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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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アルゴノーツの目的

 お風呂で汚れを落としたので、夕食の準備をする。エルの冒険者登録試験合格と、初クエスト達成の祝いの席なので、いつもより料理が少し豪華だ。


「私は料理を温めなおすから、マキ達は食卓の用意をしておいて。」

「おっけー。」

 ミカはイベント会場で買ってきた料理をキッチンへと運びながら指示を出した。残りの4人でテーブルを拭き、食器を準備する。デザート用のケーキが置いてあるが、食後のデザートだろうし冷蔵庫の方へ避けておこう。

「エルは鍛冶工房に勤めているけど、冒険者になったら辞めちゃうの?」

「鍛冶師を廃業するわけじゃないけど、親方のお店は冒険者になるまで働く約束だったから、辞めることになるね。」

「え?そうなのでござるか?拙者の忍具の依頼はどうなっちゃうでござる?」

「請け負った仕事はちゃんと完遂するから安心して。直接製作依頼を請け負ったのはアカネが初めてだったけど、あのお店では最後の仕事になっちゃうね。」

「レアものでござるな。大事に使うでござるよ。」

「まだ材料集めも終わってないけどね。」

「製作費用もまだ貯まってないから、クエストももっと受けなきゃいけないね。」

「今残っている受注済みクエストは、ミカが選んだ山の精霊との力比べだな。ちなみに現在アルゴノーツの口座にはいくらあるのだ?」

「正確には分からないけど、ゴーレムの捕獲クエスト報酬が入ったから30万クローネくらいかな?そういえば私たちは誰もお金の管理をしてないね。」

「え?それでどうやって今まで旅をしてきたの?」

「私達がパーティを組んだのはつい最近で、ミッドガルドからニザヴェリルに来たのが初めての旅なんだ。私とミカは食事は取らなくても平気だし、アカネとフィオはサバイバル能力が高いから資金面は気にしてなかったね。」

「拙者の忍具の新調が無ければ、積極的にクエストを受ける事もなかったかもしれないでござるな。」

「アカネの忍具の費用とは別に、旅のための資金を少し貯めようとは思っていたけど、まだ具体的には話していなかったね。」

「貨幣を使わないエルフ生活が長かったから、吾輩に資金の管理は無理だな。金銭感覚が世間一般とかなりずれているだろう。」

「私もこの世界の感覚はまだよくわからないよ。」

「自慢じゃないけど拙者も無一文で旅をしていたくらいでござるし、お金の管理には疎いでござるよ。」

 大きな買い物はそうそう必要ないだろうけど、冒険者パーティとしてどうなんだろう?ちゃんとお金の管理をできる人が居た方がいいんじゃないかな。


 食卓の準備が整う頃合いに、ミカが温めなおした料理を運んできた。

「お待たせ。さっそく食事にしようか。」

「おー、おいしそうだね。」

「ちょっと奮発したからね。エルはこの国の住人だから知ってるだろうけど、マキ達のために簡単に料理の説明をしようか?」

「うん、よろしく。」

「まず、メインディッシュはいつも通り肉料理だ。ニザヴェリルはとにかく肉をたくさん食べる文化だからな。味や見た目よりも量と栄養価に重きを置くのが合理主義のドワーフらしいな。今回はお祝い用の料理だから縁起物の超ロングソーセージを選んだぞ。」

 ミカが伸ばして見せたのは3mくらいは有るソーセージだ。大皿に渦巻き状に巻いて盛られている。

「付け合わせはジャガイモとカボチャのソテーだな。この国ではジャガイモ料理もすごく多いぞ。火山地帯なのが関係しているのかもしれないが、詳しいことは知らないな。」

「ドワーフはみんなジャガイモが好きだよ。痩せた土地でもよく育つし、育てるのに手もかからないから昔から好まれていたみたい。短い期間で量もたくさん取れるしね。」

「作物の選定にしても味ではなく手間と収穫量で判断していたんだな。ドワーフの合理主義は、種族としての特性なのかもしれんな。」

「カボチャも結構育てられているけど、同じような理由かな?育てやすいからね。」


「次に主食のパスタだけど、これもお祝い用で蝶のような形のパスタだ。この国は普段飾りっけのある物を食べないから、これは本当にお祝い用だな。チーズベースのクリームソースを和えたシンプルな味付けで、乾燥パセリが振りかけてあるな。付け合わせにスライスした黒パンが付いているが、パスタが濃い味付けだから、パンに乗せて食べるのもおすすめだな。もちろんそのまま食べても美味しいぞ。」

