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死の勇者TS陰子は異世界帰還者である  作者: ぎあまん


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178 Bの世界線 03


 ヨーロッパ・アラブ連合はダンジョン・フローによる混乱から救った英雄イングに心酔し、彼を盟主とすることで連合を結成するに至った。

 連合という名だが、実際にはイングによる王国だ。

 このまま時間が経てば、そういう風に名前が変わってしまうことだろう。

 イングの肉体に宿るカリスマは魔性のそれだ。魔法的影響にいまだ無防備に近いこちらの世界の住人では耐えられる者はほとんどいないだろう。

 いまはヨーロッパ・アラブ連合に対抗するなんて吠えているアメリカ側にしたって、生のイングを見てしまえばその瞬間に膝を折る可能性もある。


 だが残念ながら、その未来はない。

 もとよりイングは俺に喧嘩を売るために師匠たちがスペクターを利用して動かしている。

 王国ができてヨーロッパとアラブに長の平和がなんてそれこそ夢幻でしかない。


 そしてそれをはっきりとヨーロッパ・アラブ連合の人々に教えて差し上げるため、俺はこいつは投入した。


 宇宙戦艦ノイギーア。

 玉座艦であり、王国唯一の領地。


 良い名前がないかと色んな言語を漁った結果、ドイツ語の「好奇心」という意味のこいつに決まった。

 当初、めんどくさくて「俺様号」と名付けたらフェブリヤーナに心底馬鹿にされた目で見られたのは別に内緒でもなんでもない。


 俺の宇宙船の好みは○クセリオンだったり○リュンヒルトだったりする。

 いわば無駄な装飾の少ない流線形だ。

 だが今回、敵は俺の戦艦の腹を見て戦うことになる。

 ならばそこに飾りを付けないわけにはいかない。

 というわけで美人な天女の像を付けておこう。羽衣纏ったセクシー天女。最初は四対の翼を付けた大天使とか思っていたが、さすがにそれは芸がないかと羽衣の天女にしておいた。

 その代わり後光的なエフェクトも忘れない。


 後は眼鏡を付ければ完璧。


 ん?


 いや、眼鏡はいらんだろう。

 なぜ眼鏡?


 うーん?


 不思議だ。深く考えているとアヘ顔ダブルピースで敗北している俺の姿が浮かぶ。


 なんぞこれ?


 大気圏外でノイギーアの作業を行いつつ、首を傾げる。

 瀬戸内海から出航したノイギーアはそのまま上昇を続けて大気圏を脱出した。

 なにげに初めての大気圏脱出だったのだがすんなりとうまくいった。

 宇宙での活動も問題ない。

 この宇宙戦艦ノイギーアの開発に協力したルーサーもあの世で鼻を高くしていることだろう。


 ルーサー・テンダロス。

 面白い魔導技師がいるというので俺の玩具づくりに協力させようと探していたのだが、その時の彼女はお隣の半島にいた。

 将軍様の下で核を超える兵器の製作に着手していた彼女を引っさらおうN国に潜入した。

 別に正義感ではなく面白半分嫌がらせ半分でその兵器も盗んでやろうと思っていたのだが、運の悪いことに俺が来たときにクーデターが勃発。

 将軍様も異世界帰還者だったのだが、どうも本領を発揮できない状況だったらしい。

 直接会っていないため【鑑定】ができていないので詳細は知らない。

 クーデターは終始将軍様の不利のまま一気に勝負が付いた。

 だが、将軍様もただでは負けない。

 ギリギリで完成していた例の兵器のスイッチを押した。


 細かい描写は省くが、とにかくすさまじい爆発が起きた。

 あらゆるものが一瞬で蒸発する中、俺はルーサーを確保して半島を脱出する以外にできることはなかった。

 あの時は日本に押し寄せる大津波に対処するのにひどく苦労した。


 ともあれルーサーを確保することには成功した。

 出会った時にはマッドサイエンティストな雰囲気のあった彼女だが、半島の半ばが地面ごと消し飛んでしまった光景には性格強制が起こるほどの衝撃があったらしい。

 ノイギーア開発中はひどく大人しかった。


 そして、完成を前に殺された。

 半島の一件でルーサーに恨みを抱いた者は多い。

 そういう連中からの情報を遮断するように俺もエロ爺……織羽の祖父、昭三も尽力していたのだが、見つかった。

 どうもルーサー自身が情報を流してしまったようだ。

 それではどうしようもない。


 ルーサーがノイギーアの完成までその時を待てなかったのは暗殺者の都合なのか、それとももう何一つ完成させる気にはなれなかったからなのか。

 罪の意識からなのか。

 それともあの兵器で満足してしまったからなのか。


 俺はフェブリヤーナの一族を根絶やしにした。

 だが、そのことを苦にしたことはない。

 フェブリヤーナもそのことで俺を責めない。

 この関係と俺の精神性が異常で、ルーサーのそれが正常なのか、それはわからない。

 ともあれルーサーはそんな形で自身の人生に決着をつけ、彼女が最期に残した未完の作品はちょっときつめな美人の天女を装備してイングのいるヨーロッパに向けて降下を開始した。


 出迎えは近代兵器が主だった。

 地対空ミサイルがこれでもかと放たれる。


 が、俺の天女様がそんな無粋な攻撃は許さない。

 エフェクトのように放たれていた後光が輝きを増し、方向性を得て解き放たれる。

 みんな大好きホーミングレーザーと化してミサイルは全て撃墜した。


 大量の爆発の花が咲いた時には地上で歓声が湧いたようだが、爆炎が去った後に無事なノイギーアの姿を見て絶望の声を上げた。

 なんてお約束な。


 さてさて、一応は宣言をしておこうか。


「あ~テステス……やぁやぁこんにちはヨーロッパ・アラブ連合のみなさん。お望みの封月織羽の登場だ。派手な出迎えに感謝するが、宣戦布告はそちらがしてきたということはお忘れなく。これは侵略行為ではない。繰り返す、これは侵略行為ではない。宣戦布告を受けた上での防衛行為である。当方に侵略、破壊、略奪の意思はなく、これから起こるかもしれない戦闘による破壊の結果は全て、貴国からの攻撃による防衛行為の結果であると明言する!」


 ちょっと一息。


「繰り返す、これはあくまでも我が方の防衛行為である。攻撃者、侵略者、略奪者は貴国である。我々は防衛者、被害者、奪還者である。以上。では存分にヨーロッパ・アラブ連合の総合火力を楽しみたまえ!」


 俺の言葉は耳に届いたヨーロッパ・アラブ連合の全兵士・全国民の得意とする言語に自動で変換される。

 誰一人として俺の言葉を誤解した者はいないだろう。


 さて、では……イングがやってくるまで遊ぶとしよう。

 どれだけすごい花火大会が続くかな?





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[一言] いの一番に出迎えてくれそうな女神がいないと思ったら 欠損はそこかー
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