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春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる  作者: 釧路太郎
高校生編1

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高校生になった僕と陽香

 僕がこの春から通う大紅団扇大学付属高校には知り合いは一人しかいない。誰も知り合いがいないと思って受験したので残念な話ではあるのだが、その知り合いがいとこの前田陽香というのはせめてもの救いである。

 この春から僕の家で暮らすことになったいとこの陽香は僕と同じ高校に通うことになるのだが、陽香の他に新大学生の沙緒莉姉さんと新中学生の真弓も一緒に暮らすことになっていた。高校と中学校は比較的校舎も近いので真弓と学校で会う機会はあるのかもしれないが、大学は歩いていくには面倒な距離にあるので沙緒莉姉さんと学校で会う機械はほとんどないと思われる。


 今日は高校の入学式があるのだが、中学と大学は別の日なので沙緒莉姉さんと真弓はまだ寝ているようだ。昨日も夜遅くまでゲームに付き合わされてしまったので、僕はまだ少し眠いのだけれど、今から二度寝するわけにもいかないので着替えてから朝ご飯を食べることにする。よく噛んで食べていたらそのうち頭も冴えてくるだろう。


 一階に降りると制服にエプロンを付けた陽香が朝ごはんの手伝いをしているのだが、僕にはまだ気づいていないようだ。僕はまだ制服に袖を通していないので部屋着ではあるのだが、制服に着替えている陽香の気合が入りすぎているのか僕のやる気が無いだけなのか答えはわからなかった。


「うわ、そこにいるなら声くらいかけてよね。びっくりして落とすとこだったわ」

「おはよう。もう制服に着替えているんだね」

「早くこの制服を着たかったってのもあるんだけど、朝は色々と準備に時間がかかるからね。あ、ご飯作りを手伝ってるのは手間じゃないけどね」

「これから入学式だって言うのに、朝から手伝ってるなんて偉いよね。僕はそんな気持ちになれないよ。まだ少し眠いからね」

「もしかして、私が部屋に戻ってからもずっとゲームやってたの?」

「ずっとではないけど、沙緒莉姉さんが勝つまで付き合わされたよ。何時だったかは怖くて見てないけどね」

「もう、春休みじゃないんだから最後まで付き合わなくていいでしょ。今日帰ってからとかでもいいと思うんだけどな」

「でもさ、沙緒莉姉さんが勝つまで眠れないってうるさかったんだよ」

「そんなこと言われて従わなくても大丈夫よ。沙緒莉姉さんは黙ってても横になれば寝てるし、真弓だって別にそこまで真剣に勝ち負けにこだわってるわけじゃないしね。もしかしたら、昌晃が一番勝ちにこだわってたのかもよ」

「そうかもしれないな。それにしても、この味噌汁っていつもよりちゃんと味がするね。母さんが作ったの?」

「違うよ。それは私が作ったの。いつもより味噌を増やしたんだけど、しょっぱくない?」

「全然。これくらいの方がご飯と一緒に食べるのにちょうどいいと思うよ」

「そっか。だんだんわかってきたかも。食べてくれてありがとうね。じゃあ、私は学校に行く準備しなくちゃ。昌晃も八時には家を出られるようにしておいてね」

「わかったよ。じゃあ、またあとで」


 僕は朝からしっかりと食事をとるのだけれど、陽香はほとんど食べていないのではないかというような量で食事を済ませていた。今日は授業が無いとはいえ、あれくらいで足りるのかなと思っていた。僕は食事も済んだので食器を流しに持っていったのだが、そこには三人分の食器が重ねられていた。

 きっと、陽香は僕と一緒に食事をする前に軽く何か食べていたのだろう。おそらく、それは味見よりも少し多いくらいの量だと思うのだが、几帳面な陽香は味見だとしてもちゃんと自分用の食器を使っていたみたいだ。


 僕はそのまま部屋に戻って制服に袖を通し、上着を一枚羽織るか悩んでいたのだけれど、外はそれほど寒くなさそうだし天気予報も大丈夫そうなのでそのまま制服を着ていくことにした。

 僕はほとんどからに近いバッグを手に取って下に降りていったのだが、まだ陽香は準備が整っていないようだ。八時まではまだ時間もあるので問題はないのだけれど、朝のこの時間に学校に行くのは初めてなので出来ることならば余裕をもって向かいたいものである。


