ブッカーの才能
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で、一週間、ぼくらは、来る日も来る日も、ブッカー漬けの毎日。
シャー、シャーー、ぺりぺりぺりぺり。シャー、ぺりぺり。すぅー、とんとん。
シャー、シャーー、ぺりぺりぺりぺり。シャー、ぺりぺり。すぅー、とんとん。
これがなんと、かなり楽しい。黙々と一人で作業するのは好きだから(丸い石だけをひたすら拾うとか、新聞と広告を別々ににしてそれぞれ束ねるとか)きっと、ぼくら向きの仕事だったんだとは思うけど。なんて言うか、本が“整っていく”様を見るのは、とても気持の良いことだった。しかも、自分たちの手で。もちろん、仕上がりはあおやぎさんの足元にも及ばないけど。
「うん、なかなかいいじゃない。ぼく、才能あるかもね。」
「え?才能?なんの才能・・ですか?」
「決まってるじゃない。ブッカーの才能よ。」
「ブッカーの・・才能って・・」
「ブッカーってね、実は才能を要する作業なのよ。どんなことにでも言えることだけれど、ある程度のレベルまでは、鍛錬すれば到達できる、誰だって。でもね、いくら鍛錬しても、練習しても、走りこんでも、素振りしても、超えられない一線が、あるの。」
「超えられない、一線・・」
「そう、限られた人にしか踏み出せない地平がある。その、特別な地平に立っているわたしをして、才能あるかもーって言わしめたんだから、信じていいのよ、素直にね。」
「はい。信じます、素直に。」
「よろしい。ちなみに、素直も才能のひとつよ。どうしても素直になれない人って、存在するのよ、この世にはね。それはとっても不幸なことだけど、仕方がないこともあるのよ、この世にはね。」
そう言って、あおやぎさんは仕上げた1冊をブックバスケットに入れた。1冊につき、1バスケット。そのバスケットをブッカー部屋に付属してる小部屋に持って行く。まるで、ウォークインクローゼットのような。その小さなスペースには、ベルトコンベアが設置されていて、ブックバスケットをベルトにのせると、本たちは、ゆっくりと次の工程へと運ばれていく。ぼくらは、ウォークインクローゼットの中に入ったことはないけれど(つまり、ベルトコンベアにブックバスケットをのせたことはないのだ)扉はないから、本たちが運ばれていく様子はよく見える。
「さあ、今日のぼくの仕事はここまで。ブッカーの仕事も今日まで。明日からは、また別の仕事よ。」
「え・・?クビ・・ですか?なんで?」
「そうじゃないの。裏国には、様々な仕事あって、色々な部署があるの。だから、ずっとひとつところに留まるんじゃなくて、全体を見渡すってことが必要なの。」
「でも、ぼくら、ブッカーすきだし、それに才能も・・」
「そうね、確かに、ぼくはブッカーがすきみたいだし、わたしも才能あるかも、とは言ったわ。でも、まだ始まったばかりよ。」
「え?」
「まずは、全体を見渡してみて。また戻ってくることもできるんだから。さあ、右手を出して。」
そう言って、あおやぎさんは、緑色の小さな石を、僕のてのひらに埋め込んだ。




