ロシア大戦争5
ロシア大戦争5
ドイツ総統府と国防省の議論はいかにしてロシアを押さえ込むかで紛糾した。
そもそも、東欧地域の部隊だけではロシアを抑えることはできないのである。
さらに、早くしないと、ポーランドドイツ国境線にロシアがたどり着いてしまい、国内での戦争になってしまうと研究所は警告していたし、国防省でもその可能性が高いと判断していた。
ポーランドにいる1個師団と、ポーランド国境を守る1個師団しか対ロシアの壁はないのである。
ポーランド軍の総力を合わせてもロシアの軍団を止められないというのが結論であった。
さらには、ウクライナ防衛をどうするかという議論もあった。
ウクライナには第25師団17000人が配備されていたが、既にクリミア半島にいたウクライナ軍は壊滅的でキエフ近郊も攻撃を受け始めていた。
ドイツ政府は決断を迫られた。
ドイツ軍の戦力を各防衛線に送らなければポーランド、ウクライナは陥落し、ドイツ東部が危険にさらされるのだ。
しかし、ドイツにそれをすぐに捻出できるだけの戦力は足りていなかった。
ドイツ政府はウクライナには援軍は送らず、現地部隊とウクライナ軍によってなんとか防衛するとともに、トルコ政府に援軍を要請することにした。
そして、問題はドイツに向かって進撃してきているロシア欧州軍25万である。
すぐに戦力として数えられるのはリトアニア軍1万2000人、ポーランド軍10万人、ドイツのポーランド駐屯陸軍1万2000人、ドイツ東方軍団4万人である。
はっきりいって、これではロシア軍は止められないというのが参謀本部の見解であった。
ロシアに対抗するにはライン戦線でアメリカやフランスと向き合っている精鋭戦車、歩兵部隊を抜きとりたいというのがドイツ国防軍の要請であった。
しかし、フランス軍が突然ライン川を渡ってくる可能性を考えると、なかなか簡単には抜き取れなかった。
そして、ドイツはこの少ない時間を浪費してしまった。
午前7時半過ぎにはロシア軍の部隊がポーランドとリトアニア国境を突破し、ワルシャワ、ビリニュスに迫った。
ドイツ軍のポーランド駐屯部隊は抵抗していたが、ポーランド軍が早々崩壊を始めたことで守り抜くことが難しくなっていた。
ドイツ政府はアメリカと緊急の会談を行うことに決めた。
ドイツ時間午前10時
ベルリンとワシントンの間では双方の駆け引きが行われていた。
アメリカとしてもドイツがロシアに負けると困るのだ。
しかし、在欧米軍の撤退は受け入れられなかった。
ドイツが攻撃してくるかもしれないし、そもそもドイツがロシアに負けたとして、その勝っているロシアにフランスが勝てるはずもない。
ドイツが負ければ英国を除く、欧州全土がロシアにしまうことは明らかであった。
そうなると、米国に利益ではない。
既にアメリカには日本が戦時体制を整え、予備役招集、国内の空師団の充足を開始し、樺太では遅滞戦術とともに、北海道の部隊の到着を待って、激しい戦車戦が始まり始めていた。
日本政府は同盟国の満州に後方支援として武器弾薬の大量輸送を開始したし、日本空軍の複数の部隊が満州に投入していた。
日本空軍の部隊は北の空に大量派遣され、樺太と北海道北部、オホーツク海、日本海で激しい空対空戦闘を繰り広げていた。
さらには、陸軍の即応部隊と在イタリア駐留の日本軍1個師団相当がイタリアにある日本資本の安全確保のためにアルプス防衛と、仏伊国境の警戒を始め、スペインも軍の動員を開始していた。
仮に、ドイツが抜かれればベネルクス三国、弱いフランスは撃破され、アメリカではなく極東の国家を頼るイタリア、スペインとかつての覇権を違う形で取り戻そうとするイギリス、危機感が強い北欧が連携して、アメリカのいない欧州ができてしまう。
それどころか、潜在的な敵である日本の欧州における影響力を増やしてしまうと考えていたのだ。
ただし、アメリカ国内ではアメリカ軍の欧州派遣は第一次、第二次世界大戦、1960年代の戦争を経て軍隊の海外派遣に消極的であった。
アメリカは自らの利益を守る必要に迫られた。
そして、ドイツは国家的な危機に迫られた。
両国の思惑はある程度合致していた。
そこで明暗を分けたのはドイツは自国が危機であり、アメリカはあくまで同盟国の危機である。
最終的には午前11時10分にドイツがある程度妥協して、両国が合意した。
アメリカは在欧米軍を絶対にドイツを攻撃しない約束と、戦後の在欧米軍の縮小を約束して、ドイツはそれを取り付けたことで、ライン川の国際化と、欧州の団結を約束した。
アメリカが、ドイツを攻め込まないと約束したことでドイツ国防軍は、一気に動いた。
ライン川を守る11万人のドイツ軍は一気に東に動き、アルプス防衛、国内警備の部隊合わせて9万も東に転進した。
国内はSSと、警察機構、予備役のみになった。
しかし、この決断は戦後欧州において、ドイツを含めた欧州連合の設立を促すとともに、ドイツの国土と国民を守る結果となる。




