あおやぎさんⅡ
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部屋の中は静かで(ここはだいたいどこも静かだ)、あおやぎさんが透明フィルムを切るときのシャーって音だけがきこえる。
シャー、シャーー、ぺりぺりぺりぺり。シャー、ぺりぺり。すぅー、とんとん。
長方形に切られたフィルムの上に本を載せて、丁寧に包んでいく。縁で折り返して余分なフィルムを切り落とし、角は木べらを使ってきっちり整える。空気が入って、本が水膨れみたいにならないように、版画で使うばれんのような道具を、何度か本の表面を滑らせる。最後に両てのひらで本全体をくるりとひと撫でし、フィニッシュ。カウンタ右端のブックバスケットに入れていく。一連の作業にはよどみがなくて、見ていると気持ちがいい。
本は、大きさも厚みもさまざまだけれど、工程は、すべて同じだ。
あおやぎさんの両手には、いっさいの迷いがなくて、潔い。ずっと見ていたくなる。同じ手が、同じ作業するのを、ずっと見ていると、軽い目眩とともに、時間の感覚が麻痺して・・
「さて、だいたいの手順はわかったかしら?」
はっとした。え?ぼくら、今、寝ちゃってた?そんなはずない。あおやぎさんを、あおやぎさんの作業を、ずっと見てたんだから、寝るはずなんてないのに。でも、夢をみていて、その夢から覚めたような錯覚を覚えて、ぼくは、はっとした。
「ご、ごめんなさい。ちょっと、ぼーっとしちゃってて・・あの、でも、ちゃんと見てました。」
「そうね、ちゃんと見てたのは知ってる。そんなにあたふたしなくて大丈夫。さあ、こっちに来て。手取り足取り、指導してあげるから。」あおやぎさんは、そう言って、微笑った




