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春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる  作者: 釧路太郎
ゴールデンウィーク編後半

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76/100

クレアさんと二人だけの部屋で何も起こらないはずがない

 クレアさんは僕の部屋に入るなり本棚から大量の漫画を取り出していた。そんなに読めるのかなと思いながら見ていると、数ページめくっては棚に戻すという作業を繰り返していたのだった。


「あんまり気にいるの無かったですか?」

「どの漫画も私の好みなんだけど、やっぱり見たことあるのばっかりだなって思ってるんだよね。見た事ないやつもあるんだけど、そういうのって最近出たのばっかりっぽいから続きが気になっちゃいそうで読むのを躊躇しちゃうんだよ。何度読んでも面白い漫画ってのはあるんだけどさ、どうせだったら読んだことない漫画を読んでみたいなって思ってね」

「じゃあ、真弓がクレアさんに何冊かお勧めしてみたらどうかな?」

「そうだね。沙緒莉お姉ちゃんも陽香お姉ちゃんも見てくれなかった漫画があるんだけど、こんなのどうかな?」

「へえ、どんなやつなのかな?」

「記憶喪失の主人公が微かに残っている記憶を頼りにヒロインを探していく話だよ。一応完結はしているみたいなんだけど、別作品で関連性がありそうなところもあるんだよね。他には、学校の先生が生徒と一緒に他の生徒の悩み相談を引き受ける話とかかな。これはまだ完結していないようなんだけど、近々最終回ってのを見たから今から見ても間に合うんじゃないかな」

「どっちも面白そうだね。でも、それだったら一応でも完結してる方を読んじゃおうかな」

「そっちは二十冊くらいで終わるから今晩だけじゃ読み切れないかもね」

「まあ、それだったらまた遊びに来るよ。そうだ、その時は何か料理を作ってくるね」

「クレアさんの作るご飯は美味しいから楽しみだな。お姉ちゃんたちにもその味付けのコツを教えてもらえると嬉しいけど、こっそり真弓にだけ教えてくれてもいいんだからね」

「真弓ちゃんは理解力が凄いからすぐにおいしいものを作れるようになると思うよ。味の濃いものは悪いって考えを捨てて、思い切って調味料をたくさん使うのも大切かもね」

「うーん、なんとなく頭ではわかってるんだけど、どうしてもママの顔が浮かんできて控えめになっちゃうんだよね」

「それだったらさ、一回みんなでケーキを焼いてみようよ。えげつないくらい砂糖とか使っちゃうからそれで感覚が麻痺しちゃうかもよ」

「それはそれでちょっと嫌だな。でも、一からケーキ作るのって楽しそうかも。お兄ちゃんの誕生日がもう少しだったと思うけど、その時は真弓たちでケーキを作ってあげるね」

「ありがとう。でもさ、無理して作らなくてもお店で買っちゃえばいいんじゃないかな」

「ちょっと、それって真弓たちの作るケーキが食べたくないって事なのかな。そうだったとしたら、お兄ちゃんが相手でも真弓は怒っちゃうよ」

「そういう意味じゃ無くて、中間テストの期間だから時間に余裕なんて無いんじゃないかなって思ってさ。ほら、家でも勉強とかするでしょ?」

「え、家で勉強なんてしないけど。受験勉強の時はさすがに範囲が広すぎたからしたけどさ、学校の定期テストなんて習った範囲でしか出題されないんだから家で勉強する必要なんて無いよ」

「ちなみになんだけどさ、中学校も小テストって毎週あったりするの?」

「うん、ほぼ毎日あると思うよ。無かった時の方が少ないかも」

「それもテスト勉強とかしてないわけ?」

「そうだね。でもさ、今の学校って授業も自分で好きなことが学べるから真弓は楽しいと思うよ。毎回五人以上の先生がついてくれているし、わかんないことがあったら何でも教えてもらえるって素敵な環境だと思うよ。だけど、わかんない事ってあんまり無かったりするんだよね。だから、真弓は自分がわからないことを探すために勉強しちゃってるかも。今では小テストの前に自分で作ったテストとかやってたりするんだよ」