「お待たせ。昌晃は上に何も着て行かないの?」

「うん、制服だけで良いかなって思ってさ。陽香はそのコートを着ていくの?」

「そうなんだけど、変かな?」

「いや、変じゃないと思うよ。陽香には似合ってると思うし。僕は多少寒さに強いってだけだからさ、おかしい僕に合わせることも無いと思うよ」

「それもそうだね。じゃあ、学校に行こうか。ちゃんと時間内にたどり着けそう?」

「時間的には大丈夫だと思うよ。問題は、教室がどこかって事だけどね」


 僕の家から学校までは少しだけ歩くことになるのだけれど、不思議なことにその通学途中に同じ制服を着ている生徒を見かけることは無かった。それどころか、通勤の時間でもあると思うのに車も走っていなかったのである。


「あさって意外と誰もいないんだね。前に住んでたところは結構人通りが多かったからさ、何かこういうのって新鮮だよ」

「僕も不思議に思ってるんだけど、いつもはもっと人もいると思うんだけどな。車だって普通に走ってると思うけど、今日は静かだよね」


 そんなことを話しているうちに学校についたのだが、なぜか僕は校舎の窓という窓から強烈な視線を感じていた。一体何なんだろうと思って見てみると、教室と思われる部屋の窓に僕たちと同じ制服を着ている生徒が立っているのだ。

 登校時間はまだ余裕があると思うのだけれど、校門付近に僕ら以外の生徒はおらず、後ろを振り向いても誰も歩いていなかった。


「ねえ、入学式だからって早くから集まるとか聞いてないよね?」

「うん、聞いてないよ。八時半までに職員室に来てくれって言われただけだしね」

「八時半ってまだ余裕あるよね?」

「全然あるね。とりあえず、職員室に行ってみようよ」


 僕も陽香も自分のシューズロッカーがわからなかったので上靴に履き替えた後に持ってきたシューズバッグに外靴を入れて持ち歩いていた。

 二階にある職員室に向かっていたのだが、その途中で面接をしてくれた教員が僕たちを呼び止めたのだ。


「おはよう。齋藤君と前田さんだよね?」

「おはようございます。僕が齋藤とこっちが前田です」

「おはようございます」

「じゃあ、さっそくなんだけど君達の担任の先生を呼んでくるから待っててね」


 僕たちは職員室の前で待っていたのだが、お互いに何か話すということも無かった。ただ黙って窓から見える外の景色を眺めていたのだけれど、この学校は校舎が大きい割には校庭がそれほど広くないんだなと思っていた。

 そんな事をぼんやりと考えていると、先程の教員が職員室から出てきた。僕たちの担任を連れてきてくれたのだが、僕たちの担任は二人いたのだ。僕はその二人が担任と副担任なのかなと思っていたのだけれど、僕たちはどうやら別々のクラスに分けられているようだ。


「こちらが前田さんの担任の花田陽介先生ね。で、こちらが齋藤君の担任の佐久間朋先生ね。あとは担任の先生に教えてもらってね。じゃあ、これから七年間頑張ってね」

「おはよう、前田さんに齋藤君。じゃあ、二人にさっそくシューズロッカーの場所を案内するね。佐久間先生は齋藤君のサポートをお願いしますね」

「はい、頑張ります。あ、二人ともおはようございます」

「おはようございます。よろしくお願いします」

「おはようございます。私と斎藤君のクラスって別々になるんですか?」

「ああ、別々になるんだが、一緒のクラスの方が良かったのか?」

「そう言うわけじゃないんですけど、外部受験で合格した生徒って同じクラスに集められるって聞いてたんで気になっただけです」

「それは結構昔の話だな。最近は滅多に外部受験で入ってくる生徒がいなかったからな。ここ数年でも君達以外に二人しかいなかったからな。それに、外部受験は色々と大変なことも多いと思うし、それを担任である我々がしっかりサポートすることになるのだよ。一人で二人見るよりも、マンツーマンの方が良いと思うしな。まあ、同性の方が相談しやすいこともあると思うので、前田さんは佐久間先生に相談したっていいんだからな」

「はあ、相談することが出来たらそうします」


 僕たちは教えられたシューズロッカーに外靴を入れて渡された鍵で施錠した。お金持ちの生徒が多いという事は聞いていたのだが、靴も自己責任で監理しないといけないという事なのだろうか。他にも貴重品を入れておいていいらしいのだが、今日は財布もスマホも手元にあった方が良いと思った。


