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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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最強の勇者の伝説

 ドワーフの少女エルの前世はドイツ人のマッドサイエンティスト、キーカ・シュミットだった。しかしエルは知識だけ受け継いで、性格などはキーカとは異なるらしい。巨大ロボット製造の夢もキーカから受け継いだものだが、その目的は単純にロボットアニメへの憧れからであった。


「次は私の力、ソールの力について話すね。」

「エルが身に着けている腕輪、神器ドラウプニルと言っていたが、それは北欧神話の主神オーディンが持っていたという、あのドラウプニルなのか?」

「その話をする前にまず私の北欧神話に関する知識についてなんだけど、私はアニメに出てきた北欧神話の設定を知っている程度だから、本筋とか大元の神話の設定はよく知らないよ。」

「そうなのか?ドイツといえば北欧神話の本場のように思っていたが・・・。そうか、キーカが興味ないものは覚えていないんだったか。」

「そうだね。ただ私はキーカと違って神話とか伝説も大好きだから、ドワーフに伝わっている物語なら知っているよ。こっちの世界の物語だね。」

「あっちの世界の北欧神話みたいなものがあるの?」

「私は北欧神話を詳しくは知らないけど、グングニル・ミョルニル・ドラウプニルとか有名な武器ならアニメにもよく登場するから知っているよ。そのくらいの大雑把な知識と比べても北欧神話と近い部分がある物語なんじゃないかな?ドワーフに伝わっている勇者ソールの伝説、タイトルは『ブリッツスプアー』って言うんだけど、その中にドラウプニルとか神器のお話も出てくるよ。」

「伝説とは言ってもミカが知っている実在した人の話みたいだし、創作ではないんだよね?」

「うん、実際ドラウプニルは私が持っているし、ミョルニルもニザヴェリルに有るし、グングニルは行方知れずだけど製造方法は3種とも伝わっているよ。神器は大体ドワーフが作った物だからね。」

「3つも同じ名前の物が出てくるなら偶然じゃなさそうだね。」

「伝説の武器とか神器ってかっこいいよね。巨大ロボットの夢とは別に、そういった武器の蒐集や製造もやりたいんだ。なんだかんだで鍛冶も楽しいからね。」

 魔法が使えない私でも、伝説の武器とかを使えば少しは戦えるかな?現状私が戦う必要性は感じていないけど。


「エル殿はその物語のソールの力を使っているのでござるか?末裔か何かなのでござるか?」

「ソールはドワーフじゃなかったみたいだし、直接の先祖ってわけじゃないはずだよ。ドワーフには稀にソールの力が発現する人が産まれるんだけど、力を持ったこどもは決まって落雷を伴う嵐の日に産まれるみたい。どうしてドワーフにソールの力が受け継がれたのかは、わからないけどね。」

