第十四話 闇に潜む影にアンダーライン(後編)
綾坂中学校の学校林にはこれで、馬場、奥山、それに連れられた村松の三人。それから、その背後で彼らの後を追う、薫に有川、それから周囲の物音に人一倍敏感になっている芦沢が入ってきたことになる。
しかし、彼らが進むその先の闇には、彼らを待ち受けている二人の影があった。全ての計画を発案した山下、それから堂野の二人である。
二人は少しずつ山道を登ってくる馬場と奥山のライトの光を眺めながら、そこよりさらに道を登った小さな広場の茂みにいた。
周りには木々がなく、古ぼけた公衆トイレといくつかのベンチが見えるそんな場所だ。公園とは違うが、一種の簡易的な休憩場である。
毎年、夏と冬に生徒たちによる一斉清掃があり、そのときにこの辺りも伸びた枝や群生する雑草も取り除かれるのだが、今は残念なことにかなり荒んだ状態だ。
草は伸び放題、木々の枝は野放図に垂れ下っている。
そんな邪魔な枝を払いのけながら、山下はうれしそうな声を出す。
「おい、見ろよ。ようやくお出ましだ。あの村松を呼び出してきたらしいぞ。馬場と、奥山って言ったっけ? うまくやってくれたみたいだ」
「ああ、そうみたいだな。山下、いったいどんな嘘で呼び出せって指示したんだ? 俺はそれが不安だったけど」
馬場をこの作戦のために呼び出し、大雑把な説明をしたのは堂野だったのだが、実はその後、入れ替わりで山下が出向き、直接村松を呼び出すための具体的な内容について彼に説明したらしい。
そのため、堂野はその「具体的な内容」について聞かされずに、今ここにいる。彼が危惧しているのはその点だったのだ。
「なあに、聞いたらおったまげて、いてもたってもいられなくなるような、とんでもない内容の嘘さ」
山下は自信満々に鼻の頭を擦る。
「現に、村松の奴、きちんとこっちに来てるし、まあ、問題はなかったってことだな」
「……確かに、まあいいか。ともかく、今はこれからのことに集中すべきだな」
「そういうこと」
この二人、山下が考案した嘘で、紗江が冷や汗を掻いていたことを知らない。
「CDプレーヤーの準備はいいか? 目標はC地点を越えた。確認するが、B地点で馬場と奥山はその場を離脱する手筈になってるんだな?」
茂みの中でペンライトを点け、ごそごそとカバンをあさりながら、堂野が山下にそう囁いた。
「ああ、そうするように言ってある。それより、セロハンを貼り付けたライトはどこだ? それがないと、演出効果が半減するぞ」
「リュックのポケットに三本入ってる。山下の方に入ってたはずだぞ。衣装の方もそろそろ被ったほうがいい。台詞は覚えてるのか?」
「いや、それはこっちのラジカセのテープにあらかじめ吹き込んである」
堂野は彼の如才無さに小さく口笛を吹いた。
「準備がいいな、やまし……」
「山下にしては、は余計だ」
そう注意して彼は頭から白っぽく装飾された何かを被る。
山道を登ってどのくらい歩いただろうか。薫たちは、前を歩く三人の後方、五十メートル付近にいた。
明かりがない分、慎重に足場を確認しながら彼らを追跡するため、悪戦苦闘しながらの道のりだ。
しかも、薫は芦沢に腕を掴まれ、その上、足元で何かを踏んづけた音がするたびに小さく悲鳴を上げる彼女の対処に困っていた。道を歩くのでやっとなのに、である。
「ひゃあ! な、何か、足に触った」
またしても、彼女の小さな悲鳴。
「ただの草だって。そんなに驚かなくても。それにもう少し静かにしてもらわないと、村松先生たちに気づかれるって」
「だ、だって。絶対ここ、何かいるって」
そう細い声で訴えてくる芦沢は、普段の気の強い彼女とは違う、か弱い少女の声だった。それに心なしか小刻みに震えているようだ。