「じゃあ、齋藤君は二組だからこっちに来てね。先生が齋藤君をみんなに紹介するから、呼ばれたら入ってくるのよ」

「なんか、それって転校生っぽいですね」

「まあ、この学校ってクラス替えが無いから小学校からずっと同じクラスなのよね。だから、齋藤君が転校生っぽいってのは間違ってないかもよ」


 僕は佐久間先生に呼ばれて教室に入ったのだが、僕を見る男子の視線は転校生を見るというものではなく、殺したいほど憎んでいる相手を見るようなモノに感じてしまった。

 僕はまたいじめられるような原因を作ってしまったのかと思っていたのだけれど、ただ登校してきただけなので思い当たる節は全く見つからなかった。

 ただ、自己紹介を軽くしている時に誰も邪魔をしてこなかったのは意外だった。あれほどの視線を向けられていたので何か言われると思って覚悟していたのだけれど、このクラスの人達は基本的に育ちが良いようで人の話を遮るような事はしないようだ。それでも、自分の席に着くまでの間も多くの視線が僕に突き刺さっているのを感じていた。


「ねえねえ、齋藤君ってさ、一組に入ってきた女の子と一緒に登校してきたみたいんだんだけど、アレって齋藤君の彼女?」

「え、あれは彼女じゃなくていとこだよ。僕の家に住んでるんだけど、方向音痴だから一緒に通うことになるんだけど」

「良かった。彼女じゃないんだね。でもさ、あんなに可愛い子と一緒に登校するなんて男子にひがまれても仕方ないよ。ウチのクラスだけじゃなくてさ、他のクラスとか上級生も今頃齋藤君の話題で盛り上がってるんじゃないかな」

「そう言うもんなの?」

「思春期の男子なんて見たことがない可愛い子が男の子と一緒に登校してたら嫉妬するもんでしょ。でも、勝手に嫉妬なんてしてないでちゃんとどういう関係か聞けばいいのにね」

「別に隠している事でもないんだけどね。あ、自己紹介の時に言えばよかったかも」

「そうだね、そうしておけばクラスの男子の誤解は解けたかもね。そうそう、名乗り遅れましたが、私は吉川雪です。これからよろしくね」


 僕が吉川さんに話しかけられている間もクラスの男子の一部は僕の事を睨んでいたのだ。そんなに遠くから見つめないで言いたいことがあれば言ってくれればいいのにと思っていたのだけれど、僕からわざわざ言いに行くのもおかしいと思うので今は黙って過ごしておこう。

 それにしても、この吉川さんという女子はやたらと話しかけてくるな。いやではないのだけれど、家族や親せき以外でこんなにたくさん話したのはずいぶんと久しぶりなような気がしていた。


 そして、入学式の最中も僕は吉川さんと色々な話をしていた。

 僕はなるべく目立たっていじめられないようにしたかったのだが、放課後になって陽香が僕のクラスにやってきたことによってその計画は一日と経たずに破綻してしまったのだった。


 僕に話しかける陽香を見てクラスの男子たちが僕に向けていた視線に殺気が含まれるようになったような気がするのだけれど、僕はそれに気付かないふりをして教室を出ていった。


「齋藤君、また明日ね」

「ああ、吉川さんまた明日ね」


 僕が吉川さんに挨拶をした後から陽香も僕に足して冷たくなったような気がするのだけれど、それは気のせいではないんだろうな。何故か陽香は僕が吉川さんの事を話そうとするとそれを遮って別の話題を振ってきていた。

 クラスの男子は僕の話に割り込んできたりしなかったのにと思ってしまった。僕たちはそのまま吉川さんの話題に触れずに帰宅したのだけれど、寝る前になって陽香が僕の部屋を訪ねてきて吉川さんについて色々と質問してきたのだ。


「へえ、隣の席だから色々と話をしてただけなんだ。そっか、そっか。昌晃って誰にでも優しくしてそうだからさ、クラスの女子に手を出そうとしたのかと思っちゃったよ」

「そんな事しないけど。でもさ、陽香はクラスの人と仲良くなれそう?」

「どうだろう。でも、悪い人はいないと思うよ。みんないい人そうだなって思ったからね」

「それなら良かった。僕はちょっと誤解されちゃったみたいだからクラスに溶け込むのは時間がかかりそうだよ」

「誤解って、初日に何したのよ?」

「いや、陽香と一緒に登校してるのを見てさ、僕と陽香が付き合ってるって勘違いして男子が嫉妬してるんだってさ。今更いとこなんだよって言っても聞いてもらえるかわかんないんだよね」

「そうなんだ。でもさ、私と本当に付き合ったらどうなるんだろうね。昌晃は殺されちゃたりするのかな?」

「ちょっと、そんな怖い事を言うのはやめて欲しいな」

「じゃあ、明日からも登下校よろしくね。おやすみ」


 僕はなんだか寝付けなかったのだけれど、それはきっと陽香が全部悪いのだと思う。でも、そんな陽香を置いて一人で学校に行くことも出来ないんだし、別に今まで通りに他人は気にしないで行けばいいだけなんだろうなと思いながら眠りについたのだった。

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