【解説】影虎とは!?
♪ チャラッチャッチャチャチャラー(デケデケドンデケデケドン)、チャラッチャッチャチャチャラー(デケデケドンデケデケドン)……
ナレーター(以降、『>』で表す。): さあ、何の告知もなくいきなり始まりました『イッチョマンRADIO』緊急放送回。私が当番組のDJでございます。
銀子先生(以降、『お銀』と表す): 同じく司会を務めさせていただきます養老銀子です。そして、レギュラーコメンテーターの最勝寺先生です。
最勝寺(以降、『最』と表す): はい、どうも~。
お銀: ダメですよ、先生! 挨拶はしっかりしないと。
最: はぁ。でも、これって読む人によって時間が変わるから、「おはようございます」から「こんばんは」まで、どれかに定められないよね?
お銀: あれ? 夜の放送じゃないんですか?
> ええ、そうですよ。しかし、インターネット技術の普及で、テレビもラジオも放送時刻に視聴しておかないとダメだ、という時代でもなくなったから、確かに時刻に合わせた挨拶は視聴環境と一致しない事態が発生してきましたね。ですが、そうなると逆に、収録時間基準でいいじゃん、と開き直るしかありません。
最: なるほど。では、こんばんは。……しかし、さっきの話だけれど、確かに放送コンテンツのリアルタイム性は失われつつあるけれど、スポーツ観戦についてはやっぱりリアルタイムが重視されているよね。リアルタイムで観ておかないと結果がSNSで流れちゃうから。
お銀: でも、ドラマでもネタバレされると面白さが半減しますよ。
最: そうなんだよねぇ。だけど世間的にはスポーツの方がリアルタイム性高いというか、ネタバレに敏感だよね。まあ、勝った負けたという二択があるから、ドラマの誰と誰がくっ付いたとか、裏切りがあるとかないとか、に比べたらSNSで流れる致命的な具合が違ってくるからかなぁ。
♯ イッチョマン・スラップ!
お銀: はっ! (以下略)
> 「緊急だ」と言う割に、本題に入る前から脱線しているので、「先に進め」という指示が飛んできましたね。というわけで、先生、お願いします。
最: はい。今回、急にお集まりいただいたのは、先週上げた新作短編に対して「どういう事?」という反響がいつもに増してありましたので、もうちょっと解説をしようかな、と。本来であれば、そういった謎は物語が進むにつれて明らかにされていくものですが、あれについては当面書く予定がないので、ここでお茶を濁す――じゃなくてもやもやを解消できればな、と。
>なるほど。……しかし、こちらの資料によると、特段、質問が寄せられたりコメントが付いたりという様子ではなかった、とありますね。もしかして、先生も異世界鑑賞万華鏡システムをご利用されています?
最: 全然! なんとなくそう感じただけです。
>ああ、そうですか。……ぼんやりとした感覚での言動、いかにも最勝寺先生らしいですね。
お銀: はーい。質問です。
最: どうぞ、お銀ちゃん。
お銀: 先生のお話では新作を上げられたのは先週ということでしたが、一週間も経って「緊急」というのはおかしくないですか?
最: ………。
>それは、銀子先生、最勝寺先生としては、ということですよ。私の見立てでは、新作発表の後、一日くらい経ってから「これは!」と反応の大きさを妄想し、そこから今回の企画を思いつくまでは早かったと思います。しかし、それを行動に移すまでがいつも長いのです。なので十日程度だったら、ぐうたらの最勝寺先生にしてはかなり早い方でしょう。そして、いざ執筆し始めてからは早い!
最: みたいですね。保紫先生からは「『書いてみた』の配信ができるくらい」と言われましたが――前にも話しましたか?
>どうでしょう? そういう気もします。
お銀: では、一応「緊急」で間違ってなかったんですね?
>そういうことにしておきましょう。そして、肝心なのはその対象です。何についての解説ですか?
最: うむ、ズバリ、『影虎』についてです。
お銀: えっ!! もしかして、影虎が活性化したんですか?
最: ね! 関係者もいるから解説にちょうどいいかなぁ、と。
>な、なるほど。しかし、最勝寺先生、こっちに話しかけないで銀子先生に答えてください。目つきが怖いです。
最: あ、何だっけ? ……ああ、影虎の活動についてだっけ? それについてはイエスです。お銀ちゃんもちょっと巻き込まれた銀行強盗があったじゃん。あの犯人たちが護送された時に逃げたのは、影虎の活動だったからなんだよ。
お銀: ……そうですか。まあ、想定はしていましたが、確証はなかったので、事実であるならお父様に報告しないと。
最: それについては不要だね。もう、知っているから。
お銀: そうなんですか。……ん? どうしてそれを?