「大丈夫だって、何もいないから。もう少し俺の真後ろを歩いたほうがいいよ」
「う、うん」
いつになく素直な様子で彼女は言われた通り、薫の後ろにつく。
それを前に歩く有川が見つめている。ふふんと鼻をならした。
「おびえてる女の子には優しいのね、小野村君」
「それはまるで俺がいつも優しくないみたいだな」
むっとして薫は返す。
「ああ、ごめん。そんな風に聞こえちゃった?」
「これでも俺も男だからね。こんな時に何も出来ないようじゃ、不甲斐ないよ」
薫はここぞとばかりに胸を張る。普段、小さいだのなんだのと周りから抑圧されている分、彼の男としてのプライドが今だ、と顔を出しているのだろう。
「なるほど、おびえた芦沢さんに男らしいところを見せていると。これは君恵に話しておかなければいけないわね」
「え、な!」
突然、君恵の名前が出てきて薫はたじろぐ。
「君恵……それって須藤君恵さんのことよね。なんで彼女が出てくるの?」
これには怖がっていたはずの芦沢も興味を示してきた。
「聞くな、芦沢さん」
「それはねえ、小野村君が……」
「言うな、有川さん」
「ふふふ、焦ってる焦ってる」
ストレス発散でもしているつもりなのか、有川は堪え切れないように笑う。
「そんなことより、先に進まないと見失うから。ほら、早く」
薫は話を終わらせ、そう急かしながら足早に前方の明かりを追いかけた。まるで逃げるような態度をとってしまったことは男としてはマイナスだろうか。
薫が少し不安に思った、その時。
前方の明かりが消失した。
「あれ、どうしたんだろ?」
「明かりが消えた?」
次いで、暗闇の中から村松が誰かを呼ぶ声が響いてきた。どうやら、馬場と奥山を呼んでいるようだ。
「ど、どうしたのかしら、ま、まさか、ユーレイ、とか」
背後から芦沢さんの震えた声が聞こえる。
「落ち着いて、芦沢さん。そうとは思えないって。多分、馬場君と奥山さんがいきなり身を隠したんだよ」
実は、明かりが消える寸前、その明かりが道の脇に逸れていくのを薫は見ていたのだ。
「でも、だとしたら、どうしてそんなことを?」
これには有川が答える。
「それは分からないけど。おそらく、こんな場所に村松先生を呼び出したのはやっぱり何か、企みがあったってことよ。こうなると事の顛末を見届けるまでは帰れないわ」
「確か、あの辺りって、休憩所があったよね」
薫は以前、この場所に来たときの風景を思い出しながら言った。
「そうなの? よく覚えてないけど」
しかし、薫はよく記憶していた。村松の位置が大方分かれば、自分たちがいる場所も同時に分かった。
暗闇に慣れ始めた目で、近くにわき道を見つける。
「こっちだ。この道を行けば、ちょうど休憩所の反対側に廻りこめる」
「本当? よく知ってるわね」
「たまたま覚えていたに過ぎないよ。それより、早く行かないと何が起こってるのか分からないって」
「ちょっと待ってよ」
薫と有川が進みだした道を少し遅れて、芦沢が恐る恐る足を踏み入れる。
薫は足早に草の生い茂った細い山道を進みながら、あることを思い出していた。
それは、村松が自分に明らかに目を付けていると知りながら、堂野が妙に落ち着いていたあの電話での会話である。
その時は、堂野が真面目に薫の話を聞いてくれていないのだと、腹が立ったものだが、冷静に考えればこう考えることも出来た。
つまり、その事態を最初から堂野が知っていたかもしれないという可能性だ。
そう仮定すれば、彼の行動がここ数日おかしかったのも頷ける。
村松をここに呼び出し、薫から目を背けさせるための何らかの作戦を講じる準備をしていたとすれば、辻褄も合う。
そして、それを今日まで黙っていたのか。
