中村さんたちは僕に嫉妬するのかもしれない
「萌ちゃんの好みのタイプってさ、昌晃君に結構近くない?」
「そう言われてみれば、そうかもしれないわね。でも、まだ高校生よね?」
「はい、高校生です」
「さすがに高校生は無いわ。大学生になってもそのままでいてくれたらありがたいんだけど、さすがにその頃には彼女も出来てそうだしね。聞いてなかったけど、彼女っているの?」
「いや、彼女はいないですよ」
「彼女はって事は、好きな人はいるの?」
「好きって言うか、仲の良い人はいますよ」
「その人の事が好きなの?」
「好きとかじゃなくて、楽しいって感じですかね。いや、楽しいともちょっと違うような」「へえ、じゃあ、その子と二人でご飯食べたりとかもしてるわけ?」
「まあ、週に一度か二度ですけど」
「週に一度か二度って、同じクラスの子じゃないの?」
「いや、同じクラスですよ」
「同じクラスなのに毎回一緒に食べてないの?」
「はい、色々とありまして、そうなってます」
「色々って、何があるのよ?」
「えっと、僕のいとこが学校で人気者でして、そのいとこについてクラスメイトに聞かれることが多々ありまして、その時に一緒にご飯を食べるクラスメイトもいるんですよ。なので、週に一度か二度は食べる子がいるってだけです」
「ちょっと待ってもらってもいいかな。そのいとこについて聞いてくるクラスメイトって男子生徒なの?」
「いや、女子生徒ですよ。結構明るい感じの子です。他にも、いとこ関連の話で三年生の先輩とかも週一くらいで僕を呼び出してきますね」
「その先輩って、女子生徒?」
「はい、女子生徒ですよ」
「私の記憶違いでなければなんだけど、昌晃君の家で一緒に住んでるいとこって三人いて、三人とも女子だよね?」
「そうですよ。みんな女子です」
「って事は、女子が女子を好きになってるって事?」
「そういう事になると思いますよ」
「ちょっとだけ整理させてね。昌晃君のいとこは女子生徒で、その女子生徒の事が好きな女子生徒たちと一緒にお昼を食べる機会があって、その生徒とは別の三年生女子が同じように昌晃君の所に来ると。それとは別に週一でご飯を食べている女子がいるって事?」
「そういう事ですね」
「って事は、君はリア充だな。いとこ絡みとはいえ、女子高校生と一緒にご飯を食べる機会がそんなにあるなんてリア充でしかないな。私の高校時代なんてそんな生活は無縁だったが、少しも羨ましいなんて思ってないぞ」
「でもさ、萌ちゃんの高校時代は知らないけど、今もそんなに変わってはいないんじゃない?」
「う、そんなに痛いところを的確につくな。信はリア充よりだからわからないかもしれないけど、私みたいな日陰者はそういうのに憧れはあっても直接触れると避けてしまうものなんだよ」
「いや、俺だってリア充ってわけじゃないよ。そりゃ、萌ちゃんに比べたらそう見えるかもしれないけどさ、俺に寄ってくる人間なんてろくでもない人間ばっかりだったもんな。生徒だけじゃなくて教師もそんなんだったから俺は人知れず人間不信に陥っていたよ」
「そうか、信も苦労はしているんだな。それも、私とは別の苦労そうで心中察するよ。しかし、見た目が極端に良すぎるというのも問題なんだな。背が高くて頭物くて顔もいいと私とは別の苦労があるものなんだな」
「そんな萌ちゃんだってさ、可愛いし頭も良いし胸も大きいじゃない。普通にしていればモテると思うんだけどな」
「まあ、誰だって普通にしていればモテるだろ。ところでだ、昌晃君はその女子とは何か特別な事をしてたりするのかな?」
「特別な事と言っても、一緒にご飯を食べてるくらいですかね」
「それだけではないだろう。ご飯を食べさせあったりしてたりして」
「それは無いですね。でも、なぜか僕の膝の上に乗ってご飯を食べるようになってますね」
「膝の上に乗ってご飯を食べるという意味が分からないのだが、信は理解しているか?」
「いや、俺も全く理解出来ていない。そんな状況になって他のクラスメイトは何も言ってこないのか?」
「何も言ってこないというか、それを知っているのって陽香だけだと思うんですよ」
「陽香というのは君のいとこだったかな?」
「そうです。いとこの陽香は何度かその場面をすりガラス越しに見ていたみたいで、色々と言われました」
「色々とは?」
「えっと、細かくは覚えてないですけど、他の女子の匂いを付けて帰ると真弓が嫉妬しちゃうよ。真弓ってのは一番下のいとこです。だから、その匂いを陽香の匂いで上書きしてあげるね。みたいなことを言われたと思います」
「匂いの上書きも気になるのだけど、そんなに匂いが染みつくほど強烈な事をしているというのかな?」
「いや、そんなことは無いと思いますよ。林田さんは化粧とか香水とかもしてないし、陽香が過敏なだけだと思うんですけどね。もしかしたら、お弁当を食べている部屋の換気が不十分だったからかもしれないですね」
「お弁当を食べている部屋という事は、教室ではないという事なの?」
「はい、林田さんがやっている部活の部室です。あと、林田さんはクラス代表で僕が副代表って事で話し合いをするためにお昼を一緒に過ごすのが週一での決まり事みたいな感じで始まりました」
「ちなみになんだけど、匂いの上書きとはいったいどんな風に行っているのかな?」
「それは、ベンチに座っている僕の上に陽香が座るだけですよ。それだけです」
「それだけとは言うけど、君のいとこは君の話を聞く限り学校でも指折りの人気者だって思うのだが、そんな彼女を膝の上に乗せて顰蹙を買ったりしないのかい?」
「大丈夫だと思いますよ。家の近所の公園でやってるんですけど、学校に通ってる人達は橋の反対側に住んでるんでこっち側に来るのは僕たちくらいしかいないんです。あ、三年生の先輩に見られて写真を撮られたのが三年生の人達に呼び出された理由でした」
「もしかして、君は本当にリア充なんじゃないか?」
「そんなことは無いと思いますよ。僕はいたって普通と言いたいところですが、元いじめられっ子なんで普通ではないかもしれないです」
「え、いじめられてたの?」
「はい、でも、そのお陰で今の高校に入れたんで良かったとは思いますよ。感謝とかはしてないですけど」
「そうなんだ。じゃあ、この話はこれくらいでやめにしようか。な、信もそんなに聞きたいことないだろ?」
「え、そうだな。でも、一つだけ聞いていいかな?」
「なんですか?」
「ちなみになんだけど、昌晃君の話に出てきた人達でパンツを見たことがある人っていたりするの?」
「ちょっと、なんて質問しているのよ。昌晃君がそんなの答えるわけないじゃない。って、即答しないって事はそういう事なのよね?」
「やっぱりな。君はそういうのを見られる側の人間って事なんだね。羨ましい限りだよ」
萌さんは僕に見えないように胸元とスカートの裾を直していたのだが、それは全くの無意識のうちに行ったのだろう。それを気付いたという事は、僕が普段からその辺を見ているという証明になりそうなので言及はしないが、視線を変えた先に見えた信さんの表情はとても悲しそうに見えた。僕にはその悲しそうな表情の理由がわからなかった。