「嵐の日に産まれると力が発現するのか、それとも力を持ったこどもが嵐を呼んでいるのか・・・何れにせよ雷と関係があるようだな。」

「そうでござるな。エル殿がゴーレムと戦った時も雷を纏っていたでござる。」

「北欧神話で雷といえば雷神のトールを思い浮かべるが、ソール・・・トールのドイツ語読みか?」

「たぶんそうなのかな?ブリッツスプアーでの勇者ソールは雷を操る力を持っていて、ドワーフが作ったミョルニルで悪者を粉砕する最強の戦士として登場するよ。」

「ミョルニルを使う事も一致しているし、やはりトールに相当する存在のようだな。北欧神話では雷神として登場しているが、ドワーフの物語では人の戦士なのか。」

「結構長い物語だし細かい話は省くけど、本が有るから読みたいなら貸してあげるよ。」

「本が有るのか。それなら貸してもらおう。」

「私も読みたいなー。ニザヴェリルの文化として図書館に記録したいしー。」

「おっけー。明日工房に戻ったら持ってくるよ。」


「それでソールの力というものは具体的にどんな力なのでござる?」

「見たままなんだけど雷を操る力だよ。雷の力で身体能力とか反応速度を爆発的に上昇させて、最強の戦士ソールの力を再現する事ができるよ。」

「ドラウプニルを使っていたようだが、それは何か力と関係があるのか?」

「ドラウプニルは魔力量を増やすことができる腕輪だよ。私の魔力量だとソールの力は発動できないけど、ドラウプニルで増やせば使えるよ。」

「身体能力を上げるのがソールの力なのでござるか?たしかにすごいスピードとパワーだったでござるが。」

「他にも超回復能力とか物理・魔法の両方に対する雷撃での防御とかもあるよ。それとミョルニルの力を最大限に引き出せるのは、ソールの力を持つ人だけみたい。」

「ミョルニルを使ってこその力という感じでござるか。素手でも強かったでござるが、本気のエル殿も見てみたいでござるな。」

「オリジナルのミョルニルとドラウプニルは職人ギルドに保管されているから使えないんだけど、神器の製造方法は残っているから、材料さえ揃えればほぼ完ぺきなレプリカ作ることができるよ。このドラウプニルはお母さんが私のために作ってくれたものだしね。」

「それならミョルニルも作れるのでござるな。」

「ちょっと素材が特殊だから簡単には作れないけど不可能ではないよ。ミョルニルが必要な事なんて、今の平和な時代にはないと思うけど、機会が有れば作ってみたいね。」

「簡単には作れないのでござるか。本気のエル殿と手合わせしてみたかったのでござるが、ちょっと残念でござるな―。」

 アカネとエルはどっちが強いんだろう?ドラウプニル無しだとソールの力が使えないみたいだし、道具無しの素手ならアカネが勝つだろうけど、雷を纏ったエルは強そうだったな。


「エルは何かやりたい事がある?私たちは世界旅行をするっていうざっくりした目的はあるけど、目標らしき目標はないんだけど。」

「お風呂でも話したけど、当面はアトランティスに行くのが私の目標だよ。」

「それなら次の目的地はアトランティスかな?ニザヴェリルの後でどこに行くかも決まっていなかったし。」

「いいでござるな海底都市。ところでアトランティスにはどうやって行くのでござるか?潜水艦が必要なのでござるよね?」

「潜水艦って言うのはよくわからないけど、私のバリアを使えば深海に素潜りする事もできるぞ。」

「ユグドラシルのところで使ったバリアか。あれはオゾンより上でも問題なかったもんね。エルの計画してた方法とは違うかもしれないけどどうする?」

「別の方法があるならそっちの方がいいかな。潜水艦作りはまだ手付かずだし、アトランティスに行く方法に関して特にこだわっていたわけじゃないよ。私がどうすれば海底に行けるかって考えた結果潜水艦を選んだだけだしね。」

「そっか、それじゃあニザヴェリルでの用事が住んだら、次の目的地はアトランティスだね。」

「滅んでしまった超古代文明か。アトランティスには住人が居るのかミカ?」

「人数はかなり少なかったけど住んでいる奴は居たぞ。」

「ほうほうそれなら超古代の社会がどのようなものだったか、聞く事もできるかもしれんな。滅んでしまったようだが、何があったのか記録が残っているだろうか?」

「前に行ったときは居住区以外はほとんど遺跡だったし、いろいろ残ってるんじゃないかな?私はあまり興味なかったから遺跡には入っていないけどな。」

「オリハルコンの精錬法と超古代文明のテクノロジーも見つけられるといいな。」

「海底ではどんなものを食べてるのかな?想像できないね。」

「細かいことは行ってみてからのお楽しみだな。知らない文化に触れるのも旅の醍醐味だしな。」

 アトランティスというと科学の世界でも、どこかの海底にあるなんて言われていたな。実際に海底都市が発見されたという話は聞いたことがないが、もしかしたら実在するのかな?


