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春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる  作者: 釧路太郎
ゴールデンウィーク編前半

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困惑する陽香と嫉妬する真弓

 沙緒莉姉さんの恋人ごっこは家の中でも続いていたのだけれど、キッチンで何か甘いものを作っている陽香と真弓はそれに気が付いていないようだった。僕は何度も沙緒莉姉さんを振り払ってはいるのだけれど、何かの力に引き寄せられているかのように沙緒莉姉さんは僕から離れようとはしなかった。

 僕たちが帰ってきた事に気付いたのは陽香だったのだが、僕の腕に抱き着いている沙緒莉姉さんの姿を見て固まっているようで、陽香の異変に気が付いて後ろを振り返った真弓は持っていたスプーンをその場に落としてしまっていた。


「ちょっと、沙緒莉お姉ちゃんは何でお兄ちゃんに抱き着いているの?」

「なんでって、私と昌晃君が付き合うことになったからだよ」

「そんなの聞いていないよ。お兄ちゃんは沙緒莉お姉ちゃんのじゃなくて真弓のだもん」

「残念ながらもう付き合うって宣言しちゃったからね。真弓が昌晃君の事を好きなのは知ってるけど、子供にはまだ早いって事かな」

「そんな事ないもん。真弓だって大人だもん。体脂肪の多さでは沙緒莉お姉ちゃんに負けるかもしれないけど、真弓だって大人だもん」

「ちょっと、その言い方はお姉ちゃん傷付いちゃうよ。謝った方がいいんじゃないかな」

「確かに、ちょっと言いすぎちゃったかもしれないね。ごめんなさい」

「うん、素直に謝ってくれたから許すよ。って、陽香は固まったままだけど、どうしたの?」

「え、え、え、えええ。二人が付き合うってどういう事?」

「陽香お姉ちゃん。安心していいんだよ。沙緒莉お姉ちゃんはお兄ちゃんと遊びに行った事でちょっと増長しちゃっているだけなんだよ。沙緒莉お姉ちゃんはああいってるけどさ、お兄ちゃんを見て見なよ。お兄ちゃんは本気で沙緒莉お姉ちゃんを離そうとしているから。それでもさ、沙緒莉お姉ちゃんは一緒に買い物に行ってくれたお兄ちゃんが自分の事を好きだからついて来てくれたって勘違いしてるんだよ。お兄ちゃんの目的は行った事のない本屋であって、沙緒莉お姉ちゃんと一緒に行くことじゃないんだよ。でもね、沙緒莉お姉ちゃんはそれに気が付いていなかったんだ。今でもその現実が受け止められなくて、無理やりお兄ちゃんに抱き着いて既成事実を作ろうとしているんじゃないかな。でも、お兄ちゃんってそう言うのに引っかかる感じじゃないし、沙緒莉お姉ちゃんが篭絡できるような人でもないんだよ。だからね、陽香お姉ちゃんは沙緒莉お姉ちゃんのつまらない嘘を本気で受け取らなくてもいいんだよ」

「え、昌晃とお姉ちゃんは付き合ってないって事?」

「そうだよ。仮に付き合ったとして、私達の前であんなにベタベタするのはおかしいでしょ。沙緒莉お姉ちゃんの性格からして、自分に自信のない時ほど積極的になるって知ってるよね?」

「そう言えば、お姉ちゃんってそんなタイプだったかも。それに、ちゃんと見てみたら、昌晃が凄く嫌そうにしているよ」

「そうなんだよ。陽香お姉ちゃんは沙緒莉お姉ちゃんに完全に惑わされる前に気が付いてよかったよ。でも、問題は沙緒莉お姉ちゃんがどうしてこんなことをしているのかって事なんだよね。たぶんなんだけど、恋人同士って事を演じないといけない理由が出来たんじゃないかな。例えば、沙緒莉お姉ちゃんに付きまとうストーカーのような人がいたとして、そのストーカーを欺くために演技で付き合ってるふりをしているとかね」

「待って。そんな浅はかな事をしたとして、相手が逆上して昌晃が襲われたら大変じゃない」

「多分なんだけど、それは大丈夫なんじゃないかな。だって、その人は直接襲ってくることは無いんだと思うよ」

「どうしてそう思うの?」

「なぜなら、そのストーカーが誰かわかったのか目星がついたのが今日外出してからって事だからね」

「外出してからって、どうしてそう思うの?」

「もしもね、そんな人がいるんだってわかったら二人だけで行かないと思うし、家を出ていくときも全く警戒していなかったからね」

「そう言えばそうね。二階から二人が見えなくなるまで見てたけど、腕を組むとかしてなかったもんね」

「そう考えると、恋人ごっこが始まったのは家を出てからしばらく経ってからだと思うの。たぶん、本屋から帰って家につくまでの間くらいから恋人ごっこが始まったんだと思うよ」