「一組ってそんな感じで授業してるんだ。ところで、小テストの点数ってどんな感じなの?」

「真弓はちゃんと全問正解しているよ。と言うか、自分で作った問題の方が難しかったりもするんだよね。それが良いのか悪いのかわからないけど、そんな感じで学校で勉強しているよ」

「へえ、私の時とは全然違う勉強スタイルなんだね。私は本当に苦手なところを潰すことしか考えてなかったからな。でも、そのお陰で得意と不得意が逆転しちゃって本末転倒だったんだけどね。もしかしたらだけど、真弓ちゃんは大学に来て勉強した方がいいかもしれないね」

「大学の勉強は楽しそうだなって思うんだけど、今の授業も大切だからね。中学生である今しか出来ない事をたくさんやっておきたいなって思ってるんだよね」

「でもさ、今の真弓ちゃんがやってることって、先生がやってることなんじゃないかな。それって、中学生じゃなくて大人にしか出来ない事のような気もするけどね」

「そうかもしれないね。そう考えると、ちょっと面白いかも」

「ところで何だけど、なんで二人は話ながら着ていたパジャマを全部脱いでるの?」

「なんでって、昌晃君がヌーブラを見たそうにしているからだよ」

「真弓はね、クレアさんが脱ぐんだったら一緒に脱いだ方がいいかなって思ってね。お兄ちゃんもクレアさんだけパジャマを脱ぐのっておかしいって思うでしょ?」

「いや、二人ともパジャマを脱いでいるのはおかしいと思うよ。クレアさんだけとか、真弓だけとかじゃなくて、脱ぐこと自体がおかしいと思うんだけど」


 僕の言葉を遮るように誰かが扉をノックしていた。その音は話声と重なると聞こえないくらい小さいもので、僕が外に意識を向けていなかったら聞き逃していたかもしれない。そんな感じがしていたのだけれど、僕の目の前にいる真弓とクレアさんは慌ててパジャマを着直しているのですぐに返事を返すことが出来なかった。

 返事を返しても平気なのかと悩んでいると、扉がゆっくりと開いて恐る恐る陽香が部屋の中を覗こうとしていた。僕は一瞬固まってしまっていたが、二人ともすでにパジャマを着ていたのでその点は安心することが出来た。


「ねえ、随分と楽しそうにしている声が聞こえてくるんだけど、まだみんな寝ないの?」

「いや、もう少ししたら寝ようと思ってたところだよ」

「真弓はそのまま昌晃の部屋で寝るの?」

「真弓は自分の部屋で寝るよ。今は少しクレアさんとお話がしたかっただけだからね。じゃあ、明日またお話ししようね」

「うん、寝てたら起こしに来てね」

「わかった。お兄ちゃんの事も一緒に起こしてあげるね」

「もう、休みの日まで律儀に昌晃を起こしてるんだね。もしかして、昌晃も起こさないとお姉ちゃんみたいにいつまでも寝てる系なの?」

「そんなことは無いと思うけど、なんとなく真弓の方が早く起きてるんで起こしに行きたい気分になるんだよね」

「じゃあ、漫画が楽しくてもあんまり騒がないようにしてね。うるさくしてたら昌晃の事を殴るかもしれないからね」

「殴られたくないってのはあるけど、僕は騒いだりしないから大丈夫だよ」

「私も騒いだりしないよ。でも、運転とかはしゃいじゃったりしたから疲れちゃったかも。そろそろ寝ようかな」

「じゃあ、私は寝るから。おやすみなさい」

「真弓も寝るね。おやすみなさい」


 陽香と真弓が部屋から出て行ったので、僕は電気を消して寝ようと思ったのだけれど、それはクレアさんに止められてしまった。クレアさんは僕に横になるように指示をしてきたのでそれに従うことにした。拒んでも良いのだろうが、僕にはそんな事をする勇気なんて無かったのだ。


「今日はたくさん遊んでくれてありがとうね。私は沙緒莉から聞いててずっと昌晃君がどんな人なんだろうって考えてたんだ。そうして出来た私の中の昌晃君と、今日会った昌晃君を比べてみたんだけど。実物の方が噂を聞いて出来上がった昌晃君よりも優しくて楽しかったよ」