> せ、先生! また銀子先生の目つきが!
最: うーん、詳しく言うとややこしいから、ざっくり説明すると、その情報を提供したのは私だから、です。
お銀: あ、そうなんですか! 最勝寺先生って、そう見えてかなり情報通なんですね。あ、これは失礼いたしました。いつもご協力いただきありがとうございます。
最: いえいえ、わざわざ丁寧な挨拶はいりませんよ。こちらこそ、自立行動してくれるみなさんに感謝です、という立場なので。
お銀: ん? ……よくわかりませんが、ありがとうございます。
>最勝寺先生、今の感謝は私に向けてでもありますよね?
最: (無視)また『イッチョマン・スラップ』に怒られる前に進みましょうか? というわけで、まずは銀子先生から影虎 についての解説をお願いします。
お銀: ……しかし、これ以上を公共の電波に乗せてお話しするのは……。
> それについての心配は無用ですよ。世界が違うというか、……確か銀子先生にとっては夢の中の話になるんでしょ?
お銀: そういえばそうですね。では、お話しします。まず、広い意味での影虎 と狭い意味での影虎 があります。
最: あ、そうなんだ。のっけからこちらの想定というか、設定を超えてきますね。
お銀: ん? 設定、ですか?
>あ、銀子先生、あの人の発言に深い意味はない、というか深く考えると私たち自身の存在が危うくなりかねないので無視しましょう。では、広い意味での影虎 からお願いします。
お銀: ……はい。広い意味での影虎 は、我々養老家にとっての障害とか抵抗勢力を示す言葉になります。
最: なるほど。仮想敵、仮想障害というわけか。さすがは養老家、隙がないなあ。
>えーと、最勝寺先生、納得している理由を詳しくお願いします。
最: 危険管理の分野が発展したから今では新しい概念でもないけれど、計画を進める上でまだ発覚しないリスクがある、と注意する考え方ですね。さしずめ、SFの大家ハイラインの……あ、具体例を出すとネタバレになるから止めておくか。
>うーん、わかったようなわからないような。計画を進める上で障害が発生するだろう、という考えは昔から当たり前だと思うのですが。
最: そうなんだけど、その正体が掴めていない時から名前を与えて警戒する、というところがポイントなんだね。養老家の警戒心がハンパないというのを示していますね。
お銀: へぇ。そういうものなのですね。子供頃から聞かされていたので気にしなかったです。
最: それ。もう身に付いてしまっているのが、もはや怖いレベルなんだよ。……まあ、それはそれとして、続きを。狭い意味での影虎についてお願いします。
お銀: 狭い意味では、特定の団体についてです。何百年も昔から闘争を繰り広げている相手ですが、具体的な存在は不明です。
>あれ? 戦っている相手がわからないんですか? だつたら、その状態が何百年も続いているのは不自然というか……そもそも相手が同一と言えなくなるんじゃないでしょうか?
お銀: 仰るとおりです。事実、影虎の方では断絶があると私たちは考えています。
>……やっぱりよくわかりません。どういう事なのですか? 最勝寺先生。
最: いや、お銀ちゃんの言うとおりなんだけれど、お銀ちゃんは影虎が当たり前だから、一般的な感覚でおかしいというのがわからないんだろうな。ここはそもそも影虎がどうやって生まれたかから話してみましょう。
>はい。お願いします。
最: 養老家が敵を作っている、というは理解できているよね?
>まあ、あんな集団ですからね。
お銀: 異議あり。どんな集団であろうとある程度大きくなれば抵抗勢力は自然と生まれるものだと思います。
最: うん。そうだね。でも、抵抗勢力を叩き潰すだけでなく、その幼い子供を取り上げて、部下として教育――というか洗脳しているやり方は恨みを買うよね。
お銀: それにも異議あり、です。養老家の中で育てば恨みなど湧きようがありません。それに、その者が優秀であればちゃんと重用されます。実際過去には、頭取にまで成った方もいたはずです。
最: そこが「洗脳」といわれる所以だね。確かに、取り込まれた方は恨まないけれど、取られた方が恨むんだよね。
お銀: それも、そう思う存在は残さないのが基本ですが、……まあ取りこぼしはあるんでしょうね。
>……え? サラリと言っていますが、これって「怖っ!」と思っていい話ですよね?
