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死の勇者TS陰子は異世界帰還者である  作者: ぎあまん


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 それが誰か真っ先に気付いた者は誰もいなかった。

 つまり、剛も顔は知らなかったわけか。


「おや、新しいお仲間かの?」


 皆が微妙な顔をする中でエロ爺が尋ねる。


「紹介してくれんか?」

「玩具職人のルーサー・テンダロスだ」

「どうもう! お嬢様の下僕になったルーサー・テンダロスです!」


 Lのテンションが高い。

 霧に二人そろってWピースかまされた後だというのによくそんな元気でいられるもんだと呆れる。


「ル、ルーサー……」


 その名前を聞いて、剛の顔が思い切り引きつった。

 ガイルの仲間だった彼女のことを知っていたのだろう。

 そんな剛の不安をLはすぐに察したようだ。


「ああ、君がゴー君だね。大丈夫だよ。もう君への追手はないんじゃないかな?」

「へ?」

「君もメデリ・カルテルのボスと会ったことはないでしょ? ガイルも君のことは自分の手札のつもりで大事にしてたからね。もう君の顔を知っている連中はいないはずだから探しようもないってこと」

「は、はぁ……」

「さて、食事ついでに君が持っている例の物のスペックを説明するとしましょうか?」


 そんなわけで、食事の時間だ。

 一人増えることはすでに伝えていたから料理の数は問題ない。

 さすがに十一人が一度に座れるテーブルは用意できていないから、俺と霧とL、エロ爺、剛とアーロンがテーブルに付き、護衛連中はソファで食べる。

 鷹島は後で結構と俺たちの給仕をするそうだ。

 料理は和食である。松花堂弁当的な物。

 美味いけど、足りない。

 後でレストランに食べに行こう。


「さて、みなさん。ゴー君が持っている物をなんと聞いているのかな?」

「異世界の技術で作った核を超える兵器……だね」


 Lの問いにアーロンが答えた。


「ふむふむ! アバウトだね!」


 詳細を知られていないことにLはご満悦のようだ。

 説明したくてたまらないのかもしれない。


「で、あれは何なんだ?」


 俺は先に促しつつ、焼き魚と一緒に俵御結びを口に放り込んだ。美味い。


「一言で言えば爆弾!」

「なんのひねりもないなぁ」

「そりゃね。破壊力命が依頼だったから。ああ、でも安全性にも気を付けているよ。スイッチを押さない限り誤爆誘爆一切なしを保証する。さて、で、実際の破壊力と破壊に至る反応の説明を始めようか」


 いきいきとLが語りだす。

 だが省略!

 だいたんカット!

 長すぎる!

 簡単に言えばこの兵器の名前は「ムスペルヘイム」北欧神話で灼熱の国の名前だ。

で、兵器の理屈としては地球と異世界の間を渡るときに発生しているはずのエネルギーを現実化させた物だそうだ。

 不思議パワーでドッカン! それでよし! だな。


「ゴー君が持ってるのは核兵器の換算で9000キロトン。アメリカが昔開発したB53相当だね」


 ちなみに広島に落ちたリトルボーイが15キロトンだ。B53が開発されたのがロシアとの冷戦時代。破壊力の成長ぶりに眩暈がするね。


「と、このままだと破壊力は時代遅れだよね。で、も!」


 とLが勿体付けて刺身を食べる。箸を振り上げるな醤油が散る。


「実はこれ、一回こっきりの消耗品ではないのだ!」

「連続使用ができるのか!」


 驚いたのはアーロンだ。

 なら爆弾じゃなくて射出機なんじゃなかろうか?

 それともグレネードとグレネードランチャーの関係?

 ツッコむと長くなりそうだから何も言わない。そんなことより足りないので早く外に食べに行きたい。

 ああ、鷹島。自分の弁当を渡そうとするんじゃない。ていうかもう食べちゃいなさい。


「さすがに耐久試験はできてないから何回撃てるかわからないけど、ダンジョン内でのテストだと三回連続使用は可能だったよ。冷却時間は三分。インスタントラーメンを作りながら撃てるね!」

「ダンジョンみたいな閉鎖空間で良くやれるな」


 計算間違えたらそのまま死ぬぞ。

 それに破壊エネルギーにダンジョンを形成する空間そのものが耐え切れずに外に影響を及ぼすことも考えられるんだが。


「まっ、そこは色々とやりようがね。それにダンジョンが崩壊するときは内部の全てのエネルギーが虚無化するって結論は出てるし。知らないかな? 実はもう某大国がダンジョンに核兵器放り込んだことがあるんだよね」

