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紅蓮のシュヴァリエ  作者: Rio
4/10

双子と英雄

やっと主人公がまともに出てきます。

ピンクがかった赤髪の双子の少年と少女。

どちらも13歳にも関わらず、中性的な雰囲気を持つ。

男にも見え、女にも見える。


これはクロエ村のみの秘密。

クロエ村の人間は15歳まで性別が決まらない。

その時の気分や、個人の習性などでその都度性別が変わるのだ。


二人は生まれた時から、性別が変わらない。

ずっと兄のアルは男児で、妹のエルは女児だった。


クロエ村で、生まれた時から性別が変わらないのは珍しいことであった。

二人は、幼少期からとても稀有な存在として扱われてきた。






アルが、エルの腕を引っ張ったまま、ずんずんと歩き続ける。


「アル!どうしたの?どこ行くの?」


アルは目を細めて、エルを振り返った。


「今日父さんが帰ってくるだろ。」


アルの言葉に、エルはハッと思い出したように叫ぶ。

「忘れてたー!!」


二人は急いで走り出す。







アルス=レイナルド・ニーオン

アッシュラビア帝国では知らない人はいないほど有名な人。

燃えるような赤い髪に、人を惹きつけるエメラルドグリーンの瞳。

平民でありながらルフドに愛され、天才的な戦闘センスで帝国を守った騎士。

平民でありながら宮廷騎士団の隊長にまで上り詰めた人物。

将来が約束され、貴族からの覚えも目出度い人物。


しかし、彼は忽然と姿を消した。


魔獣に喰われた。

病で亡くなった。

どこかの貴族に囲われている。

平民の娘と駆け落ちをした。


様々な噂が流れた。



多くの人々が悲しんだ。

帝国の騎士を失ったことを。



もちろん他の騎士も優秀であった。

だからこそ、彼が抜けた穴を埋めるのは難しくなかった。

ただ、彼をどれほど頼りにしていたかが、身にしみてわかってしまった。



何せ彼は平民。

貴族相手だと言えないことを平気で言えるし、頼めないことも彼になら頼める。

そして、頼む内容も選ばなくて済むほどの実力を備えていた。


ただ頼るだけならよかったのだろう。

彼は平民でありながら、周囲に期待され特別扱いを受けた。

それでも驕ることはなく、真面目で真摯に仕事に向き合った。


最初は彼を馬鹿にしていた貴族も、彼の人がらに惚れ、態度が軟化する。


彼が姿を消した時、周囲の人々は自分を責めたほどだった。









クロエ村には結界が張ってある。

村と外界との間に“結界の狭間”というものができる。

その狭間は、結界と同じようなもので、簡単に入ることはできない。

ある例外を除いて。



結界の狭間に、

燃えるような赤い髪をした男が、紺色の旅仕様マントの裾を払いながら、待ち人を待つ。

顔が強張りながら、手元にある懐中時計を見ながらソワソワしている。


「父さーん!」

遠くからこの世で最も愛する子供たちが、自分の元に走ってくる姿を見て、アルスは表情緩める。


「ロイス!ルイーズ!」

両手をいっぱいに広げ、腕の中に子供達を迎える。


「父さん!アルとエルだよ!自分でその名を名乗っちゃダメだって言っただろ!」

アルは怒ったように言う。


あるの言葉にアルスは苦笑する。



名乗ってはダメな訳ではないが、“ロイス”と“ルイーズ”は貴族に名付けられるような名だった。

名付けてくれたのはアルスの恩人。

その恩人に迷惑をかけないよう、双子が傷つけられないようにと、言い聞かせていた。


「そうだったな。すまない。・・・アリエルはどうしている?」


「母さんならまだ起きないよ。・・・表情は穏やかだけどね。」

アルの言葉にアルスは切なげに表情を歪めた。


アリエルはアルスにとって最愛。

彼女を愛し、生涯を共にしたくて逃げるように帝都を去った。


あの頃は帝国を救い出した平民出身の騎士が、異常に帝国民を盛り上げていた。

周囲ばかりが盛り上がり、アルスとしては当たり前のことをしただけだったし、周囲の過剰な反応が怖くて仕方なかった。


もちろん理解してくれる人はいた。

けれど、過剰に盛り上がる周囲についていけなかった。



全てを捨ててでも手に入れたかった最愛は、現在村を守るために神力を与え続け、深い眠りについている。



「大丈夫だよ。」


アルスが物思いに耽っているとふと声が聞こえた。

視線を上げると年々妻に似る娘だった。


「大丈夫だよ」


娘は同じ言葉を繰り返す。


自分を心配して言ってくれたのだろう。

優しそうに微笑み“大丈夫だよ”と言ってくれる。


優しい子供達を授かって幸せな限りだ。


「大丈だよ、父さん。母さんは、もうすぐ目覚めるよ。」

エルの言葉にハッとする。


この娘は昔から不思議な子だった。


この娘が“そうだ”と答えると、大抵その通りになった。


アルも驚いているのか、エルを凝視している。


「多分・・・今日目が覚めるよ。それに、父さんも村の結界内に入れるんじゃないかな?」

悩むことなく答えた。


エルの言葉に、アルが問いただそうとした時、村の結界の外で魔獣の声が聞こえた。


「ほらね?もう、そこまで来たよ。」

エルの言葉と共に、大きな爆音がエルたちのいる結界の狭間に響き渡った。





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