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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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エルの記憶 ~ハイパーサイメシア~

 エルが仲間になりたそうにこっちを見ている。仲間にしますか?

 ニア はい イエス

「アルゴノーツに入るのはもちろん歓迎するよエル。」

「やったー。みんなよろしくね。」

「ああ、よろしくな。」

「よろしくでござる―。拙者は最初からこうなるんじゃないかと思っていたでござるよー。」

「うむ改めてよろしくなエル。」

「私はヨツンの方から話を聞いていたから、実はちょっと事情は知っていたんだけどねー。いろいろとよろしくねーエルちゃん。」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

 ドワーフとエルフは技術協力することもあるみたいだし、ヨツンとエルは元から知り合いなのかな?


「ところでエルの夢はどうするんだ?巨大ロボットの製造というのは、旅の片手間にできるような事なのか?」

「それに関してはなんとかなると思うよ。アルゴノーツと出会ったおかげで思わぬ伝手もできたし、職人ギルドの協力も得られそうなんだ。現状ロボットを製造できるような設備はニザヴェリルにもないし、その辺の問題は旅をしながらクリアするつもりだよ。」

「よくわからないけど、既にいろいろ準備してるんだね。ロボット作りには興味あるし、何かできるなら私も手伝うよ。」

「もちろん拙者も手伝うでござるよ。巨大ロボができたら拙者も乗せて欲しいでござる。」

「吾輩は正直ロボに関してはよくわからんのだが、仲間のためなら喜んで手を貸すぞ。何かあれば言ってくれ。」

「面白そうだし私も手伝うぞ。」

「ありがとうみんな。今のところ手伝って貰うことは無いんだけど、いろいろ準備できたらお願いするね。」

 アルゴノーツの新しい仲間、エルを中心に話を弾ませながら夕食を終えた。


「さてと、夕食も済んだしデザートのケーキを食べようか。エルの冒険者試験合格祝いのつもりだったけど、アルゴノーツ加入祝いも追加だな。」

「派手ではないけどかわいらしいケーキだね。」

「このケーキはカカオ生地のスポンジに生クリームをたっぷり付けて、その上に削ったチョコを雪のように散らし、最後にサクランボを飾り付けたものだぞ。ニザヴェリルでは一番標準的なケーキって事になるかな。」

「キルシュトルテだね。スポンジにちょっとお酒を染み込ませてあるから、大人の味って感じのケーキなんだけど、ドワーフはこどもも含めてみんなこのケーキが好きだよ。」

 ミカはケーキの説明をしてから人数分に切り分けてそれぞれに配った。エルの言っていた通り少しお酒の匂いがするな。酒好きのドワーフ達も好みそうな味だ。

「アカネはお酒大丈夫なの?」

「お菓子に含まれる程度のアルコールにまで硬いこと言いっこ無しでござるよ。」

「考えてみれば料理にもお酒を使うよね。そんなところまで禁酒していたら大変か。」

 他愛ない会話をしながらケーキを平らげる。この世界に来てから初めてスイーツを食べたような気がするな。フルーツやジュースは有ったから甘いものに飢えていたわけではないけど、やっぱりスイーツは別腹だよね。これから世界中を旅行するわけだし、旅先ではスイーツ巡りもしたいな。

(一同)「ごちそうさまでした。」


 余すことなく料理を食べつくしたので、食卓の片づけをする。全員で手分けしてテーブルを拭いたり食器を洗うと、あっという間に片づけは終わった。今まで特に気にしていなかったけど、この世界では誰も食べ物を残さないな。私は元々残さない性質だったけど、みんなもそうなのかな?


 片づけを終えて一息付いていると、エルがおもむろに話を始めた。

「食事も終わったし約束通り私の記憶の事と、ゴーレムと戦った時の力について話をするね。」

「そうだったね。フィオみたいにほぼ完全な記憶を持っているわけではないみたいだけど、エルはどのくらい記憶を持っているの?」

「私の記憶はたぶん結構特殊なんだけど、覚えている事は前世での名前と趣味と夢、それと職業に関する知識だけだね。どうして死んだのかとか、家族の事とかは覚えていないよ。」

「へー名前が分かるんだ。私とアカネは前世の名前は分からないんだけど、何か条件でもあるのかな?」

「そうなの?私以外に前世の記憶を持っている人はたぶんニザヴェリルにはいないから、条件とかは分からないかな。私の前世はドイツ人で名前はキーカ・シュミット、職業は工作機械の設計技師だったみたいなんだ。」

「シュミットって言うと今のエル殿と同じ苗字でござるな。偶然でござるか?」

「ドワーフの名前のラストネームに当たる部分は職業を示しているから、苗字って言うわけではないよ。シュミットは鍛冶師とか金属加工を生業にしている人の事だね。」

「そうなのでござるか?それなら偶然一致したわけではないのでござるな。」

「うん。それで前世の趣味って言うのが大体察しは付くと思うけど、日本のアニメとかサブカルチャーに関する事なんだ。特にロボットアニメが好きで、前世の夢って言うのも今と同じく巨大ロボットを実際に作る事だったの。」