「マヂか」

「うん。それに使った核兵器の破壊力はボクのムスペルヘイムより上だからね。それを分かった上で威力調整してるから」

「威力調整? つまり、それは威力を上げることも可能だと?」

「うん? できるよ。とりあえず二倍まで。その代わり冷却時間が増えたりするけどね」

「それ一つで核兵器幾つ分の価値があるのやら。眩暈がしてきますね」

「まっ、弱点もあるけどね。一番は射程距離かな。消耗品じゃないから大陸間弾道ミサイルにくっつけるわけにはいかないからね。高速戦闘機に装備させて飛びぬけ様に射出が理想だね」

「竜の巣に隠れてそうな物件でも作るか?」

「あれは速度がネックだよねぇ。大量のガーディアンを用意してもレーザーみたいなの使われたら防ぐも避けるも無理ゲー」


 俺の冗談にLが真面目に考え出す。


「俺としてはいつか巨大宇宙戦艦を作りたいんだが」

「君はどこに行く気なんだい?」

「マイホーム」


 どこかに行くとかじゃない。

 宇宙を行く家が欲しいだけだ。

 メタリックな涙滴型戦艦ってロマンだよな。船体のあらゆるところから射出される曲がるレーザーとか。


「壮大だなぁ」


 呆れるLの近くでエロ爺の目がギラリと光った。

 いや、いくら爺さんの財力でも宇宙戦艦は無理だろう。

 ……無理だよな?


「まぁ、ともかくそんな感じだね」

「僕、そんなの持ってるのか」


 と剛の顔色が青を超えて白くなっている。


「戦術核を運んだこともあるんだろ? もっとドンと構えてろよ」

「アレがあったから抜けようって思ったんだよ!」


 剛の涙目の反論は納得のいくものがあった。


「そうかそうか。まっ、広いところに付いたら俺が引き取ってやるよ」

「日本でもらってくれたらよかったのに」

「しゃあない。忙しかったんだから」


 そんな感じでLの紹介は終わった。

 食事も終わった。

 本当なら他に話し合うこともあったそうだが、それは夕食の席でということになってしまった。

 そして、俺は部屋を出たその足でレストランを求めて移動する。

 Lは自分の部屋を取っているのでそちらに。霧も読書の続きをしたいということで別行動になった。

 和食は食べたから別のにしようとメニューを眺めるとアメリカンな感じのハンバーガーがあった。とにかくデカい。そして山盛りのポテト。

 いまの俺にとって量は正義だ。

 とりあえずそれとチーズで溺れそうなカルボナーラと特大コーラを頼む。ハンバーガーはパテで塔ができるくらいに大きくてそのまま食べるには不向きだ。その代わりパンズが余計に付いていてマスタードとかを加えながら自分でハンバーガーを作って塔を崩していく。みんなで楽しく食べる用のメニューだったのかもしれない。

 一人で食べるけどな。

 チーズたっぷりカルボナーラは冷めたら大変なことになりそうなのでこちらから先に片づけつつ、ポテトを摘まみ、コーラを飲む。

 そいつはカルボナーラを食べ切り、パテ何枚までなら一口でいけるかを考えているときにやって来た。


「少しよろしいかな? お嬢さん」

「ナンパなら他でどうぞ」

「いや、ナンパじゃない。商談をしたいんだ」

「商談?」


 見上げるとそこには白人男性が立っていた。軍人みたいな短髪の男性だが程よい垂れ目と無精髭の甘いマスク。ハリウッドスターとかできそうなイケメンだ。


「そう、取引でもいい。僕は……」

「おっと、まだ座っていいとは言ってないが?」


 極厚ハンバーグみたいなパテ二枚をパンズで挟んで挑戦。おお、顎が外れそう。でも、これぞアメリカンって感じの肉感。しかも肉が上質。美味い。

 でも、ソースはもっと増やした方がいいな。


「僕は君の祖父、封月昭三の知人だ」

「なら、祖父に直接どうぞ」


 あっ、普通にスライスチーズを入れるのもいいけど、さっきのカルボナーラのソースを入れてみるのもありかも。


「日本には将を射んとする者はまず馬を射よという諺があるじゃないか」

「乗られる気はないんで。いや、マジほんと、食事の邪魔するのやめてくれないかな?」

「むっ」

「殺すぞ」


 腹が減ってるから気が立ってるんだよ。ブーメランパンツ男でブーメランに挑戦よりひどいことするぞ?


「……では、食事が終わるまで待たせてもらおう」


 男は折れず、隣のテーブルに座った。




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