかけらが入り込む。
三人で横並びでうずくまったような姿勢で噴水の底のかさぶたをはがし続ける。ぺりぺりぺりぺり・・と。ボコっと中指が虚空を引搔いた。
ん?あな?小さな穴の中にセメントの欠片が落ちていく。穴の中にポロポロと噴水の底のセメントの欠片が吸い込まれるように落ちていく・・。
小さな穴がだんだん大きく広がって、僕らまで落ちる?いや、そんなはず・・え?
これって、もしかしたら異世界への入り口?いや、異世界って、そんな手垢のついたようなワード、自分が思い浮かべるなんて馬鹿なそんな馬鹿なそんな・・。
梯子だった。錆びた鉄製の梯子が下に。地下にむかって伸びている。セメントの欠片がパラパラ落ちる。覗き込むと、真っ暗闇・・じゃない。うす暗い、程度。
噴水の底を爪で引搔いてたら、地下空間への梯子出現・・。ここはいったん考えよう。しばし三人で沈思黙考。と、みちるが最初に正気に戻った。あ、今日は皆既日食だって。