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悪女と呼ばれた私、転生先でも悪役です  作者: 小乃マル


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ある動画投稿サイト上の告白

「はーい、どもども! 突撃ちゃんねるのマコトでーす! 今回も、今話題の人物にインタビューしていきたいと思いまーす!」


『よろしくお願いします』


「はーい、よろしくお願いします。今回は顔出しNGとのことなんですが、できる範囲で自己紹介をどうぞ!」


『現在看護師をしています。今世間を賑わせている“金成絵莉朱”の友人です』


「なんと! 金成絵莉朱さんといえば、週刊誌では“悪女”とも呼ばれていますけれど、少し前には彼女のお母様のSNSでの告白も話題になっていましたね?」


『はい。あの投稿に関して、偽物だという意見も多くあるようですけれど、私は事実だと思っています。高校生の頃、彼女から聞いた話とそっくりでしたから』


「なーるほどですね。それで、今日はどういった内容をお話ししていただけるのでしょうか?」


『少し前に発売された週刊誌の内容について、ぜひとも視聴者の方々に聞いていただきたいと思って来ました』


「この週刊誌ですねー。…“悪女:金成絵莉朱の学生時代②”? かなりショッキングな内容でしたが、この記事が何か?」


『はい。実は、この中に登場する“素行の良くない友人”は、私のことなのです』


「ええっ! なんと言うか…意外ですね。とても真面目そうな方に見えるのに」


『更生したんですよ。一時は、不良の真似事をしている時もありました』


「その時代に、金成絵莉朱さんとつるんでいたということですか?」


『ええ、まあ』


「喧嘩をしたり?」


『ああ。ただ、こちらから手を出したことはありませんよ。派手な見た目のせいで絡まれることが多くて…。最終的には手が出てしまうこともあったので、言い訳にしかなりませんけど』


「喫煙を注意してきた相手を殴ったというのは?」


『「おまえらみたいな人間の親も、どうしようもないクズなんだろうな」って言葉が、注意なんですかね? そう言ってきた相手と揉めて、その時に少し手がぶつかったことはありますよ』


「なるほど。その辺りの内容も、事実と違う部分がありそうですね。それで、“聞いていただきたいこと”とは、具体的にどんな話でしょうか?」


『週刊誌に書かれているこの事件…、“とある女子生徒を不登校に追い込んだ”と書かれている事件。あれ、誤解なんです』


「誤解…ですか?」


『はい。まず最初に言っておきますが、被害者とされている子…伊井野さんと言うんですけれど、その子が学校に来なくなったのは、病気のせいなんです』


「学校に通えなくなるほどの病気ということは、かなり深刻なものだったのですか?」


『昔から身体が弱かったみたいで、中学生までは碌に学校にも通えていなかったと聞きました。高校生の時にはすでに、余命宣告が出ているような状態だったそうです』


「そんな状態で、なぜ高校に?」


『「学校に通うのが夢だった」と、本人からは聞いています。彼女のご両親も、できる限り彼女の希望を叶えてやりたかったと、おっしゃっていました』


「そうなんですか…。でも、金成絵莉朱さんがその子を泣かせていたのは本当なんでしょ? 不登校の直接の原因ではなかったかもしれませんが、余命僅かのその子をいたぶったという意味では、むしろ週刊誌の内容よりも悪質さが増してません?」


『だから、それが誤解なんですよ。絵莉朱はその子に何も酷いことはしていません。彼女を傷つけたのは、私だったんです』


「…どういうことですか?」


『“病気だった”って言ったでしょ? 彼女、薬の副作用で頭髪が抜け落ちてたんです。鬘は被っていましたが、私がそれに気づいてしまって。…馬鹿ですよね、揶揄ってしまったんです』


「ああ…」


『「鬘じゃん。ってことは禿げてんの? うわ、うけるー」って。その時言った言葉そのまま、一字一句覚えています』


「それは…。高校生だとはいえ心無い発言ですね」


『本当に。あの時の自分を、殴ってやりたいですよ』


「それで? あなたの発言で伊井野さんは泣いてしまったと?」


『いいえ。彼女、実はかなり強い子で。後から聞いた話によると、そう言われることも想定して通学していたらしいです。だからその時も、彼女は顔面蒼白になりながらも、しっかりと背筋を伸ばしていました』


「ということは、この週刊誌の内容はでたらめだということですか?」


『いえ。絵莉朱が伊井野さんを泣かせてしまったのは本当です』


「どういうことですか?」


『私の発言を聞いて、絵莉朱がめちゃくちゃ怒ったんです。「鬘で何が悪いの?」「この子の事情を知りもしないのに、何笑ってんの」とか言って』


「じゃあ、週刊誌に書かれている“罵倒”というのは…」


『私に向けられたものですね。「おまえみたいなのがいるから世の中が悪くなる」って言われた時は、さすがにぎょっとしました。普段そんな善人キャラでもない絵莉朱が、なんで赤の他人のためにこんなに怒ってるんだろうって』


