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春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる  作者: 釧路太郎
高校生編1

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50/100

ちょっと危険な林田さん

 この学校ではちょくちょく小テストがあるのだけれど、それはほとんど受験勉強でやっていた範囲と重なっていた。そんなわけで僕も陽香も小テストは難なくこなせていたのだが、内部進学組の生徒たちは微妙に苦戦しているようだった。それでも、クラスの平均点が八十点を超えているのが普通だったのには驚いた。


「齋藤君ってさ、本当に頭がいいよね。今回の小テストもほぼ満点に近い出来だったもんね」

「でも、みんなもやっぱり凄いよね。あんまり勉強やってる感じでもないのにさ、普通にいい点とってるもんね」

「そうは言うけどさ、齋藤君みたいにほぼ満点の生徒って一人しかいないからね」

「それって陽香の事?」

「違う違う。このクラスの話だよ。隣のクラスはこっちより優秀な生徒が多いからみんな満点に近いと思うな。このクラスで頭が良いのって代表の林田さんだよ。本当は一組に異動することも出来るのにこのクラスで頑張ってるんだよね」

「クラスの異動?」

「うん、ウチの学校って高校卒業までは基本的にクラス替えって無いんだけどさ、学力に応じて一組から順番に振り分けられてるんだって知らなかった?」

「知らないな。合格することに必死で学校の事はほとんど知らないんだよね」

「簡単に説明するとさ、一組はこの学年で一番優秀な生徒が集まってるんだよ。だから、そんなクラスに入った前田さんは凄いなってみんな噂してるの。でもでもでも、齋藤君だってこの学校に合格したんだから凄いのには変わりないんだよ」

「さっき異動って言ってたけど、成績が良かったら僕も一組に行けるの?」

「行けると思うけど、齋藤君の場合は中学までの積み重ねが無いから厳しいかもね。小テストと定期テストの累計点で判断されてるって噂だからね。平均点だったら可能性はあるかもしれないけど、累計点だと厳しいんじゃないかな」

「ちなみになんだけどさ、一組が優秀なのって中学も同じなのかな?」

「うん、そうだと思うよ。私達はずっと二組だけどさ、何人か優秀な生徒が一組に異動してたりしたもんね」

「だよね。でもさ、一組についてけないと悲惨だよね」

「悲惨ってどういう事?」

「一組の中で成績を維持出来ない人は一番数字の大きいクラスに異動することになるんだよ。今だったら六組かな」

「二組じゃなくて六組なの?」

「あのね、二組以降はクラスの定員が決まっていてね、誰かがいなくならないとそのクラスに入れないんだよ。誰かが一組に異動したとしても、その空いた席に三組の人が異動してくるとかがあるとさ、定員に達していないクラスに割り振られることになるんだけど、それってほとんどの場合が一番数字の大きいクラスになるんだよ。一組と一番数字の大きいクラスは定員が決まってないんで何人でも入れるんだけど、一組から脱落しちゃうと戻るのは大変なんてもんじゃないかな」

「それが理由で林田さんって子は一組に行かないの?」

「それは違うと思うよ。林田さんは一組でも成績を維持できると思うし、この国に飛び級制度があればもう大学院に行ってるような感じだと思うけど、林田さんは自習が嫌いなんだって自分で言ってたからね」

「自習が嫌いとどう関係があるの?」

「一組の授業って生徒の独自性に任せるって意味でほとんどの授業が自習なんだよね。この前みたいな小テストとか定期テストは普通に同じタイミングで行うし、選択科目とか体育とかも私達のクラスと同時に行ってるんだけどさ、私達が普段先生に教えてもらっているような授業って一組はやってないんだよ」

「じゃあ、先生はずっと見てるだけなの?」

「それがそうでもないんだよね。一組の自習ってその時間に空いている先生が教室に集まって生徒と一緒に自習してるって話だよ」

「そんな話は陽香からも聞いた事なかったな。家に帰る時に聞いてみようかな」

「ねえ、雪ちゃんと雅美ちゃん。さっき私の事話してなかった?」

「あ、林田さん。あのね、齋藤君と林田さんが小テストで満点に近かったって話をしてたんだよ」

「その話をしてたんだ。そうだ、齋藤君とちゃんと話すの初めてだよね。私って他の学校に知り合いがいないから齋藤君がどんな人なのかわからなくて様子をうかがってたんだ。でもね、齋藤君って私と同じで勉強が好きそうだなって思ったんだよ。だってさ、齋藤君って私と同じ点数だったんだもんね。ちなみに、どこを間違えたの?」

「小テストだったら、三問目を間違えたよ」

「え、嘘。信じられない。それってさ、私と同じところを間違えてるんだけど。もしかして、これって運命ってやつ?」

「いや、それは違うんじゃないかな。たまたま同じところを間違えただけだと思うよ」

「確かにそうかもしれないね。でも、次の小テストでそれが間違いだったか確認しましょうね。次の小テストは、次の授業の数学であると思うわ。そうそう、ちゃんと自己紹介をしていなかったわね。私は林田桃よ。齋藤君が一組に異動にならなければ三年間よろしくね」

