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春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる  作者: 釧路太郎
高校生編1

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吉川さんはドット柄で今井さんはパステルカラー

「齋藤君ってさ、前田さんの事を名前で呼んでるじゃない。なんで私達の事も名前で呼ばないわけ?」

「なんでって、陽香の事を名字で呼ぶのっておかしいじゃないかな。だってさ、家には陽香のお姉さんも妹もいるわけだし、苗字だと三人とも同じだから誰を呼んでるかわからなくなっちゃうからね」

「でもさ、齋藤君って兄妹いないのに前田さんからは名前で呼ばれてるでしょ。それって、何か特別な事でもあるわけ?」

「それもさ、僕の事を名字で呼んだとして、僕の両親がいた時とか反応に困るでしょ。だからじゃないかな」

「でもでもでも、それでも私達の事も名前で呼んでもらいたいなって思うよ」

「なんでそんなに名前にこだわるの?」

「だってさ、齋藤君が名前で呼ぶ女子って前田さんだけでしょ。それってなんかいいじゃない」

「そうだよね。なんか、特別って感じがするもん」

「そう言われてもさ、僕は二人に特別な感情なんて持ってないけど、それでもいいの?」

「それでいいよ。だって、齋藤君の特別になりたいわけじゃないもんね」

「だよね。私達は前田さんに憧れてて、前田さんみたいになりたいだけだもんね」

「え、それって、どういう事?」

「この学校の女子はほとんどそうだと思うんだけど、みんな前田さんのファンなんだよ。だから、少しでも前田さんに近付けるように、前田さんと同じ状況になりたいって思ってるんだ」

「その一つが、齋藤君に名前で呼ばれることなんだよ。どう、凄いことでしょ」

「悪いけど、その気持ちが全然わからないよ」


 僕に仲良くしてくれている吉川さんと今井さんであったが、それは僕と仲良くすれば陽香とも仲良くなれるって考えたうえでの行動だったのだろう。でも、僕はそれでも誰かと学校で話すという事が楽しかったので良いのだ。


