牛の糞にも段々があるんで
気分がくさくさしている。苛つくっちゃないぜ。だが、それはおれにとってそれほど悪い状態ではない。おれは怒るのが好きなんだ。自分の怒りを楽しむことができるんだ。もちろん、そいつを安易に他人にぶつけたりはしない。おれは怒りを身体の中でこねくり回すだけだ。怒りの粘土をいじくって遊ぶんだ。物心ついた頃から、ずっとそうやって、ひとりの時を過ごしてきたんだ。
そんなおれを小馬鹿にして嘲笑うやつだっているだろう。一匹見つけたら三十匹いると思え、だ。はん、数だけ多いゴキブリどもめ。おれはいつだってたった一匹だ。なにをどう評されたってどうだっていい。
ただ怒るだけだ。口を慎め。礼儀をわきまえろ。おれを誰と間違えているんだ。おまえが今まで相手にしてきた弱っちい雑魚どもと、おれを一緒にしてくれるなよ。おれはとても優しく気高いから、おまえがおれにしてきたような、個人的なものを傷つけようとする卑劣な言葉の暴力を、おまえにそのままやり返すようなダサい真似はしないが、おれは怒っている。
当たり前の話だ。怒らないわけがあるか。おれをなんだと思っているんだ。随分と舐めたことをしてくれたものだ。おまえの罪はその一点だ。おれを舐めやがった。反省しろ。鏡の前で正座していろ。なんでもわかっている風を吹かしてしまう、おまえのそのツラの醜さに自らが気づくまで、そこでじっとしていろ。個人のやり方に無遠慮に口出ししてしまう、その悪癖の悪どさをしっかりと自覚しろ。的外れな分析を嬉々として披露するだけが能じゃないだろう。あまりはしゃぐなよ。こっちが恥ずかしくなっちまうくらいみっともないぜ。
強烈な光線に目が眩んだ。終わりは訪れない。少なくとも文字によって、おわり、おしまい、完、終劇、そう綴ったとしても、決してそこで終わるわけではない。どこまでも続いてゆくか、あるいは始まりに戻ってしまうか。そして始まりすらも、またまやかしであって、遡ろうとすれば始まりのその前、さらにその前……どこまでだって遡れてしまうのだった。そこに虚空を感じたとしても、虚空がすべてを覆ってしまうわけではなく、虚空を感じた瞬間からなにかが確かに宿っているのだ。
宿りしものに希望を見出す。おれをどこまでも引っ張っていってくれ。そう願う。だが、その願いが叶えられることはないだろう。なにも引っ張ってくれたりはしない。後押しなどを期待しても無駄なのだ。自らの足でもって踏み越えなければならない。もちろん、旅の途中で出会った旅人の力を借りることもあるだろう。意気投合し、少なくない数の夜を共にすることもあるかもしれない。しかし、やがては道が分かれることとなる。そこで道を違え、それぞれがそれぞれの、光線が指し示す道を、半信半疑で進んでゆく他ないのだった。
信じられるものなどない。あるならとっくに信じている。とっくに殉じて、消え去っている。おれはまだここにいる。それこそが、なにも信じることのできていない何よりの証拠だ。信じることは、救いか、あるいは罪か。おれの足下は信じるに足る強度をもっているのか。信用などできるわけがない。次の一歩で、奈落の底へと落ちてゆくことは十分にあり得ることだ。
そして落ちた先でも、また一歩目を踏み出すことになる。それを始まりだと言うのなら、それはそうだし、終わりだと言うのならそれもそうなのかもしれない。区切りをつけるのは自由だ。各々好きにすればいい。それでもやっぱり続いてゆくのだった。拒否はできない。続くのだ。どうしても。
まるで煉獄だ。まるで? いや、煉獄そのものだ。……と言ったような、ありきたりな話をするために、おれは書いているわけじゃない。行ったり来たりの繰り返しは認める。では問おう。それ以外になにができる? それ以外の方法がどこに?
