プロローグ
ゆるふわ設定です。
昔々、遠い昔。
魔法を使う人々がいた。
彼らは村を作り、やがて町になり、国を興した。
魔法によって国は守られ、発展していった。
魔法を使う人々はそれぞれ使役する精霊ールフドーがいた。
ルフドは人を愛し、慈しんだ。
人々はルフドの力を借りて魔法を使っていた。
共存していたはずのルフドと人間。
しかし人間は欲深い。
人外の力を使役するうちに、自分たちの力だと思い始めた。
人々はルフドを虐げ、傷つけた。
怒ったルフドの長であるフィルディナは、七人の人間に戒めの刻印を授けた。
刻印を持った七人の人間たちは3日で世界を火の海へと導いてしまった。
恐怖と絶望の中、一人の人間が立ち上がった。
彼の者は、“アッシュ”という名だった。
アッシュはルフドに最も愛された人間であった。
彼はルフドと協力し、七人の人間を倒した。
平和な世の中を手に入れた人々は、アッシュを尊敬し、愛した。
彼はやがて愛する人ができ、共に生き、幸せな生涯を終えた。
当時彼が住んでいた国は、彼を讃え国名を彼の名と彼のルフドの名からとって“アッシュラビア”と改名した。
やがて国は領土を拡大し、帝国となった。
ーアッシュラビア帝国 建国神話よりー
女神フィルディナに最も愛された人間、グレリエント。
彼女は最強のルフド使いであった。
世界が三つに分かれた時、多くの魔獣や魔物が世界に蔓延った。
混沌とした世界を安定させたのがグレリエントであった。
彼女にはルフドを使役する力と、万物を守る力があった。
彼女は女神フィルディナから授かったその力で、人々を守り、世界を守った。
ー女神の書 愛し子グレリエントよりー
緑にも気候にも恵まれた土地サラメイル大陸。
その中心部には神聖で厳かなシュヴァリエ協会がある。
ルフドを使役できる人々を管理し、教育する機関である。
ルフドを使役できるものは必ず申告せねばならい。
申告を疎かにした場合、デュリエされる。
デュリエーそれは、強制的にルフドを引き剥がされる。
ルフドをデュリエされてしまうと、器である人間は余命幾ばくもないのだった。
なぜここまで厳しいのかというと、地獄の炎夜の影響だった。
地獄の炎夜ー
500年以上前、一晩で一つの国が消滅した。
消えることのない炎が国を包み、人々を消し去ったのだ。
炎の中には一人の少女が立っていた。
彼女はこの国の王女だった。
ボロを纏い、髪も爪も伸び放題。
何の手入れもされていない体。
痩せほそり、目元が窪んでいるため、異常に眼球が突き出ているように見える。
彼女は隠された王女だった。
火の刻印を持ったまま生まれた王女だった。
舌を切られ、足枷をつけられ、身体中に痣ができていた。
手や足が折れて、変な形のままくっついたであろう、折れ曲がった手足。
彼女の瞳は何の感情も浮かんでいなかった。
恐怖も。
安寧も。
歓喜も。
彼女の目に映るのは、綺麗に燃え盛る炎だけだった。
彼女はその燃え盛る炎を一心に見つめたまま、声を発していた。
切られた舌で、言葉にならない言葉を。