「へー。でもそれならなんで工作機械の設計技師になったの?ロボットあんまり関係ない気がするけど。」

「私も最初はロボット工学を学ぼうと思ったけれど、私が作りたいのは産業用でも競技用でも調査用でもない、アニメに出てくるような人が搭乗して戦うかっこいい巨大ロボットだったから、学問的なロボット工学とは方向性が違ったんだよね。それでいろいろ考えて製造設備含めてゼロから作る必要があると思ったから、工作機械業界に入ったんだ。職業柄軍事的な情報にアクセスしやすい立場だったし、巨大ロボット作りのためにいろいろ学べることも多かったよ。」

「本気で作るつもりだったんだね。製造が可能かどうかは置いておいて、エルも言っていたけど巨大ロボットって兵器だよね?あっちの世界で、しかもドイツでそんなもの作ろうとして大丈夫だったの?」

「細かいことは覚えてないんだけど、キーカはロボット製作に必要な技術や資金集めと並行して、いろいろ勝手ができる地位を得るために活動してたみたいなんだ。自分で言うのもなんだけど結構天才だったから、ある程度権力を持った立場にいたみたいだし、うまく隠していたんじゃないかな?」

「なんか秘密結社のボスみたいでかっこいいでござるな。若干危ういでござるけど。」

 一歩間違わなくてもテロリスト扱いされそうだけど、結局キーカが死ぬまでばれなかったって事かな?巨大ロボットを製造した罪で捕まったなんて話は聞いたことないけど。


「それで、記憶が特殊って言うのはどういう意味なの?」

「キーカはいわゆる超記憶の持ち主、ハイパーサイメシアだったんだ。かなり自由に超記憶をコントロールしていたみたいだから、他の超記憶症候群の持ち主とも違うみたいなんだけどね。」

「ハイパーサイメシア?聞いたことあるような無いような・・・見聞きしたものを全部覚えちゃうみたいな奴だっけ?」

「大体そんな感じかな。症例が少なくて実際どういうものなのかよくわかっていないみたいだけどね。」

「特殊能力を持っているなんてますます秘密結社っぽいでござるな。天才科学者ってどちらかというと悪役サイドっぽいでござるけど。」

「いろいろやらかしてたんじゃないかって気もするけど、その辺の事は興味なかったのか覚えていないんだよね。私というかキーカが超記憶で覚えていた内容は、工作機械や一般機械はもちろん、乗り物や軍事兵器も含めたロボット作りに生かせそうな機械設計図と技術関連の知識だよ。設計図は超記憶で細部まですべて覚えているから、ドワーフの精密測定器並の目と高精度な動きが可能な腕を合わせれば、前世で記憶した設計図を正確に書き起こすことができるよ。」

「なんかすごいね。エルが知っている科学技術は丸々こっちの世界に持ち込めるってこと?」

「生産設備とか電気とかの問題があるから、何でも作れるわけじゃないけど概ねその通りかな。兵器に関してはちょっと危ないものも覚えているんだけど、ロボット作りに必要ないものはあえて作る意味もないから書き起こしていないよ。」

「他のドワーフ達はエルの超記憶の事を知っているの?」

「お父さんとお母さんには話してあるし、親方も知ってるみたいだから、たぶんみんな知ってるよ。」

「別に危険だとは思われていないのか。エルにその気がなければ問題なさそうだし、まあいいのかな。」


「話を続けるね。キーカは巨大ロボットの製造には至っていなかったみたいなんだけど、アニメに出てくるような細身で強くてかっこいいロボットを作るには、現存する金属材料では不可能だと設計段階で分かっていたよ。まあ感覚的に無理そうだっていうのは、計算しなくても分かってたんだけど。工作機械の設計には複合的な知識が必要な事もあって材料力学も学んでいたし、制御技術を得るためにロボティクスや電子制御もかじっていたみたいなんだけど、その辺の記憶は曖昧なんだよね。覚える前に死んじゃったのかもね。」

「結構細かいことまで覚えているようで、色んな所が雑だね。」

「たぶんあまり興味ないものは、逆に覚えないようにしてたんだと思う。家族とか仕事仲間の事を覚えていないのはどうかと思うけど、今の私はキーカの記憶を持ってはいるけどまったくの別人って感じだから安心してね。趣味とか夢だけは共有しているし、機械が好きなのも同じだけど私は家族や仲間を大事だと思ってるよ。」

 エルはたしかにかなり特殊な記憶を持っているようだ。前世の記憶はあるけど性格とかは引き継がれていないのか。フィオは性格含めてそのまま生まれ変わったみたいだけど、アカネはその辺どうなんだろう?私は私自身の事だけ覚えていないけど、これも何か理由があるのかな?


「よくわからん話も多かったがエルはエルだし、少し危険な科学者だったキーカとは違うという事だな。」

「うん、そう思ってくれていいよ。私としては前世の記憶はあるけど、自分の体験としての実感はないんだ。キーカがどんな性格の人だったのかもよくわからないし。」

「ふむふむ記憶の事は大体分かったでござる。それでソールの力というのはなんでござる?」

「ソールか・・・大昔にそんな奴が居たな。エルも雷を使っていたしあいつの関係者なのか?」

「ミカはソールを知っているみたいだね。たぶんそのソールで合ってるよ。次は私の力、ソールの力について話すね。」

 エルの記憶の話が終わり、続けてゴーレムを吹き飛ばしたエルの力についての話をするようだ。不老不死のミカが大昔というくらいだから、とんでもなく昔の事なのだろうけど何者なんだろう?

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