「沙緒莉姉さんからどんな風に聞いてたのか気になりますけど、想像より良かったなら嬉しいです。じゃあ、寝るんで電気を消しますね。クレアさんはこの部屋に慣れてないと思うんで横になっててくれていいですよ。って、机のしたじゃなくてなんで僕のベッドに横になってるんですか?」

「だって、敷布団を敷いていても床は固いじゃない。ベッドの方が寝やすそうだと思ってね」

「寝やすそうだと思ったって、机の下にもぐらないと眠れないんじゃなかったんですか?」

「そんなわけないでしょ。そんな人がいるなんて話は聞いたことが無いわ。おかしいって思わなかったの?」

「おかしいって思いましたけど、クレアさんがそこで寝るなら僕は床で寝ますよ。そっちの方がお互いに楽だと思いますし」

「まあまあ、そんな事を言わずにさ、もう少しだけ二人でお話ししようよ。それとも、さっきの続きでもする?」

「続きって何ですか?」

「私と目を合わせ続けるやつ」

「そんなの無理です。アレが限界です」

「そんな事を言ってもいいのかな。限界を超えた先に成長があるかもしれないのに。じゃあ、今度は目を合わせなくてもいいから私を見ててね」

「目を合わせないで見るのって難しくないですか?」

「そんな事ないよ。目じゃなくて私の唇を見てていいからね」

「それだったらまだ何とかなると思います。でも、本当にそんなことやるんですか?」

「もちろんだよ。じゃあ、最初は近付くところから始めようか。徐々に少しずつゆっくり進んでいくよ」


 クレアさんはそう言うと、僕の隣の空いたスペースに寝転んだ。今の状態だとクレアさんが落ちてしまうと思い、僕はベッドの中央から壁側へと移動した。クレアさんは僕が体と頭を浮かせている隙に右手を僕の頭の下へと潜り込ませてきた。

 僕は生まれて初めて腕枕をされたような気がした。クレアさんはそのまま少しずつ体を近付けてくるのだけれど、僕は壁がすぐそこにあるのでこれ以上後ろに下がることは出来なかった。

 クレアさんは目を見なくてもいいとは言っていたが、この距離では目を合わせる合わせない以前に近過ぎて恥ずかしい。その上、クレアさんはとてもいい匂いがしていた。沙緒莉姉さんも陽香も真弓もいい匂いなのは変わりないのだけれど、クレアさんの場合はその三人にプラスして別のいい匂いがしていたのだ。

 少しずつ近付いてくるクレアさんから僕は逃げることが出来なかったのだが、クレアさんはそんな事をかまわずに僕に近付いてきた。僕は恥ずかしいと思うよりも先に、得体のしれない恐怖を感じていた。


「じゃあ、さっきの続きだね。でも、今回は特別編だよ。最初は、おでこ同士をくっつけます。動いたり抵抗したらダメだからね」


 クレアさんは僕の返答を待たずに自分のおでこを僕のおでこにくっつけてきた。おでこ同士をくっつけるのも初めての経験だったのだが、こんな事をしたことがある人はいったい世の中にどれくらいいるのだろうか。僕は意味のない統計を取ろうとしていたのかもしれない。それくらい混乱していたのだ。


「だいぶ慣れてきたね。でも、私も少し恥ずかしいな。じゃあ、次はもう少しレベルアップして、おでこを付けたまま鼻と鼻をくっつけようか。ここまでは誰でも出来ると思うんだよね」


 今度はおでこをくっつけたままお互いの鼻をくっつけるそうだ。僕は本当に今何をするのが正解なのかわからなくなっていた。

 完全に電気は消していないのでそれなりに視界に飛び込んでくるものはあるのだけれど、自分の心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うくらい静寂に包まれていた。僕に聞こえるのは、自分の心臓の音ともう一つの鼓動。それと、クレアさんから漏れている吐息だけだ。


「ここまで来たら次はわかるかな。でも、それはいつの日かのお楽しみに取っておいてね。その代わり、私の付けているヌーブラを取らせてあげようか?」

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