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死の勇者TS陰子は異世界帰還者である  作者: ぎあまん


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「なにをしたの?」


 学食でカツ丼とカツカレーを頼んでテーブルに付いた俺を霧が睨む。

 ちなみに彼女はうどんのみだった。それで足りるのか?


「いや、ちょっと調べたくて」

「なにか悪いことをしようとした」

「それは絶対にない」

「ほんとうに?」

「ほんとうに」


 力強く頷くと、霧は納得してくれたのか重いため息を吐いた。

 納得……したんだよな?


「わかった。でも、二度とああいうことはしないで。わたし、ああいう悪戯って好きじゃない」

「それは俺も好きじゃないから。悪かった。その代わり、いい知らせを聞かせられると思うよ」

「そうだといいけど」


 棘のあるため息を吐いてうどんを啜った。


「それで、なにを調べていたの?」

「その前に前提。俺にはレベルもクラスもない」

「え?」

「俺の異世界と霧の異世界とは違う。だけど、根底にある要素は同じ。それはこの世界で俺や他の異世界帰還者たちが力を使えていることの理由と同じ要素だ。つまり、異世界で出来たことは地球でもできる。そうでなければそもそも俺たちが元のままな理由が付かない」

「ええ……そうね」

「だけど、俺にはレベルもクラスもない。それは、その二つの要素はあんたたち用に神が調整したシステムのようなものだからで、本来はそんなものがなくても教育と鍛錬で手に入れることができる」

「つまり……封月さんは……どういうこと?」


 霧が悩んでいる間にカツカレーから食べていく。カレールーが冷めるのは嫌だ。


「そっちは俺を賢者だったか? っていうのだって言ったけど、俺は賢者じゃない。たぶんだけど、そんなくくりよりもたくさんの魔法が使えるし、物理攻撃もいける。占いはできないがね」

「そ、そうなの?」

「ああ」

「……ええと、それで、どうしてそれを私に?」

「ああ、それは……」

「なに?」

「あんたのこと、どう呼ぼう?」

「え?」

「さっきは勢いで名前呼びしたけど、なんて呼ばれるのがいい? 瑞原? 霧? おまえ? あんた? そなた?」

「どうして、そなたが候補に入るのよ。はぁ……霧でいいわ。その代わり、私もあなたのことを織羽って呼ぶわよ?」

「じゃ、そういうことで」

「それで、織羽はどうやってそれを知ったの?」

「【鑑定】の魔法だ。逆に霧たちはどうやって相手の能力を測っていたんだ?」

「【鑑定】は使える人が限られていたけど同系統のクラスなら相手の能力をある程度は知ることができたの。クラスとレベルだけだけど」

「ふうん? だけどそれなら賢者は魔法系っぽいから柴門アヤは見れたんじゃないのか?」


 そこから疑問を……ああそうか。


「よその異世界帰還者はわからないのか?」

「ええ。そういうこと」

「なるほどな」

「ねぇ、それで、いい知らせっていうのは?」

「そうだった。一応聞くけど、霧はどれだけレベルアップしても戦う能力は手に入らないんだよな?」

「ええ。身体能力もそんなに上がらないし……スキルも戦闘に関われるものは手に入らない」


 おっと、今度はスキルと来たか。今度また調べてみるかな。


「そのシステムに従っている限りはその成長なんだろうが……だけど普通の鍛錬をしたらだめっていうわけでもないだろ?」

「それは……」

「霧のクラス、占い師を詳しく調べてみたら俺の異世界流に言う白魔法の分野が強く関わっていた」

「それで?」

「だから、物は試しだが俺がその白魔法を教えて使えるようになるかやってみないか?」

「…………」


 俺の提案に霧は言葉もなく驚いている。

 その間に俺はカツカレーを食べ終え、カツ丼に移る。


「……その、白魔法というのはどういうことができるの?」

「さっきも言った【鑑定】とか回復魔法、神との交信とか。初級は地味だが、世界記憶に深く関わる魔法だから極めれば極めるほどエグイことになる」

「そう……」


 また考え込み始めた。

 しかたないのでカツ丼も片づけ始める。

 どうでもいいが著者が高校の頃の学食のカツ丼は薄いハムカツだった。大学のカツ丼はちゃんとしたカツ丼だったが、後半には四切れあったトンカツが三切れになった。

 妙に寂しい思い出もあるが著者はカツ丼が大好きだ。だからデブ……いやそれはまぁいい。


「それをどうして私に言うの? 強くなる提案なら公英くんやアヤさんに言った方が手っ取り早いんじゃないの?」

「ん~戦闘ってのは瞬間的なパターンの連続だからな。俺のやり方をいきなり押し付けるとそれが崩れることになりかねないし」


 システムに沿った戦い方がすでに体に染みこんでいる状態で、もっと自由に色々習得できるぜという態案はすでに修得しているものさえも壊しかねない危険性がある……と思う。

 そういう意味では霧は戦闘要員ではないからほぼ白紙の状態で教えることができる。しかも、戦力の数が増えることになる。

 いいこと尽くめ……だと思うが、霧がそれをどう考えるかはまた別の話。


「ちょっと考えさせて」

「どうぞどうぞ。……それより」

「え?」

「うどん、伸びないか?」

「…………あなたが変な話をするからじゃない」


 霧は少し恨みがまし気にのびかけのうどんを啜る。

 その間に俺はおかわりを頼みに行った。


「まだ食べるの!?」

「こっちはこっちで大変なんだよ。ステータス的な意味で」

「?」

「たくさん食べて成長しないとな」


 よくわからないという顔をする霧を放っておいて、生姜焼き定食を片付けに掛かった。






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[一言] 小説の話の中に、しれっと作者リアルの話混ぜるのやめない?
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