「それってどうしてそう思うの?」

「どうしてって、さっき生クリームを買いに行った時に沙緒莉お姉ちゃんの大学のゼミ仲間って人に聞いたからだよ。沙緒莉お姉ちゃんの事を好きな人が何だか気持ち悪い行動を起こしそうだから気を付けるように伝えたいんだけど、沙緒莉お姉ちゃんはどれくらいで帰ってくるのかって気にしてたからね」

「ちょっと待って。なんでその人が真弓がお姉ちゃんの妹だって知ってたのよ?」

「私もそれがなんでなんだろうって気になってたんだけど、そのストーカーの人が沙緒莉お姉ちゃんの帰りを付けたことがあって家を把握してたんだって。その家から出てきた女の子だから妹か親戚なんだろうって思って声をかけたって事だったよ」

「じゃあ、私が買い物に行ってたとしたら私に話しかけてきてたって事なのかな?」

「そうじゃないかな。ちょっと話した感じだけど、沙緒莉お姉ちゃんい兄妹がいるかどうかってのまでは知らなかったみたいだしね」

「でも、それって真弓の想像で、本当に二人が付き合ったってことは無いよね?」

「うん、僕と沙緒莉姉さんが付き合うことは無いよ。そのストーカーが何かして来たら守ることはあると思うけど、付き合うのは無いかな」

「良かった。めっちゃ焦っちゃったよ。変な汗かいちゃったかも」


 陽香は安心して全身の力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。座りながらも持っていたボウルの中身をぶちまけなかったのはさすがだと思った。

 真弓も思っていることを言っていたようなのだが、それに関して自信はあったのだが確信とまではいかなかったようで、その表情からは安堵した様子がうかがえた。

 沙緒莉姉さんは、真弓の話を聞いてちょっと泣きそうな顔になっているのは可哀想だと思った。でも、それと同時に僕の手を思いっ切りつかむのはやめて欲しいと思った。


「ホント焦ったよ。お姉ちゃんと昌晃が付き合うのは別に構わないんだけど、二人が別れたら絶対気まずいって思ったから嫌だったな。私はお姉ちゃんの味方になると思うけど、お姉ちゃんが原因で別れるようなことになったら味方になれるか不安だったもん」

「ちょっと、二人とも私に対して少し辛辣過ぎないかな。もっと可愛いリアクションをしてくれてもいいと思うんだけど」

「そんなことするわけないじゃん。ホントにびっくりしたんだからね。驚きと安心感で腰に力が入らないよ」


 陽香はボウルを真弓に渡して立ち上がろうとしているのだけれど、体に力が入らないというのは本当のようで、テーブルを掴んで立とうとしているのに立つことが出来ないようだ。

 見かねた僕が手を差し伸べると、陽香は僕の手をぎゅっと掴んでようやく立ち上がることが出来た。転んだりしないか心配になって見守っていたのだが、僕の手を掴んでいる陽香は体勢的に首元から見える胸が無防備にも丸見えになっていた。ただ、僕はそこから視線を外すことが出来なかったのだ。

 なぜなら、右を見ると沙緒莉姉さんの顔が近くて、左を見るといつまでも抱き着いている沙緒莉姉さんに嫉妬した真弓の顔があるのだ。どちらを向いても気まずい状況である。


「ありがとう。本気で驚いてから安心するとさ、力って入らなくなるもんなんだね」

「そんな経験はしたことないからわからないけど、今は平気かな?」

「うん、少し椅子に座って休んだら大丈夫だと思うよ」

「そう言えばさ、今日の晩御飯って何を作る予定なのかな。デザートのケーキはわかるんだけど、晩御飯って何かな?」

「え、晩御飯はイチゴのケーキだよ?」

「え、ケーキ?」

「うん。私と真弓でケーキを作ってみたいなって思ってね」

「そうなんだよ。陽香お姉ちゃんと一緒にケーキを作ってみたかったんだ。きっとおいしいから期待しててね」

「陽香の作るお菓子っておいしいから期待して待ってようね。それまで、昌晃君は私と一緒にお風呂に入っていようか」


 真弓は僕の体から沙緒莉姉さんを引き離すと、僕と沙緒莉姉さんの間に割って入っていた。僕は真弓に守ってもらっているような気分になってしまった。


「そういう冗談は本当に面白くないからやめてよね。お姉ちゃんのケーキにだけイチゴの代わりにニンニクでものせるよ。それでもいいなら続けてね」


 イチゴの代わりにニンニクをのせるという事がどれだけの抑止になるのかわからないが、真弓の言葉を聞いて沙緒莉姉さんは本気で嫌がっているようだった。

 ただ、僕も晩御飯がケーキだという事を聞いて少し震えてしまっていたのも事実である。

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