最: うん。人の命のやりとりの話をしていますよ。
お銀: でも、これって夢だからセーフなんてすよね?
最: うん。セーフ。そうやって恨んでいる勢力が結集して表立ったらまた潰されるから、水面下で養老家に対抗している、というのが影虎だね。
お銀: はい、そう聞いています。
最: 他に、養老家からの落伍者も影虎の核として存在しうる。血筋でなく実力主義だからこそ、能力が足りないと見なされた者は切り捨てられえる。それを恨まれ――お銀ちゃんにとっちゃ「逆恨み」され――ているわけですね。
お銀: はい。恥ずかしながらそういう元養老家の者も確かにいたようです。しかし、いずれも永くは存在していないはず。
最: そう、それ。何百年に渡る闘争と語られる姿の一面だよね。わかりやすく切り取ると、影虎は過去何度も生まれては滅ぼされています。
>なるほど。だから、「同一の存在といえない」ということになるんですね。
最: 事実、影虎という名を掲げていない存在ばかりです。お銀ちゃんが最初に語ったように、抵抗勢力としての統一呼称ですね。が、これも先に言ったとおり、養老家からも漏れ出た勢力としてもあり得るので、影虎という呼び名が受け継がれるようになります。同時に、表立っては潰されるという歴史も知られますから、より深く潜るようになるのです。
>なるほど。こうなると長年の仇敵だからこそ手強いというのが納得できるようになりました。
最: ついでに、その名前について語りましょうか? お銀ちゃんはそのあたり聞いていますか?
お銀: いえ。私が生まれるずっと前から影虎は影虎なので、由来は改めて聞いていません。
最: うん。でも、まあ、単純な話なので、それほど深い中身があるわけじゃないよ。まず、養老家を示す生き物といえば? ――あ、お銀ちゃんにとっては簡単すぎるから今は黙っていてください。
> じゃあ、私向けの質問ですね。……一族の銀行は苔石でしたから……あ、蛇だ! 蛇睨み、ありましたね。
最: 正解! じゃあ、その蛇が長く生きると何になると言われている?
>ん? 蛇が長く生きると……白くなる、とかですか?
お銀: 天に昇ると言われる事もありますね。
>昇る? 鯉の滝上り、は違うよな。……わかった。龍だ! 昇龍って言いますね。
最: はい、正解。では、その龍と並び立つと例えられる生き物は?
>それはすぐにわかります。虎ですね。なるほど、だから影虎なんですね。
最: そう。本来、影虎にとって敵は蛇だけど、それが龍に生まれ変わっても対抗できる存在、という願望が入っているんだね。そして、影の部分は、影に潜むべき存在という自覚と、養老家の暗部から発生した、という皮肉を示しています。
お銀: そうだったんですか。勉強になります。
最: 一応、起きたら今の事は忘れちゃうんだよ。
お銀: あ、そうでしたね。でも、新鮮でした。
最: まあ、こういう背景から、実は養老家の内部には影虎の手の者が入り込んでいます。
お銀: やはり、そうですか。
>あれ、意外じゃないんですね。
最: これが常に仮想敵の存在を意識している成果だね。事実、養老家の中枢では、常に、スパイがいるのは事実として考えられており、洗い出しも常態化しています。
>……やっぱり恐ろしい組織ですね。スパイとわかったら排除されるわけですね。
お銀: ふふ。
>え? 敵の排除が可笑しいんですか? やっぱり恐ろしい……。
お銀: 違いますよ。スパイがわかったら泳がすのに決まっているじゃないですか、という笑いです。
>……やっぱり恐ろしい。
最: はい、以上がお伝えしておきたい内容でした。じゃあ、もういいからエンディングテーマを――
>あ、待ってください。質問です!
最: ほう、珍しいですね。どうぞ。
>カゲトラと聞くと、私は長尾景虎を想起しますが、その辺りの関連は?
最: なるほど。しかし、謙信公とは……関係ない、と言おうと思っていたけれど、地理的にすごく離れているわけじゃないでから、実はゴツゴウ・ユニバースにおいては、関係あったのかもしれませんね。
>ふむふむ。銀子先生はそのあたりどう伝え聞いていますか?
最: ストップ! そこを本家の人に話されると史実として固まってしまうから止めてください。戦国時代は人気があるので、外伝が生まれる余地があるからね。
>そんな事を言って、書くつもりはないんでしょう?