薫は走りながらぎゅっと拳を握り締める。転ばないように慎重に足場を探りながらも、強く地面を蹴り、村松がいる小さな広場へと急いだ。
もう後ろに二人がついてきているかなどと考えなかった。
物音がすることも気にしなかった。
これから何が起こるのかを見届けたかったのだ。
広場まで、あと数メートルというところまで来たとき、前方の闇でなにやら青白い光が突如、灯った。その怪しげな光に照らされて何かが立っているのが分かる。
そして、その僅か後方に村松の姿を確認する。
それから間髪入れず、彼のものと思しき悲鳴が聞こえた。「うわあ」だったように思うが、大人にしてはみっともない声だったのは確かだ。
何が起こっているのかは分からないが、ともかく作戦が実行されているらしい。
薫は残りの数メートルを大股で駆け抜け、一息つく間もなく、近くのベンチの影に隠れる。
そして、その横から顔をのぞかせ、様子を窺った。
ようやく、青い明かりの中に立っているものの正体が見える。
「あっ!」
そう叫びかけて慌てて口を押さえる薫。
彼がそんな反応をしてしまったのも無理もない。
そこにいたのは、体中に包帯を巻いていると思しき女性だった。その女性がうつろな表情で村松を凝視しているのだ。異様な光景に薫は目を瞠る。
すると、どこからか、聞いたことのあるようなおどろおどろしさを誘う音が聞こえてきた。細い笛の音と、太鼓の「ドロドロ」という音、いかにも幽霊が登場するときの効果音である。
「なんだ、お前は!」
対峙している村松がそう叫んだが、見ると、腰が引けていた。隙あらば、すぐにでも逃げ帰ってしまいそうな雰囲気である。
薫は目を凝らして、その女性が立っている背後の茂みを見た。つい、今しがた何かが動いたような気がしたのである。
堂野だ。瞬時に悟る。
茂みに隠れてもあの高い身長は見間違いようがない。
ということはやはり、目の前に立っている女性は山下が変装しているのだろう。
薫たちの教室から、文化祭で使うおばけに変装する道具が、彼らによって盗み出されていたのを思い出したのだ。
「お前が村松か」
すると、身体に白い包帯を巻いた女性が低い声を出した。生気を感じさせない青白い唇が動く。
「小野村薫を知っているな」
「な、なんだ、奴がどうした?」
「最近、あの子を付けねらっているとか」
「な、何の話だ? お、お前に関係があるのか?」
青白い光に村松は照らされているが、きっと普通の明かりで照らされても、彼の顔は青白いことだろう。
再び、低い声でその女性が言う。
「あの子はただの人の子に非ず。我が霊力が宿りし、異能を持つ者であるぞ。お前が手出しをするべき存在ではない」
「ひいっ!」
「よいか、命惜しければ、あの子に近づくことは止めよ。さもなくば、お前だけではない、家族、一族に至るまで全員、呪い殺すぞ!」
その女性の幽霊はそうすごんだ。まるで、村松に覆いかぶさろうとするかのように、両手を大きく広げ、血を吸った後のような真っ赤な口をかっと開いている。
「は、はあああ、分かった。分かったから、頼むから見逃してくれ」
それには村松も緊張の糸が切れたようだった。おびえた声を出し、一歩後ずさったのを合図にしたかのようにきびすを返し、一目散に駆け出した。
情けない悲鳴を上げながら、木にぶつかろうとも気にせず、元来た道を走っていく。
そして、その声も遠のいた頃合いを見計らったように、包帯を巻いた幽霊が身体を揺すって笑い始めた。
「ハハハ、上手くいった。傑作だな」
それは、聞き覚えのある山下の快活な笑い声だった。
それから、数分後。
「なるほどね。そういう事情があったわけだ」
腕組しながら山道を下りていく有川は腕組みをして頷いている。