「僕は齋藤昌晃です。三年間よろしく」

「じゃあ、お友達にはなれたって事だし、今日のお昼は私もご一緒してもいいかしら?」

「僕は構わないよ。吉川さんと今井さんはどうかな?」

「あ、今日は他のクラスの子と食べる約束してたんだった。悪いけど今日は一緒にお昼食べられないかも」

「ごめんね。そう言うわけなんだ」

「じゃあ、私と二人っきりって事になるけど、齋藤君はそれでもいいかな?」

「お昼くらいなら別に構わないよ。もしかしたら、陽香が一緒になるかもしれないけど、それでもいいなら」

「陽香って、隣のクラスの前田さんだったわよね。齋藤君のいとこだって噂の人だよね?」

「噂って言うか、本当にいとこなんだけどね」

「じゃあ、次の小テストも頑張りましょうね」


 僕は数学は得意なので満点を取る自信はあった。林田さんがどれくらい数学が得意なのかわからないけれど、僕はきっと今回はケアレスミスも無く満点を取るだろう。

 たまたま同じ場所を間違えることがあったとしても、同じようなことは二度も続くことは無いはずだ。


 小テストはその授業中に採点され、点数が発表されたのだが、僕と林田さんは二人だけ満点だった。同じところをミスするのではなく全て同じく正解していたのだ。

 お昼休み前最後の授業である国語でも小テストはあったのだが、僕は惜しい事に一か所だけ間違えてしまった。そして、林田さんもなぜか一か所だけ間違えていたようだ。二人で解答を見せ合ったわけではないのでどこを間違えたのかわからないが、同じ場所を間違えているという事は無いと思う。僕は本当にくだらないミスをしてしまったのだ。その問題は中学一年生でも答えられるような問題だったし、そんな場所を林田さんがミスするはずがないのだ。

 しかし、お弁当を食べる前に間違えた場所を聞いたところ、林田さんは僕と同じ場所を間違えていたようだ。そんな事ってあり得るのだろうか。


「ねえ、これって運命ってやつなのかな。でも、齋藤君があんな問題を間違えるなんて思いもよらなかったよ。授業が終わった時に先生に聞いてみたんだけどね、あの問題を間違えたのってクラスでも私と齋藤君だけみたいだよ。これって、なんでだろうね?」

「さあ、単純にケアレスミスって事じゃないかな」


 その時、助け舟ではないのだと思うけど、陽香が僕のクラスに入ってきた。隣のクラスの生徒が入ってくるという事でも珍しい事だとは思うのだけれど、陽香はこのクラスの男子にも人気があるみたいなので視線が一気に僕の横に立っている陽香に集中していた。


「今日はいつもの二人が一緒じゃないみたいだけど、私と一緒にお昼食べてくれるって事でいいの?」

「僕は別にかまわないけど、林田さんも一緒で良いかな?」

「林田さん?」

「初めまして、このクラスの代表を任されています。林田桃です。今日は齋藤君と一緒にお昼を食べる約束をしていたのですが、一組の前田さんも一緒にどうですか?」

「え、約束してたの?」

「うん、なんか成り行きでね」

「じゃあ、私は一緒じゃない方がいいって事かな。ごめんね」

「いいえ、前田さんがよろしければご一緒にいかがですか?」

「でも、二人で何か話したいことでもあるんじゃないの?」

「今のところはそういうことも無いのですが、これからはどうなるかわかりませんね。ですが、私は前田さんとお話をしてみたいと思っていたので、ご一緒できればうれしいのですが」

「昌晃は私も一緒で良いの?」

「うん、陽香も一緒で良いよ」

「じゃあ、教室だと皆さんが前田さんに注目してしまいますので、場所を移動しましょうか。そうですね、私が所属している部活の部室なんていかがでしょうか?」

「そこって、部外者が入っても大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。それに、ソコの方が色々とはかどると思いますからね。さあ、行きましょうか」


 林田さんは当然僕たちの前を歩いて道案内をしてくれるのだけれど、階段を下りて一階に差し掛かったところで急に立ち止まって僕たちの方へ振り向いた。

 何だろうと思って僕も陽香も立ち止まったのだが、林田さんは何故が僕の手を握って再び歩き出した。僕は何故林田さんに手を握られたのかわからないまま歩いていたのだけれど、僕の少し後ろを歩いている陽香はお弁当を持っていない左手で僕の制服の裾を掴んでいた。


「さあ、部室につきましたよ。今鍵を開けますから待っててくださいね」


 林田さんは僕から手を離してポケットの中から鍵を取り出すと、その鍵を使って部室のドアを開けた。

 僕は中をそっと覗き込んだのだけれど、意外と物が少なくて整理もされているようだった。

 陽香は相変わらず僕の制服を掴んで離さないでいた。直接体を掴まれていないというのに、その握る力が先ほどよりも強くなっているのを感じていた。

 なぜなら、扉には大きく『お料理研究会』と書かれた紙が貼ってあったのだ。陽香はまだまだ料理が完璧じゃないので、この機会を利用して料理を学びたいのだけれど、それを言い出すのは恥ずかしいんだなと僕は思っていた。

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