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紅蓮のシュヴァリエ  作者: Rio
6/10

フレンシアと双子の出会い

フレンシアが馬から振り落とされ、腰をさすりながら体を伸ばしていると、かさり、と草がかき分けられる音が聞こえた。


ふとそちらを見ると、目の前には巨大な、フレンシアよりも何倍も大きな真っ黒の体が、ドス黒いオーラを纏って立っていた。


揺れる二つの光が、鋭くフレンシアに向けられ、フレンシアは体が固まる。




「魔獣だー!!全員戦闘体制!」

フレンシアの後ろから叫び声が聞こえる。


剣が鞘から出される音が聞こえる。


しかし、フレンシアは初めてみた魔獣に足が動かなくなった。



「殿下!」

トロイがフレンシアを呼び、意識を自分に向けさせる。


「後ろに下がっていてください!」


トロイに押されるように、たった四人しかいない、しかも学生の後ろに隠される。




トロイは構えた剣に手を添える。

「ルグリア」

トロイに呼ばれたルフドは剣の周囲に炎を纏わせる。


剣を握りしめ、司令塔のエドモンドを振り返る。

先ほどフレンシアに目を瞑るな、といった男である。


エドモンドは呆気に取られているようだが、トロイと視線が合い少し冷静になったようだ。

元々冷静な男だ。トロイの眼差しに頭が冷えたのだろう。



「ユリウスは支援、トロイとジェイムズは魔獣の気を逸らしてくれ!殿下を安全な場所まで行かせる!!」

エドモンドの号令に全員が頷き、各自指示に従おうとした。

しかし、そこで大きな声が彼らを静止させた。



「いるんでしょ!!わかっているのよ!!さっさと出てきて助けなさいよ!!」

フレンシアが叫んだ。

そう、フレンシアは探しにきたのだ。


将来的に最強のシュヴァリエとなる人物を。


「さっさと出てきて助けてってばー!!!!」


フレンシアの言葉が響き渡った。









木の影からアルとアルスは不思議そうに、叫ぶフレンシアを見ていた。

結界の狭間にいるため魔獣にも気づかれていない。


にも関わらず、フレンシアはわかっているようなそぶりだ。

表面上のクロエ村は廃れた貧乏村だ。


本来のクロエ村は女神の加護に、村人が神力を与えることで結界が張られている。

外界からは見つけられないように。



アルの隣から立ち上がる気配がする。

「エル?何してるの?」


アルの質問に、キョトンとした表情で当たり前のようにエルがいった。


「助けろーっていってるから助けるよ?」


エルの言葉にアルは、ガシッとエルの肩を掴んだ。


「父さん。とうとうエルがおかしくなった。」


「そうだな。そこに縛っとくか」


アルスが太い木を指差す。




クロエ村の掟。

外界に干渉しない。

外界からの干渉も許さない。



「エル。村の掟を破ったら女神の鉄槌が入るよ?」

アルが心底呆れ返った表情でいう。


「ううん。女神様は怒らないよ。あの子を助けないと逆に怒られる。あの子が世界を戻す希望のかけらだから。」


エルの言葉に、父と兄は怪訝な表情しかできない。



じゃあ、といって行こうとするエルの腕を二人で掴む。

「ならば、せめて私が行こう!」

アルスが焦ったようにいう。


「そうだよ。父さんに行かせよう。」

アルも続く。


「父さんはダメ。隠れてて。母さんが起きるから待ってて。それと、アルは一緒に来て。」

そういってぐいっとアルの腕を引っ張る。


「ちょちょちょ!僕を巻き込まないでよ!」


「大丈夫。運命だから。ここの結界も消えるし、母さんも目を覚ますの。」


エルの言葉に訳わからなくなり、混乱する二人。


「待って!結界が消えるって?」

アルの言葉に、エルはニコリと微笑んでそままアルの腕を引っ張った。


アルは簡単に体が前のめり先へ進んでしまう。


双子で、今のところアルは男児、エルは女児だが、運動神経抜群のエルは力もバカみたいに強い。

アルのような、筋肉がなさそうな細い子供は簡単に引っ張られてしまう。



ずんずんと歩きつづえるエルに、アルはもはや諦めの境地。

とりあえず、こういう時はエルの勘に従うのが得策だと知っている。


人差し指をたて、父に向ける。

草木が伸びて父を縛りつけ始めた。そのまま地面へと吸い込まれてしまった。


アルの魔法にエルは微笑む。

「そこまでしなくてもよかったのに。」


「聞きたいことと、いいたいことが沢山あるけど、とりあえずはエルに従うよ。」



エルは近くにあった大きな木の丸太を持ち上げて、フレンシアたちに向けて投げた。



「はあ・・・大雑把すぎ」

アルは呆れ返って、またため息をついた。。





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