水着は着ていないけどパンツは履いてます
ほぼ寝ていない状態でもお弁当を作ることは意外と出来るもので、みんなの協力のおかげで見た目は大変美味しそうなお弁当が出来上がった。それにしても、用意した重箱が思っていたよりも大きかったこともあって、四人で食べきれるか不安になるくらいの量が詰められていた。
全部作り終わってから思ったのだが、オカズを少し減らして一番下のお重をおにぎりにしておけば良かったような気がしている。実際、そうしたとしても誰も文句は言わなかっただろうし、おにぎりなら作りすぎても夜に食べることが出来ると思う。オカズも夜に食べても問題は無いと思うのだけれど、なんとなく残り物を夜に食べるというのは抵抗があったりもした。
「じゃあ、みんなで作ったお弁当も美味しそうだし、海まで張り切って行こうか。沙緒莉お姉ちゃんの友達が車で連れて行ってくれるんだよね?」
「うん、そうだよ。真弓だけにしか教えてなかったけど、そういう事だから」
「ちょっとお姉ちゃん、そんな大事なことは先に言ってよ。これくらいの量じゃ足りないかもしれないじゃない」
「そんな事ないでしょ。おにぎり用のご飯だって一升炊いちゃってるのよ。オカズだって三段分びっちりお重に入ってるんだし、これを持っていくだけでも大変だと思うけどな」
「でもさ、その人がたくさん食べる人かもしれないじゃない。そうだったとしたら、これくらいじゃ全然足りないよ」
「それなら心配いらないよ。クレアはワインが大好きなんだけど、お米はあんまり好きじゃないみたいだからね。今日は運転してくれるからワインは飲まないって言ってるけど、クレアがお酒を飲んじゃったら帰りは私が運転するかもしれないからね」
「え、お姉ちゃんって運転免許持ってるの?」
「まあね、受験の合間に免許を取っちゃったからね。陽香には言ってなかったっけ?」
「教えてもらってないよ。さらっと言われたような気もするけど、そんなの覚えてなかったもん」
「まあ、別にそんなに気にする事でもないでしょ。だからさ、今日はみんなで楽しく遊びましょうね」
僕は右手に風呂敷で包んだ三段の重箱を持ち、左手にはおにぎりが三十個以上入っているバスケットを持っていた。さすがにコレをもってバスに乗るのは大変だと思っていたので、沙緒莉姉さんの友達が車を出してくれるというのを聞いた時は嬉しかった。でも、どんな人が来るのか少し心配でもあったのだ。
本屋さんで見たあの先輩のような人だったら嫌だなと思いつつも、そんな人なら最初から誘わないだろうという思いもあったのだ。どんなに頭の中で考えても、あと少ししたら沙緒莉姉さんの友達がやってくると思うので、僕はそこで考えるのを辞めることにした。ただ、楽しい事が待っているという想像をしていたのだ。
「あ、クレアが着いたみたい。何度か送ってもらったことがあるからさすがに迷わなかったみたいね。じゃあ、皆行こうか。忘れものが無いか確認だけはしておこうね」
「確認と言われても、財布と携帯と鍵くらいしか持っていくものは無いかも」
「私も昌晃と似たような感じだけど、浮き輪を持っていこうか悩むわ」
「真弓も持っていくものはほとんどないけど、ビーチボールは持っていこうかな」
「私は日焼け止めを持っていくからさ、昌晃君に塗ってもらっちゃおうかな」
「あの、三人とも暖かい海を考えているみたいだけど、この時期の海ってまだ寒いよ。とてもじゃないけど海なんて入れないし、日光浴をしても寒くて震えちゃうと思うよ」
「え、海っていつでも入れるんじゃないの?」
「こっちの海って入れないの?」
「海水浴したかったのに」
「いや、そもそもこれから行くところは海水浴場じゃないからね。そもそも、この街には海はあっても海水浴場なんて無いよ。サーファー以外で海に入っている人は見た事ないかも」
「なんだ、せっかく下に水着を着てきたのに、意味なかったんだね。真弓の可愛い水着をお兄ちゃんに見せてあげたかったのにな」
「まあまあ、それだったらどこかに行った時に見せてあげればいいじゃない。ねえ、陽香もそう思うでしょ」
「う、うん。そうだね。真弓には悪いけど、今日は海水浴は我慢してもらわないとね。その代わり、今度どこかに行くときも真弓の生きたい場所にしようね」
「やったー、でもさ、そんな事を言っている陽香お姉ちゃんも中に水着着てるんじゃないの?」
「そんなことは無いよ。私はいつも通りだから大丈夫だよ。真弓みたいに浮かれたりしていないからさ。そんなもんだよ」
「じゃあ、水着を着ていない証拠を見せてもらっちゃおうかな。えいっ」
真弓は陽香の履いているジーンズに手をかけると、一瞬でベルトを外してジーンズを脱がせだした。陽香は真弓に対して抵抗をしているのだけれど、真弓になぜか沙緒莉姉さんも参戦してしまったので、陽香は敵の人数に驚いて自分を守ることすら放棄していた。
僕の位置からは真弓の頭が邪魔で陽香のパンツは見えなかったのだけれど、二人のリアクションを見る限りでは、下も水着ではなく普通にパンツを履いていたようだ。聞いた話によると、白と黄色のストライプのパンツのようなのだが、僕はそれを確認していない。
陽香は二人の手によってジーンズを脱がされている間も僕からは目を離さなかったのだが、それは僕の視線が下に動かないように見張っているようにも見えた。
陽香は二人と違って僕に下着を見られるのが恥ずかしいようなのだが、よくよく考えてみると沙緒莉姉さんと真弓みたいに自分からパンツを見せてくる方が異常なのだと気付いてしまった。
僕の位置からは真弓が壁になって陽香のパンツは見えないのだけれど、陽香はパンツが見えないようにしゃがみながらも顔を真っ赤にして僕を睨んでいた。
「昌晃のスケベ。変態。バカ」
「いや、僕のせいじゃないし、この位置からじゃ真弓が壁になってて何も見えてないから」
「そんなの知らない。変態。バカ」




