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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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ドワーフの少女エル正式加入

 エルがフィオに貸すために持ってきた本『ブリッツスプアー』を読みながら、アカネとフィオの帰りを待っていた。ブリッツスプアーは勇者ソールの冒険を綴った物語だが、ソールは大昔に実在していてミカも会ったことがあるらしい。物語の主軸は勇者ソールが悪者を次々に打ち倒していく勧善懲悪ストーリーであり、強大な巨人や怪物をそれを上回る圧倒的な力で粉砕する英雄譚だ。隅々まで読む時間もないので、掻い摘んで読んでみたが物語としては主人公が強すぎて緊張感は無いな。実際の出来事がベースになっているようなので仕方がないか。

 ユグドラシルの話や、ヴォーダンとソールに武器を作ったドワーフの話は存在するが、北欧神話の有名なトリックスターであるロキは出てこないみたいだ。ソールに焦点を当てた物語として編纂されているようなので、ロキに関する話は省かれているのかもしれないな。


 私が本を読んでいる間に、エルはミカからアトランティスの話を聞いていたようだ。

「ねえミカ。アトランティスはどの辺にあるの?」

「ニザヴェリルからだとずっと西だな。海に出てから7000㎞くらいかな。」

「結構遠いんだね。海底にはミカのバリアで潜れるって話だったけど、アトランティスの海上までは船が必要かな?」

「マキのラーベに乗れば半日もあれば着くと思うぞ。」

「ラーベってなに?」

「そういえばエルはまだ会っていなかったか。ユグドラシルの種から呼び出すことができる、カラスの事だぞ。ユグドラシルの分身みたいなものだな。」

「マキはユグドラシルからいろいろ貰っているんだね。」

「ユグドラシルの試練を2つクリアしたからな。ちなみにアカネとフィオは成長限界を突破する果物を貰っていたぞ。」

「物語の中でソールも貰っていた奴だね。ユグドラシルって気前がいいんだね。」

「気に入った相手にはな。気に入らない奴には結構厳しいぞ。」

「なんだか思っていたのとちょっと違う感じだけど、早く会ってみたいな。」


 20分ほどのんびりしていると、アカネとフィオが朝の修行から帰って来た。

「ただいまでござるー。」

「ただいま。」

「おかえりー。」

「おかえり2人とも。朝食の準備はできているからさっそく食べよう。」


「シリアルにヨーグルトを掛けて蜂蜜、レモン汁、おろしリンゴで好みの味付けにしてね。」

「了解でござるよ。」

(一同)「いただきます。」

「ヘルシーな朝食でござるな。」

「私とマキも手伝ったけど、エルの特製だぞ。私が前にこの国に来た時にはなかった料理だな。」

「割と新しい料理なのだな。」

「健康ブームで女性に流行った料理だけど、簡単に食べられるから男性にも人気だよ。」

「健康食とはいっても美味しいでござるね。」


「ところでこの後の予定を確認していいかな?」

「まずはギルドに行ってエルの冒険者登録と、アルゴノーツへの加入手続きかな?」

「そうだな。その後は昨日話した通り、追加で受けるクエストの確認をしよう。」

「アカネの忍具製作に必要な材料集めが、並行してできるクエストがあるといいね。」

「私はアルゴノーツの口座を確認したら、資金繰りについて計画を立てるね。とりあえずはアカネの忍具製作費用である200万クローネ確保するのが目標だね。」

「少しは実入りのいいクエストも受けた方がいいでござるかね?」

「受けたいクエストを受けたらいいと思うよ。生活資金として追加で少しは持っておきたいけど、アルゴノーツは現状そこまでお金は必要ないし。」

「それならまた、受けたいクエストをそれぞれ見繕ってからブリーフィングしよう。」

「それがいいな。私は1つクエストを受注済みだから今回は新規のクエスト受注は見送るぞ。」

「追加で受注するクエストに緊急性の高いものが無ければ、予定通りそのままミカが受けていたクエストへ向かおう。霊山での精霊との力比べだったな。」

「まあその辺の話は新規クエストを確認してから決めようか。」

 シリアルとフルーツを食べきり、余ったヨーグルトもデザート代わりに食べて完食した。

(一同)「ごちそうさまでした。」


 全員で食卓を片づけて、出かける準備をする。ギルドから直接クエストへ向かう予定なので、武器や携行バッグも装備してフル装備の状態だ。とはいっても、武器を使うのはアカネだけだから、みんな軽装だけど。

「そういえば昼食はどうしようか?」

「霊山に行くなら果物や動物が豊富な山だから、現地調達できるぞ。」

「その辺の話もとりあえずギルドでブリーフィングを済ませてからだな。」

「おっけー。」

 ホームに鍵をかけギルドへと向かう。


 ギルドに到着すると、クエストへと向かう冒険者や、打ち合わせをしている冒険者達で賑わっていた。まずはエルの冒険者登録とアルゴノーツ加入の手続きを行うために受付へと向かう。受付は相変わらずすいていたので、すぐにフラウと話をすることができた。

「おはようございます。フラウさん。」

「おはようエルちゃん。登録手続きに来たのよね?来るのは分かっていたから準備しておいたわ。」

 そう言うとフラウは冒険者ギルドカードをエルに差し出した。

「ありがとうございます。」

 エルは受け取ったギルドカードを感慨深そうに確認する。

「アルゴノーツに加入する事になったから、その手続きもお願いします。」

「あら?まだ正式には決まっていなかったのね?エルちゃんはアルゴノーツに入るものだと思っていたから、冒険者登録と一緒に加入手続きもしておいたわよ。」

「気が早いよフラウさん。でもありがとう。」

「冒険者としてはこれからが本当のスタートだから頑張ってね。」

「うん、頑張る。」

「アルゴノーツのみんな、エルちゃんをよろしくね。」

「はい、こちらこそお世話になります。それじゃあ失礼しますね。」

「はい行ってらっしゃい。」

 フラウに別れを告げて、受付脇の情報端末へと向かう。


 先日と同様に情報端末本体から子機をそれぞれ借りていき、空いているテーブルへと座った。

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