「話は変わるけど、アカネの忍具の素材集めと製作費用を工面する必要があるよね。」

「そうでござるな。アトランティスの前にニザヴェリルでの目的を果たさないといけないでござる。」

「この国の文化をもっと深く知ったり、この辺の遺跡調査とかもやってみたいから、アトランティスに向かうのはもう少し先になるかな?」

「私もアルゴノーツのメンバーになったわけだし、素材集めはもちろんだけど、他のクエストにも参加するよ。街の観光をするなら案内するし、見たいものが有ったら言ってね。」

「現地の知識を持っているエル殿が居てくれれば心強いでござるな。」

「ミカもニザヴェリルには結構詳しいみたいだけど、現地住人の視点から見たこの国の事が分かるかもね。」

「そうだな。私はあまり興味ない物には手を出していないし、知らない事も多いかもな。」

「明日ギルドにエルの冒険者登録のために行くことになるし、追加で受注するクエストを見繕ってしまおう。」

「そうだね。ミカの選んだクエストがまだ残っているけど、このクエストは明日にでも挑戦しようか。他に緊急性の高いクエストが有れば話は別だけど。」

「山の精霊は前も言った通り私の知り合いだから、相手をするのは私に任せてくれていいぞ。結構めんどくさい爺さんだからな。」


「ところでアルゴノーツは話からすると共有口座を持っていて、誰も資金の管理をしていないんだよね?」

「うん、みんなあまりお金が必要ない感じだったからね。」

「それなら私がパーティの資金を管理してもいいかな?これからも旅をするならちゃんと管理した方がいいだろうし。」

「私はいいと思うよ。商売人であるエルなら資金繰りもプロだろうしお願いするね。」

 他のメンバーも元々お金にあまり興味がないようなので、特に反対意見はないようだ。

「それじゃあ、明日にでも口座をチェックして、パーティ運営の準備をするね。」

「エルは巨大ロボ製造のためにお金が必要だろうし、そのための資金集めも手伝うよ。私たちは食事と消耗品程度にしかお金が必要ないから、資金の運用はエルに全面的に任せていいかな?アカネの忍具みたいに大きな買い物もたまにはあるかもしれないけど。」

「おっけー任せて。それと私は経理もできるけど技術職が本業だから、武器とか道具とかが傷んだ時は直すこともできるよ。何かあったら言ってね。」

「おお!アルゴノーツに生産職のエル殿が加わって、いよいよ冒険者パーティっぽくなるでござるな。どうせなら最強のパーティを目指すでござるよ。」

「最強かどうかは分からんが、冒険者パーティとして実績は必要かもしれないな。危険な魔物とそうでない魔物の調査は我々が言い出しっぺである以上積極的に参加しなくてはならないし、我々の評価が上がれば多くの冒険者が魔物に関心を持ってくれるだろう。」

「そっか。魔物の区分に関する事はギルドに任せたけど、実地調査はクエストとして発注されるよね。」

「魔物から直接話を聞けるのはおそらくマキ殿とミカ殿だけでござるし、アルゴノーツはできるだけ調査クエストを受けるべきでござろうな。」

「魔物の調査は私たち以外でもできると思うぞ。だから、そこまで気負う必要はないよ。人の側に意識の変化が起きたことは大きな影響があるだろうけど、魔物から見たら今までと変わらないしな。時間のかかる問題だろう。」

 ミカはそれほど積極的に人と魔物の関係に介入する気はないようだけど、私はできる範囲では協力するようにしよう。私は私がやりたいことをやればいいと、ミカも言っていたしね。


 エルの記憶や力について話を聞き、今後の予定も決めたところで夜も更けてきた。

「エルに聞きたいことはだいたい聞けたし、夜も更けてきたからそろそろ寝ようか。」

「そうでござるな。明日も早いでござるしな。」

「考えてみればベッドは4つしかないな。どうするか。」

「私はマキと一緒に寝るから、余ったベッドを使っていいぞ。」

「うん分かった。」

 それぞれのベッドについて眠る準備をする。ミカは昨日と同じく私のお腹に乗っかって眠るようだ。

「それじゃあ、おやすみー。」

「おやすみなさい。」

「おやすみでござる。」

 口々に就寝の挨拶をして、全員一斉に眠りについた。


 エルが仲間に加わり、次の目的地も決まり、いろいろとやることが増えてきた。何もやることが無くて始めた世界旅行だったけど、仲間も目的もできたし旅を始めてよかったな。せっかくだから楽しみながら旅をしよう。

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