「それだったらさ、今度陽香が来たら一緒に遊ぶようにお願いしてみようか?」

「いやいやいや、そんなの恐れ多いよ」

「無理無理無理、緊張して何も出来なくなるって」

「そんな事ないと思うけどな。でも、陽香も二人の事を気にしてる感じだったよ」

「え、私達の事を?」

「気にしてる?」

「うん、昨日も晩御飯食べた後に三人でゲームしてたんだけどさ、その時に陽香が気にしてたよ」

「どんな風に気にしてたの?」

「えっとね。昼休みに僕と一緒にご飯食べてた人達に味の感想聞いて欲しいって言ってたな」

「それだけ?」

「あとは、どうして一緒に食べてるのか知りたいみたいなことを言ってたよ」

「え、ちょっと待って。それってさ、結構勘違いされてそうじゃない」

「勘違いって何よ?」

「だってさ、私達が齋藤君の事を好きでアプローチしてるって思われてるかもしれないよ」

「それはマズいね。何とかして誤解を解かないと」

「だよね。私達は齋藤君には興味無いもんね。ぱっと見はイケてる方だと思うし、勉強も相当できると思うけどさ、それってこの学校の中の話だしね」

「今はほとんどから見ないけど、大学に行った先輩とかもっと凄い人いるしね」

「うん、テレビに出てる人とかモデルやってる人とかもいるもんね」

「そう考えるとさ、齋藤君じゃ少し物足りないよね」

「だよね」


 何だろう。僕は何もしていないのに傷付いてしまっているような気がする。小学校の時も中学校の時もこんな思いを感じた事なんて無かったような気がするな。

 もしかして、目の前で僕と知らない人の差を叩きつけられるのっていじめられるよりも辛い事なのだろうか。悲しいけど、この現実を受け止めるしかないのだろうな。


「あ、午後の授業は隣のクラスと合同でやる化学実験だよ。もしかしたら、前田さんと同じ班になれるかもしれないよ」

「その可能性はあるかも。でも、少しでもその可能性をあげるためにも、齋藤君と同じ班になろう。齋藤君は私達と同じ班になるんだよね?」

「だよね?」

「そうだね。先生が班割を決めてなければそうなるかもね」

「そうだった、前回も先生が勝手に決めた班だったって事を忘れてた」

「しかも、私達は三人ともバラバラだったんだ」

「でも、そんな事で私はあきらめないよ」

「そう、私も諦めない。いつか、いつの日にか、前田さんと同じ班で実験してやるんだ」

「実験じゃなくてさ、二人と一緒に遊んだりご飯に行ったりするか聞いてみようか?」

「ええ、嬉しいけど、それはちょっと困るかも」

「どんな感じで話せばいいかわからないし、一緒にテーブルを囲んで食事なんて無理でしょ」

「そんな事ないと思うんだけどな。そんなこと言うんだったらさ、二人は陽香を見てるだけで良いって事?」

「まあ、お話が出来るんならしたいけどさ、緊張しちゃうじゃない。だから、今は見てるだけでもいいのかなって思うんだよね」

「私は雪よりは緊張しないと思うけどさ、場合によっては身動き一つとれなくなっちゃうかも」


 僕の前ではそんな素振りを全く見せない二人だったので、僕は二人の言っていることを全く信じていなかったのだけれど、急に陽香が僕のもとへ遊びに来たことで二人の言っていたことが真実だったという事が証明された。


「やあ、遊びに来ちゃった。次の授業ってさ、私と昌晃のクラスが合同で実験するやつだよね?」

「うん、そうだね」

「前回は先生が勝手にペアを決めてたけどさ、自由に組んでいいよって言われたら昌晃は私とペアになろうよ」

「クラスの人はそれでいいの?」

「いいんじゃないかな。なんか、みんな話しかけてもよそよそしいんだよね。やっぱりさ、内部進学組と外部受験組で派閥別れてるって事なのかな」

「その派閥の分け方だとさ、外部受験組って僕と陽香だけになっちゃうんだけど」

「それもそうか。それだとちょっと戦力的に戦えそうにないからさ、昌晃の友達二人にも助けてもらおうよ。ねえ、お二人は私達に協力してくれるかな?」

「え、は、はい。もちろんです」

「だよね。だよね。だよね。協力すすすすするます」

「あはは、なんだかおもしろい人達だね。どっかの芸人みたいだよ。あ、そろそろ戻って準備してこようかな。じゃあ、またあとでね」


 短い時間でも陽香が僕に会いに来るのは理由がある。僕の事が好きかどうかは置いておいて、休み時間に話をする相手がいないのだ。僕は奇跡的に吉川さんと今井さんが話しかけてくれたので今の状況があるのだけれど、隣のクラスでは陽香に近付くのではなく一歩引いて見守るというのが暗黙の了解となっているそうだ。

 それは陽香にとって辛い事のようで、少しでも誰かと話したくなった時にはさっきのように短時間でも僕と話して満足しているのだ。今日は二人にも話しかけていたけれど、二人の反応は予想外で面白かった。


「ねえ、前田さんとあんなにたくさん話しちゃったよ」

「私なんて目が合ったもんね」

「いや、私の方を見つめてくれてたし」

「そんな事ないよ。私にはウインクしてくれたしね」

「それて、ウインクじゃなくて瞬きなんじゃないの?」

「瞬きなわけないじゃない。ねえ、齋藤君はそこのところをどう思う?」

「いや、どうでもいいと思うよ」

「どうでも良くないわ」

「はっきりしなさい」


 僕は本当に二人の争いなんてどうでもいいと思っていた。どっちかに肩入れするわけにもいかないし、両方を持ち上げるなんてのも僕の技術じゃ無理な話なのだ。そんな時にどうすればいいのだろうか。答えは簡単だ。何もしないでやり過ごせばいいのだ。

 僕は何もせずにやり過ごそうと思って適当な事を答えたのだが、その答えは二人を当然満足させるようなものではなかった。そんな事もあって二人は少々強めに僕にツッコミを入れたのだけれど、その勢いと僕が椅子に浅く座っていたという事もあって、ツッコミの衝撃に耐えられずに後ろに倒れてしまった。

 そこまで痛くは無かったのだけれど、背中を強打したことで呼吸がしにくくなって苦しかったのだが、それ以外は特に痛みも感じていなかった。

 倒れた僕の様子を見て心配したのか、吉川さんと今井さんが僕の近くにしゃがみこんで泣きそうになりながらも謝罪をしてくれた。僕は背中を打った衝撃でまだ呼吸が安定していないので二人に何も伝えることは出来なかった。


 ただ、二人の謝罪の言葉とスカートの中に隠れていた物がどんな色だったのかは僕にちゃんと伝わっていた。顔を右に向けると吉川さんのスカートの中が見えて、顔を左に向けると今井さんのスカートの中が見えていた。

 僕は顔を左右どちらにも動かせずにいたのだけれど、正面を向いているとなぜか僕の顔を覗き込んでいる陽香と目が合った。陽香も心配そうに僕の顔を覗き込んでいるのだけれど、なぜか僕の位置からは陽香の顔とスカートの中が少し見えているのだ。

 今まで何度か見たことのあるような白とピンクのストライプ柄が僕に何かを語りかけてきているような気もしたのだけれど、それは完全に気のせいだったと思う。

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