転生特典 「魔導書」
目の前に広がる、隕石が落ちた後のような巨大クレーター。
それを見るだけでも頭が痛いのだが、それを作ったのが自分だということがさらに頭が痛い。
これを見ていると、つくづく家の周りでやらなくてよかったと思う。
俺やアリシアが考案する魔法はどれも威力が高すぎて、下手に建物の周りで使えないのだ。
そのことも、密会場所に開けた野原を採用している理由だったりする。
閑話休題
それで、俺に魔法を見せろとせがんだアリシアの方はというと……
「~~~…………!!」
すごく目をキラキラさせていた。
単純に魔法の規模や精度が高かったからだろうが、それにしても眩しい瞳で俺を見てくる。
5歳の女の子が目を輝かせることがこれなのはどうなんだと思うが、魔法大好きなアリシアなら仕方がない。
それからは魔法を教えたり教えられたりしながら、アリシアと過ごした。
その最中、嬉々として魔法を使うアリシアを眺めながら俺はあることを思い浮かべる。
『世界を救って欲しいのです』
それは女神エルフィンが俺に頼んできたことだ。
原因不明の世界滅亡。それを止めるために俺は転生させられたのだ。
(といっても、原因がわからないとどうしようもないよな……)
そして、対策を練ろうとするといつもこの結論に至るのだ。
理由が分からない以上むやみに動けないので、今は待つしかない。魔法の鍛錬をしているのは、いざという時に後れを取らないためなのだ。
ちなみに、魔法はなんでも対応できるほど万能ではない。
魔法は起動させるのに手間がかかるし、そもそも魔法を使うのに必要な魔力というものがとても危険な代物なのだ。
言うなれば魔力というのは火薬のようなもので、これを活性化させて魔法を起動するのだ。
実際、魔力の制御をしくじって暴発した例もごまんとある。酷いものだと半身が吹き飛んだ例もあるのだとか。
この他にも魔法にはいくらか制約がついている。
それでも俺が頑なに魔法を鍛錬し続けているのは、前世からの憧憬に加えてあることが原因だった。
女神エルフィンが言っていた『能力の付与』だ。
転生特典と言い直してもいい。
その転生特典に俺は『あらゆる魔法を使いこなせること』を要求した。
したのだが……
(使い方が分からないんだよな)
内心でぼやきながら、その能力について整理する。
まず、女神から転生特典として受け取ったのは『魔導書』という能力だ。なぜ名前がわかるのかと言われるても、上手く説明ができない。根拠はないがなんとなくわかると答えるしかないのだ。
それで、本題の内容についてなのだが……それが一切分からない。
能力があるのは分かるのに、使い方がさっぱりわからないときた。
(エルフィンも説明くらいしてくれればよかったのにな……)
と、悪態をついても使えない事実は変わらない。そして、魔法を自在に使えることを夢想してした俺の願望は打ち砕かれたのだ。
それがあまりにも悔しかったので、俺は地道に魔法を極めようとしている。5歳の子供が、ほぼ毎日魔法の鍛錬に明け暮れているのはそういうしょうもない理由なのだ。
(仕方ない……か……)
ため息をつきながら思考を打ち切る。
もう賽は投げられたのだ。俺はなんとかして世界が滅びるのを防がなければならない。
それこそ、チートスキルがなくてもどんな敵も倒せるようにならなければ。
転生する前--前世だったら、絶対にこんなことは考えなかっただろう。俺は自分で思っている以上に現実主義だからな。
だが……
「?……どうしたの、レヴィ」
「何が?」
「私をじっと見てたから」
「ああ……なんでもない」
怪訝そうにこちらを見つめるアリシアを見ながら、改めて世界を救う決意をする。
家族やアリシアといるためにも、なんとかしないといけない。
そう考えてから、魔法の鍛錬に戻るのだった。
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