ちくしょう、またムカついてきた。「何してんだよお前?」だと、このやろう! わからないなら黙っていろ、こんちくしょうめ。おれだってわからないんだから。「ごめん。ごめん。ちょっと無礼だったわ」じゃないんだよ。ちょっとどころじゃない、無礼極まりないだろうが。お話にならんくらい無礼だろうが。無礼なんて軽く飛び越えて、不様の域に到達している。
よくもまあ、土足でここまでズカズカと踏み込んでくるものだよ。個人領域認識範囲に深刻なバグが発生しているな。おれの懐の深さを期待してのことなのかもしれないが、もちろんおれの懐がそこいらのやつよりも奥深いのは確かなんだが、不条理な乱暴狼藉を働くやつを微笑みながら見守っているのは、懐が深いと言うより、ただの間抜けだ。やるときゃやるだろう。迎撃態勢をとるだろう。通り魔に黙って刺されっ放しのやつがいるわけがない。たとえ敵わないにしても、抵抗はする。最後まで抗う。サンドバッグじゃないんだ。おもしろ半分で殴られてたまるか。にやけヅラに屈してられるか。退屈で趣味の悪い冗談に付き合って笑ってやる道理などはない。
笑いながら振るわれる暴力。これほど醜く悪辣なものはない。だがそんなやつらばかりだ。へらへらしていれば暴力は許されるとでも考えているのだろうか。イカレてんな。
おれは生き抜くための暴力や、怒りからくる暴力にはある程度の理解を持っている。それは個人として大事にしているものを守る手段でもあるからだ。だが、笑いながらの暴力には100パーセントのNOを叩きつけたい。
そういうことをするやつはなんでも馬鹿にして笑う。どんな時でも笑っている。怒りに震える者を見て笑い、嘆き悲しむ者を見て笑う。困窮している者を笑い、自分の道を歩こうとする者を笑う。とことん馬鹿にしてやがるんだ。不真面目が過ぎるんだ。舐めくさってやがるんだ。芯の芯まで腐っているんだ。
そんなに自分を勝者だと思い込んでいたいのか。そこまでして自分の強さをアピールしたいのか。臆病で卑怯でひとりぼっちの自分を認めることがそんなに嫌なのか。
弱いんだ、おまえらは。怖いんだ、おまえらは。不安で不安でたまらないくせに、へらへらふざけて、憎まれ口を叩いて、虚勢を張ることしかできない。だからおれは言うんだよ。雑魚。弱虫。カス。ゴミ。クズ。クソ。くたばれ。消え失せろ。
少年マンガの第一話で主人公に1ページでのされる名もなきチンピラのような連中。でもおまえらは存在しているんだろう。ちゃんとそこにいて、生きているんだろう。どうしてそこまで堕ちてゆけるんだ。下劣で嫌らしいものに巻かれながら我慢ができるんだ。恥ずかしくないの? そこがいいの? 気持ちがいいの? 安心できるの? 汚泥の中がそんなに? 高潔なおれにはさっぱり理解ができんな。欠片も理解ができん。まあ、おまえらもおれのような人間が理解できないのだろうがな。理解して欲しいとも思わない。近寄っても欲しくない。その汚い手でおれに触れるな。おれの心が傷つく。出来ればおれの目の届かないところに潜んでいて欲しいのだが、連中、目立つことが大好きなんだ。まったく困ったもんだよ。
つまりはまあそういうことだ。マジでガチなやつらには(笑)も、wwwも、通用しないんだ。そんなへなちょこな攻撃が効いているなんてのは、まったくの勘違いであるということにいい加減気づいたらどうなんだ。そんなインチキが通じるのはクソ同士だけだということ。腰の入っていない上体だけのテレフォンパンチには、すぐさま強烈なカウンターが飛んでくること。そして、おまえらは本当に弱くて弱くて、どうしようもないということ。いい加減に気づいたらどうなんだよ。