「ということは…」


『そうです。伊井野さんも、まさか絵莉朱がそんなに必死に庇ってくれると思ってなかったらしくて。嬉しくて泣いてしまったと言っていました』


「じゃあ、どうしてその感動的な話が、ここまで曲解して伝わっているのでしょう?」


『…誰も信じてくれなかったからですよ』


「はい?」


『職員室に連れて行かれて、私も今日と同じことを言いました。けれども、誰も信じてくれなかったんです。先生には「おまえらが問題児だってことは聞いている」とか言われて。幸いにも、私は親には信じてもらえました。けれども絵莉朱は…』


「親からも信じてもらえなかった、と?」


『その通りです。絵莉朱、昔から誤解されることが多かったみたいで。職員室に連れて行かれた時、絵莉朱がなんて言ったと思います? 「もういいよ、それで」ですよ。なんの感情も籠っていないその声を聞いて、ぞっとしたのを覚えています』


「金成絵莉朱さん自身が、誤解を解くのを諦めてしまっていたんですね」


『はい。だから、絵莉朱の母親が書いたというSNSを見て、私は何かが繋がったような気がしたんです。きっと誰も、彼女に手を差し伸べてこなかったんだろうなって。絵莉朱は、“悪”にされることに慣れ過ぎてしまってたんだなって』


「金成絵莉朱さんも、ある意味では被害者だったんですね」


『私はそう思っています。その後、私はすぐに学校に戻ることができましたが、絵莉朱はそのまま学校を辞めてしまいました。それから、彼女には会っていません』


「そうだったんですか…。その事件の後、あなたはどのように過ごしてらしたんですか?」


『あの事件がきっかけで、伊井野さんと関わるようになりました。再入院することになったと聞いてからは、病院まで会いに行ったり。そこで彼女やご両親の話を聞いて、私に何かできることはないかと、そう思うようになりました』


「それで、看護師を目指すように?」


『はい。高校生の頃は本当に頭が悪かったんですけど、毎日必死で勉強しました。その中で、絵莉朱が言ってたように、世の中にはたくさんの“知らないこと”があるのだと気づきました』


「…今のあなたがあるのも、ある意味では金成絵莉朱さんの存在があったからということですね」


『その通りです。絵莉朱がいなければ、私は相手の事情を顧みることなく、人の痛みに鈍感なままで生きていたかもしれません』


「もう一ついいですか? 伊井野さんは今?」


『…数年前に亡くなりました。家族に囲まれて、安らかな最期だったと聞いています。ご家族はその後、家を売り払って別の土地に引っ越したと。「娘との思い出の詰まった家に住み続けるのはつらい」と、そうおっしゃっていました』


「そうでしたか…」


『私が最後に伊井野さんに会った時、言ってたんです。「金成さんどうしてるかな、会いたいな」って。彼女にとって、絵莉朱は最後にもう一度会っておきたい人物だったんですよ』


「伊井野さんにとっても、金成絵莉朱さんは忘れられない存在だったんですね」


『ええ。だからこそ、何も知らない第三者が好き勝手に喋った内容を“真実”だと思われるのが悔しくて。今回、こちらのチャンネルに出演を依頼させていただいたのです』


「こちらといたしましても、興味深いお話が聞けました。ありがとうございました。最後に、何か言っておきたいことなんかがあれば、ぜひ」


『では、炎上覚悟で言わせていただきますね。…絵莉朱は本当に、怒りに任せて刃物を振るったのでしょうか? 私には、そうは思えないのです』


「おお、これはまた物議を醸し出しそうな発言ですね。僕もその言葉を信じたいですが…人は変わるものですから」


『けど! その人の本質が、たった十数年で全く変わってしまうものなのでしょうか? “悪女”なんて言われていますけど、本当の絵莉朱は正義感の強い、人を思いやることのできる子なんです』


「確かに。今日のお話を聞いて、僕も金成絵莉朱さんの印象が変わったのは確かです」


『金成さんが実際に怪我をされていますから、絵莉朱が金成さんに刃物を向けたのは事実なのでしょう。ですが、その理由が逆ギレだとは、どうしても思えないのです』


「人目のない、自宅の中で発生した事件ですからね。録音されていた訳でもないですし、それに関しては金成さんの証言を信じるしかないですよね」


『…おっしゃる通りです。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした』


「いえいえ。金成絵莉朱さんに対する思いは、よく伝わってきましたよ」


『…ありがとうございます』


「それでは、今回はこの辺で。本日は、今話題の人物“金成絵莉朱”のご友人に来ていただきました。ありがとうございました」


『ありがとうございました』


「ではでは、またお会いしましょう!」

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