その前でライトを照らしているのが、山下。そして有川の背後には、堂野、それから薫、芦沢、奥山、馬場と続いている。全員が一列となって堂野の話に耳を傾けていた。
彼によってこの一連の珍事の種明かしが行われた後だった。山下のイタズラから始まり、今日までの出来事を順を追って説明した。
「すると、やっぱり俺が電話をしたときには、亮介は村松先生のことは知ってたんだ」
薫が訊いた。
「まあな。あのときには既に山下と準備を始めてたから。その事情を須藤さんには話したんだ」
それで彼女が電話の後、微笑んでいた理由が分かった。
「まあ、私にそんな大事なことを話しておかなかったことはさておき、それにしても、幽霊に変装して村松先生を驚かすなんて安っぽいアイデア、よく上手くいくなんて思ったわね」
有川が鼻で笑うように言った。
だが、堂野はそれに冷静な口調で返す。
「確かに単純だけれども、驚かすっていうのは一番効果があると思ったんだ。得体の知れないものからの恐怖の感情っていうのは強い衝撃があるし。簡単に忘れられるものじゃない」
「そうだそうだ。村松の奴、あれだけ驚いてたんだ。おそらく、小野村が卒業するまでは呪われると思って枕を高くして眠れないだろうな。かわいそうに」
山下は俯いてくっくと笑う。そうすると彼が被っている包帯女の頭が揺れた。
「いつまでそんなものを被ってるのよ。ちょっと見せてみなさい」
有川がそう言って、彼の頭から掴み取る。それは薄いビニールか何かで作られているらしく、彼女が持つとクシャリと音がした。
「こ、こんなちゃちな変装だったの? よく先生が気がつかなかったわね」
「まあ、暗かったからね。細部までは見れなかったんだろうな。それも計算に入れて、照明も青いライトで照らしたんだ」
これは堂野が説明する。手に持っていたライトになにやら青いビニールを被せ、照らして見せた。
「ほら、こんな風に」
「それから、雰囲気も出るようにお化けの登場に使うCDも用意した」
「それは、私が貸した効果音の入ったCDでしょ。すぐ返すっていったのに、待っててもその気配がないし。そのせいでこんな場所までくるはめになったんだからね。山下君には責任とってもらうわ」
人が大勢いるので安心しているのか、芦沢はいつもの調子に戻ったようだ。軽い口調の山下に噛み付く。
「結局こうして、あなた達に関わることになるなんて。計算外だわ」
「まあ、これで、村松と後腐れなく終われそうだからいいじゃないか」
「ちっともよくない!」
「うおっ、おっかねえ」
山下はその怒声に首を引っ込める。
「……それで、馬場君に奥山さんは大丈夫だったの?」
有川が一番後ろを歩く二人に振り返って聞いた。
「ええ、なんとかな……」
「全然問題ありませんでした!」
先につぶやいた奥山の声を遮って馬場が元気一杯の声を出す。ライトの光で彼がそれっぽく敬礼しているのが分かる。
それを見て、奥山が持っていたライトで背中を小突く。
「何言ってるの、問題ありまくりでしょうが」
「……まあ、無事でなによりだわ」
そこで堂野が口を開いた。
「二人には感謝してる。馬場君と奥山さんがいなければ村松先生をここへ呼び出す口実を俺たち二人じゃ作れなかったからね。ばれたら危険な役だったけど、上手くやってくれて本当にありがとう」
丁寧に感謝の意を示す。
「いいえ、どうってことありません。我ら演劇部の危機を救ってくれた小野村先輩を助けるためなら、お茶の子さいさいですよ」
彼はなぜか両腕をぶんぶんと振り回している。
「だけど、まさか小野村たちがここに来るなんて予想外だったよなあ」
山下は思い出したようにしみじみと言う。
