佐久間先生との個人面談を生徒指導室で
「齋藤君の成績は文句のつけようが無いくらい優秀なんだよね。でも、この学校の制度上一組に推薦してあげられないのよね。ごめんね」
「僕は別に一組に行きたいなんて思ってないから大丈夫ですよ。それに、僕は自習ってあんまり得意じゃないんですよ。先生たちにちゃんと教えてもらえないと理解出来ないことの方が多いですからね」
「そう言ってもらえるのは教える方としても励みになるわ。そうえば、家で勉強する時は前田さんと一緒に勉強してたりするの?」
「家で勉強する時なんですけど、陽香の下に妹がいて、その子も交えて三人で勉強することが多いですね。むしろ、その子がいないと勉強にならないと言えるかもしれないです」
「ああ、中学生の妹さんね。先生方の噂で聞いているわよ。なんでも、前田さん以上に勉強が出来る凄い生徒が入ってきたって。それに、大学にも前田さんのお姉さんがいるんだよね?」
「はい、沙緒莉姉さんはうちの大学に今年入学しました。どんな勉強をしているのかはわからない気ですけど、時々大学近くの本屋に行って難しそうな本を運ぶのを手伝ったりしています」
「大学の近くの本屋だったら先生も時々行くよ。でも、本当に時々だから会うことは無いと思うし、会ってもお互いに気が付かないかもね。先生は本屋に行くと本にしか意識が向かないんで、後から本屋で目撃されていたことを教えられたりするのよ。って、それはどうでもいい話ね。本来の目的に戻ろうか。この学校に入学してから二か月くらい経つんだけど、何か嫌な事とか起きてないかな?」
「そう言われてもパッと思いつかないですけど、思いつかないって事はないって事ですかね」
「本当にそうなのかな?」
「そうだと思いますよ。だって、中学までに比べるとここはまだ人のぬくもりを感じられますからね。先生もこうして僕を気にかけてくれてますし、林田さんも吉川さんも今井さんも僕と話してくれるってのがありがたいです」
「でも、齋藤君はクラスの男子に溶け込めてないって聞いてるんだけど、それについては嫌な気持ちになったりしてないの?」
「それは全然ないです。入学する前は皆と仲良くなれるかなって思ってたんですけど、そんな妄想は良くないってすぐに気付きました。正直に言って、最初はこの学校でもいじめられるのかなって思ったんですけど、その理由を聞いて僕が悪いんだって納得出来ましたからね。中学までの時って僕は何も悪いことをしていないのに無視されたりしてたんですけど、この学校では僕が無視されるのにもちゃんと理由があったんですよ。それって、自分でちゃんと理由を知って解決方法を見出せるって事だと思うんです」
「齋藤君がそれでいいと思うんならそれでいいんだけど、このまま三年間そのままの状況で平気なのかな?」
「僕は平気だと思いますよ。今までもずっとそんな感じでやって来てましたし、それまでは先生も味方にはなってくれなかったんです。でも、今はこうして佐久間先生が僕を心配して面談をしてくれているってのが嬉しかったりするんですよ」
「この面談はね、そんなたいそうなものではなくて、外部入学してきた齋藤君が精神的に疲れていないか確認するためのものなのよ。今頃は別の場所で前田さんが花田先生の面談を受けていると思うんだけど、そっちはもう終わってたりしてね」
「まあ、陽香は優秀で先生が心配するようなこともしないと思いますからね」
「あ、そんな風に受け止めちゃったんだったら謝ります。ごめんなさいね。でも、違うの。そうじゃないの。前田さんがどうのっていうのじゃなくて、花田先生ってあんまり人に興味がないのよね。だから、あんまり生徒の事を一人一人ちゃんと見えているのか心配になることもあるんだけど、一組って個人個人が自分で考えて行動してるって事を考えると、花田先生みたいなタイプの人の方が向いているのかもね。私だったら毎日心配事が多くて困っちゃうかもしれないからね」
佐久間先生はそう言いながら深いため息をついていた。僕は花田先生の授業を受けたことが無いのでどんな教師なのかわからないが、変に声を荒げて生徒を委縮させたり、どうでもいいような小さなことで揚げ足を取ったりすることは無いのだろう。
きっと、佐久間先生は一人一人を親身になって世話をするタイプだと思う。クラスの生徒の中でも僕は人一倍浮いていると思う。今まで小学校中学校と同じ時間を過ごしていないという事もあるのだけれど、それ以上に僕と陽香が一緒に登下校をしているのが許せない溶いた人も多くいるようだ。
陽香の話題が出ていたので気になった場所を訂正していこうと思う。ただ、こんなことを修正したところで、僕の環境が良くなることなんてないだろう。むしろ、変な風に修正することによって敵が増える可能性があるという事も覚えておいた方が良いのかもしれないね。
それにしても、佐久間先生は正確もきっちりとした生真面目なタイプだと思う。その理由としては、スーツの下に来ているブラウスのボタンを首元までしっかりとしめているし、袖口についたボタンもしっかりととめられていた。
でも、そんな完璧だと思われる佐久間先生であったが、僕の感覚が正しいのであれば、佐久間先生は陽香と同じくらい胸がスレンダーだと思う。むしろ、陽香よりも大人なのでこれ以下らの成長を期待できないという悲しい情報もあったりするのだ。
僕と向かい合わせで座っている佐久間先生であったが、僕が話しかけるまでは持っている資料を読んでいるのであった。
もしも、担任が一組と二組で逆だったとしたら、僕は学校に行くという事を早い段階で諦めていたのかもしれない。そうならなかったのは陽香たちの力もあったのかもしれないが、要所要所で僕の事を気にかけていてくれる佐久間先生の力も大きいと思う。
「齋藤君は今のところ学校に対して不満に思っていることも無いし、要望なんかも特にないってことで良いのかな?」
「はい、そういうのは全然ないです」
「じゃあ、授業に対しては何かあるかな。あの先生は分かりにくいとか、この先生は話が聞き取りにくいとかも無いかな?」
「そういうのも無いですね。この学校に対して不満とかは無いですよ」
「ところで、前田さんは連休中に何か変わったことをしてなかったかな?」
「陽香は何もしてないかったと思いますよ。沙緒莉姉さんの友達と遊ぶ時も一緒に居たし、真弓の友達と遊んでる時も一緒に居ましたからね」
「前田さんのお姉さんと妹さんのお友達とは遊んだって事?」
「そうです。一回ずつですけど遊びましたよ」
「前田さんのお友達とは遊んだりしなかったの?」
「そう言えば、陽香は友達と遊んだりしてなかったですね。みんなどこかに旅行にでも行ってたんですかね?」
「さあ、どうなんだろうね」
佐久間先生はこれ以降この場で陽香の話題を出すことは無かった。何を聞きたいのかわからなかったけれど、佐久間先生の聞きたかったことはもう聞き終わったのだろう。その証拠に、佐久間先生は先ほどまで開いていたファイルをしまって窓際に立って外の様子を眺めていた。
僕はそんな佐久間先生の後姿を眺めていたのだけれど、胸や手足がスレンダーなわりにはお尻が大きいように見えた。注意してみないとわからない程度ではあるが、スカートに若干下着が浮いているようにも見えたのだけれど、それは佐久間先生が履いている厚めのタイツのラインなのかもしれない。でも、僕はそんな事はどうでもいいと思う。大切なのは、スカートに何かのラインが浮かんでいるという事なのだ。




