林田さんは紐をほどかせたい
僕は林田さんと先生の圧におされていじめられているという事を認めざるを得ない状況になってしまったのだけれど、実際のところ僕はいじめられているという自覚は無いのでどうすればいいのか見当もつかないのだ。
確かに、クラスの男子から無視されていたり授業でペアを作る時にあぶれてしまうことも多くあったが、男子の人数が偶数である以上は仕方のない事である。先生はそれに気付いていないようだが、林田さんは当然気が付いているはずだ。
なぜなら、僕はペアを組む相手を探している時に林田さんは誰よりも先に僕に話しかけに来るのだ。それさえなければペアを組む相手が出来そうな時もあったのだけれど、体育だけではなく実験や選択科目などでも僕は男子とペアを組んだことが一度も無かったのである。
「じゃあ、昌晃君がどうして無視されるのか考えてみようか。でも、そんな話を教室でするのもおかしいと思うし、やっぱり部室に行って話そうね。もしかしたら、それの原因が来てるかもしれないよ」
「原因って、陽香の事?」
「どうだろうね。でもさ、前田さんって隣のクラスなのに私達のクラスにも影響を与えるなんて凄いよね。今までそんな生徒っていなかったと思うんだけど、前田さんって中学でもそんな感じだったの?」
「さすがに中学の時の事はわからないな。いとこってだけで一緒に住むようになったのってこの春からだし、陽香の事をちゃんと知ったのは春になってからだよ」
「そうなんだ。じゃあさ、前田さんも知らない昌晃君の秘密とかもあったりするのかな?」
「陽香だけってより、沙緒莉姉さんと真弓も知らないことがあるよ」
「その話はさ、部室の中でゆっくり聞かせてもらおうかな」
林田さんは昼間よりもスムーズに鍵を開けて僕を中へと促してくれた。まるで一流ホテルのドアマンのような動きではあったのだけれど、ドアが閉まると同時に鍵が閉まる音が聞こえてきた。気のせいだったかもしれないと思えるくらいに、ドアが閉まる音に鍵が掛けられた音が重なっていたのだ。
「じゃあ、前田さんが原因で昌晃君がハブられてるって事なんだけどね、それってやっぱり辛いのかな?」
「いや、僕にとってはそういうのは慣れているんで気にしてないよ。中学の時も似たような感じだったしね。でも、その時は男子だけじゃなくてクラス全体からだったけどさ」
「それって辛かったんじゃない?」
「どうだろう。僕は授業に出てもここの入試には何の役にも立たないってのを知っていたから気にしてなかったんだけどさ、そのお陰でここに入るための勉強がちゃんと出来たってのは感謝してるかも」
「そうか。昌晃君は昔から我慢してたんだね。でも、これからは私が昌晃君の一番の味方になってあげるからね。前田さんも昌晃君の味方になってくれるかもしれないけどさ、前田さんは昌晃君にとっていとこって言う薄っぺらい関係でしかないからね。今は一緒に居るから味方になってくれるかもしれないけど、大人になって誰かと結婚してしまったら離れて行ってしまうと思うんだよね。でも、私はどんな時でも昌晃君の味方だから安心していいんだからね。じゃあ、座ってゆっくり話そうか」
僕は来客用の椅子に腰を下ろしたのだけれど、林田さんは僕の脚の上に座ってきた。
僕が林田さんのその行動に戸惑っていると、僕の背中に両手を回して抱き着いてきた。ちょうど林田さんの口が僕の耳元にあるのだけれど、かすかに感じる吐息が少しくすぐったくて照れ臭かった。
僕は林田さんを引きはがそうと思ったのだが、体勢的に上手く力を入れて離れることが難しかった。林田さんに触れる場所を考えないで行動をすればいくらでも離すことは出来るのだけれど、さすがに肩や腕以外に触れるのはダメなような気がしていた。そして、その肩や腕に触れることは出来ても、力を入れて引きはがすことは出来そうもなかった。
「私がね、昌晃君の味方だって証拠を見せてあげようか」
「そんな事よりもさ、離れてもらってもいいかな?」
「うん、これから離れるけど、もう少しだけこうしていたいな」
「林田さんってさ、誰にでもこういうことするの?」
「そんなわけないじゃない。昌晃君だから特別だよ。前田さんとはこういうことしたりしてないの?」
「いとこ同士だよ。するわけないじゃない。でもさ、こういうのって良くないんじゃないかな」
「大丈夫。これからもっとよくない事をしちゃうからね。でも、私からは何もしないからね。昌晃君がしたいと思ったらしてくれていいんだからね」
林田さんは僕の耳元にそう囁くと、離れ際に僕の唇にそっと触れていった。僕は唇を触られてドキドキしてしまったが、それと同時に先程まで密着していた林田さんが離れたことで安堵したと同時に切なさも感じていた。
「じゃあ、ここで昌晃君に問題を出すね。昌晃君がほどく紐はどちらでしょう?」
「ほどく紐って?」
「一番は、私が履いているパンツの紐。二番は、私が付けているブラの紐。さあ、どっち?」
「いや、どっちもほどかないけど」
「本当にそうなのかな?」
林田さんはスカートのホックを外すと、そのままスカートを脱いでしまった。ブレザーの下に着ているワイシャツの裾で隠してはいるのだけれど、そこには隠しきれていないパンツがチラチラと見えていた。
林田さんはそのままブレザーのボタンを外して前をはだけさせてしまったのだが、なぜかワイシャツのボタンを一つずつ飛ばして外していた。見えそうで見えないこの状況はとても僕の心を刺激して、感情を掻き乱していた。
沙緒莉姉さんとも陽香とも真弓とも違う下着の見せ方だったという事もあって、僕はそれを食い入るように見てしまっていたのだけれど、誰かがドアをノックしたことで急に現実に引き戻されてしまった。