「ああ、それにはびっくりした。村松が行ったあと、ベンチから誰かがやってきたと思ったら薫だったもんな」
堂野が頷いた。しかし、この言葉に対し、なぜか力なく返事をする薫。
「……うん」
「本当なら薫には何も知られずに、俺たちだけで全てを終わらせるつもりだったのに、計算が狂ったといえばその点だよな」
「……」
これには無言だ。
「どうした、浮かない顔で」
堂野が言って、薫は思いつめたように立ち止まる。それによって、その背後の列も立ち止まざるを得なかった。
「どうして……」
「え?」
「どうして、こんな大事なこと、俺に話さなかった?」
そう言って歯を食いしばる。
確かに、村松を自分から遠ざけてくれたことに、薫は感謝をしていた。だが、そんな一大事から自分が疎外されている気がしてならなかったのだ。それが薫には解せない。
少しの沈黙の後、堂野が口を開く。
「それは、俺も何度か考えた。やっぱりお前に話すべきかどうか、でも……」
「……」
「でも、お前は今回の主役だ」
「主役?」
薫は顔を上げて、彼を見上げた。
「ああ、劇に慣れてなからおうが、須藤さんの代役だろうが関係ない。薫は今回の劇の主役だ。だからこそ、お前にはそのことだけを考えていて欲しかった」
彼はそこで言葉を切る。
「そして、そのお膳立てをするのは周りにいる俺たちだ。邪魔する奴が来れば、追い返すし、演技で悩んでるなら聞いてやる。後ろから支えてやる」
「……亮介」
「お前はヒーローなんだよ」
彼はそう高らかに言い放って薫の肩に手を置いた。それに呼応するように皆が頷く。
「そうだぞ」
「そうよ」
「そうです」
「そうッス」
皆、満面の笑みだった。
「そ、そうだと思うわ」
少し遅れて、空気を読んだ芦沢が言う。
「だから、まっすぐ前を向け。俯くな」
その力強い声援は薫の中に奥深く突き刺さった。そして、まるでそこから暖かなエネルギーが染み出してくるように、薫の中に浸透し、返事をしたように心臓がドクリと脈打った。それが分かった。
目の前の暗いもやもやが晴れていくようだ。
ただ、純粋にうれしかった。
「分かったよ。みんなありがとう」
そうだ、自分に今出来ることは精一杯、文化祭の劇で役を演じきること。それだ。
薫は深くお辞儀をする。
「でも、一ついいかな?」
「何?」
「激励してもらったのは嬉しいけど、みんなから言われると、プレッシャーが半端じゃないんだよ。その辺りの配慮はしてもらえないんですかね?」
薫はこめかみを人差し指で掻いた。
それを聞いて全員が笑った。
「確かに、ね」
「かなり芝居がかってたよな」
「ハッハ、確かに。今のはかなりみんな期待がこもってたよな。俺がこれだけがんばったのに、重圧で劇に出るまえに倒れたら洒落にならないもんな」
最後に山下が言い、腰に手を当て豪快に笑う。しかし、皆、なぜかそれを見て、冷たい視線になった。
その嫌な空気に気がついたのか、中途半端に山下の笑い声が止まった。
「な、なんだよ。皆」
「俺がこれだけがんばったですって?」
有川の言葉には憎しみがたっぷりこもっている。
「そ、それが?」
「元をただせば、あんたが村松先生にいらないちょっかいだそうと考えたからでしょうが。どの面さげてそんなこと言ってるの?」
山下の表情がみるみる凍りつき、視線が宙を泳ぐ。
その場の全員が彼を取り囲むように並び、じりじりと間を狭めた。一様に皆、半眼で睨んでいる。
「え、え、え」
「確かに、有川さんの言うとおりだ」
「皆、落ち着け、話せば分かる」
彼は両手でストップをかけていた。
「山下!」
そこに芦沢さんのしびれるような声が響く。
「土下座、百回!」
「ど、どうか、ご勘弁を〜〜」
村松に続き、夜の森に消えていったのは山下の情けない声だった。