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ブラックラック
全力で師匠のもとに駆け寄る弟子。
「ししし師匠たたたたすけ」
震える声で師匠を見上げるが、絶句。
師匠の背後には、人の背もあろうかというするどい歯が並んでいた。赤い眼光がこちらを見下ろす
「ン?エサガフエタナ」
師匠と抱き合いながら震える弟子。大きく広げた口が二人に迫る。
「弟子!危ない!!」
師匠が弟子を両手で突き飛ばす。
「し、師匠!!」
身体が宙に飛ばされる。ああ師匠は僕のために命を張ってくれた。無理やりこの世界に連れてこられたときはどうしようかと。あれ。視界が真っ暗だ。
パクっと軽い音を立て、弟子は飲み込まれた。
「あっ」
師匠には無自覚の能力があった。ブラックラック。あらゆる不幸が彼女を襲う。だが不幸は彼女を殺さない。訪れた不幸は周りの人間も巻きこむ。