最: もちろん。ちなみに、養老家本家の所在地を考えると、岐阜城に一時居を構えた織田信長が関係しているかも知れませんね。他方で、上杉謙信の異名が「越後の龍」、武田信玄が「甲斐の虎」というあたりも、何やら関係していそうで興味深いですね。
>また、煽るだけ煽って、花鳥風月の「出る出る詐欺」みたいですね。
お銀: はい。私も質問ですが、いいですか?
>はい、何でしょう。
お銀: 養老家と影虎の対立は、先程話したとおり「恨み」に基づいている、と聞いていますが、数百年にわたる恨みってあり得るんですか?
最: そ、それは当番組に似つかわしくない難しいテーマですね。答えだけ先に言っておくと、イエスでもありノーでもあります。
>それだけでは答えになっていませんので、掘り下げてお願いします。
最: まず、表面的な恨みは何百年立っても継続します。現実に世界的な問題となっている宗教的、民族的な対立は、個人的な恨みというよりむしろ文化ですよね。
>確かに。そういう環境で育ったらそういうものだ、と自然に感じてしまいますね。
お銀: つまり、影虎は影虎の中で育つ、ということですか?
最: うん。大筋ではそうだけど……今、「だったらずっと圧力を掛け続ければ弱体化できる」と考えているでしょう?
お銀: はい。理屈ではそうなりますよね。
>……影虎に関わると、銀子先生はいつもとまるで違う、怖い人になりますね。
最: 厳密には、影虎ではなくて、養老家に立ち入った話になると、ということだと思うが……。お銀ちゃんには、「影虎には独自のシステムがあるから、一筋縄ではいかない」と答えておきましょう。具体的には、中立の立場である私は言えません」
お銀: あれ? 最勝寺先生はこっち側の人ではなかったんですか?
最: うん。さっきも言ったとおり中立なんだよね。どこかの勢力に荷担するのもうまくいかない、というか……まあ、それはそれとして、今までのは「恨みが長く続くか」という問いに対してイエスという答えでしたね。次はノーと言える部分です。
>はい。よろしくお願いします。
最: これも具体例を出すと理解しやすいと思うけれど、民族的対立を先入観として植え付けられても、個人レベルではそれを超えうる結果は起きますよね。有名な『ロミオとジュリエット』がそうです。
>両家の対立より恋心が強い、という例ですね。しかし、あれはそもそも創作のお話ですから、説得力としてはあまりないですね。
最: まあね。でも、外国人の友人がいるという人の話は耳にすることはあるでしょう。「〇〇国人は信用ならないけれど、あの人は別」という感じの発言。あれは先入観と実体験の違いを示していますね。
お銀: はい、そこまではわかりますが、それと影虎がどう関係するのですか?
最: そうですね。では、影虎の一員として考えてみましょう。養老家憎しの思想を植え付けられているので、少なくとも養老家に対して反発はある。だから、養老家へ妨害工作をしろ、と言われても、拒否感はあまり感じず実行できる素地がある。だけど、実際そう行動するのはかなり負担です。はっきりいうと身の危険と引き換えになります。そこまで負荷が大きくなると、思想として植え付けられた養老家への憎しみだけで行動し続けられるかどうか難しくなるわけです。
お銀: ……はい。と、いうことは?
最: そのままでは影虎の養老家への圧力は、時代と共に鈍化してやがてなくなってしまいかねないわけですね。しかし、実際にはそうはならず、特に今に至っては過去と比較してもかなり強力な影虎が発生しています。
お銀: ええ。その理由をお聞かせ願えないでしょうか?
最: お断りします。そこは現在の影虎にとっての根幹の秘密とも言え、先程も言ったとおり、私は中立ですからそこまで明らかにはできません。
> ……最勝寺先生、銀子先生、めっちゃ目つき怖いですよ!
最: ふっ。冷たい視線は実生活で慣れている。では、エンディングテーマをお願いします。
♪ パンパンパパン、パンパンパパンツー、パンパンパパンツー!
>うおっ、司会を差し置いての強引な進行。これが創造の力か! ……では、ラストに、今後の展開について一言を!
最: はい、未定です。
>やっぱりねぇ! では、みなさん、さようなら~。ほら、銀子先生も。
お銀: はい、挨拶は大事ですからね。さようなら~。
最: さようなら。また、機会があれば。
>あ、聞きました? これってパンツイッチョマンの第三シリーズが――
最: ――いや、そういうつもりじゃなかったから……(フェイドアウト)