「蝶型のパスタがかわいいね。」

「普段使いの小さな巻貝のようなパスタの方がソースが絡みやすいから、このパスタは合理性よりも見た目の華やかさを取った料理だと言えるな。ドワーフにも一見無駄な装飾に対する理解が、ちゃんとある証拠だな。」

「巨大ロボも実物ができれば、良さが認めて貰えるかもね。まあアニメで知っているだけだから、私達も実物は見たことないんだけどね。」

「拙者も乗ってみたいでござるな巨大ロボ。」

 察してはいたけど、アカネは前世では結構オタク趣味だったようだ。前世での自分の名前とかは覚えていないらしいけど、その辺の事は覚えているんだな。


「この国は肉中心だから魚料理はそんなに食べないけど、祝い事用のドラーデの丸焼きが有ったから買っておいたぞ。内臓を取って腹の中に香草をまぶして、塩を振ってオーブンで丸ごと姿焼きにしたシンプルな料理だな。癖がない淡白な味で美味しいぞ。」

「この街は海が近くにないもんね。魚はどこから仕入れているんだろう?」

「ニザヴェリルの首都というか拠点はこの街だけど、周囲には農業や酪農を専門にした衛星都市が点在しているよ。その衛星都市の中には造船所を中心にした港町があるんだけど、そこで漁業もしているね。需要が少ないからそんなに獲っていないみたいだけど。」

「タイみたいな魚でござるな。この国では川魚は食べないのでござるか?」

「ニジマスとか色々獲れるから釣りが趣味の人は食べるけど、商店に並ぶことはないかな。」

「ドワーフは魚がそれほど好きではないのでござるかね?」

「釣りとか漁は自然に左右されて漁獲量が安定しないから、生産量を管理しやすい牧場がドワーフ好みなのかもね。」

「なるほどでござるな。安定した養殖技術が有れば、魚食文化も流行るかもしれないでござるな。」


「スープはブイヨンベースで、春が旬の白アスパラとジャガイモや玉ねぎ、ベーコンが入っているぞ。白アスパラは洞窟で育てているらしいが、山岳地帯のこの辺の特産品だな。ほとんど地産地消しているみたいだから、洞窟アスパラは国外ではほとんど見ないんじゃないかな?」

「ミッドガルドにもアスパラは有ったが、エルフの育てる野菜はかなり品種がいじられているから見た目は全然違うな。これは野生に近いようだ。」

「和の国にもアスパラはあるけど、大体緑の奴でござるな。白は珍しいでござる。」


「あとは副菜に一昨日も食べた牛ランプのカレー風煮込みと、フライドポテト、玉ねぎとキュウリの入ったポテトサラダ、そして紫キャベツの酢漬けだな。ポテトサラダにはトマトとレタスが添えられているが、これは赤と緑を足す彩りのためだな。もちろん栄養もあるけどね。」

「キャベツの酢漬けは濃い味の料理を食べた後の口直しに食べるものだけど、お酒をたくさん飲むドワーフの男達は酒の肴にもするみたいだね。私はお酒が飲めないからよくわからないけど。」

「拙者達もお酒は飲まないでござるよ。飲めないわけではないでござるが、アルコールは感覚が鈍るでござるからね。忍者は常在戦場でござる。」

「私とミカは毒も薬も効かないから酔わないし、エルフも種族的にほとんど酔わない体質みたいだから、私達は誰もお酒を飲まないんだよね。」

「代わりってわけじゃないけどフルーツジュースを用意したぞ。昨日のクエストで行ったゲッツの農園で作っているジュースだな。せっかくだから件のメロンジュースにしたぞ。」

「忍者のオスカルが我慢できずに手を出したくらいだから、すごくおいしいのかな?」

「オスカルって誰?」

「拙者と同郷で和の国の忍者でござるよ。ちなみにオスカルはアライグマでござる。」

「動物も忍者になるの?アニメみたいだね。」

「エル殿はロボアニメが好きみたいでござるが、他のアニメも見ていたのでござるか?」

「その辺の話は私の前世の記憶の事と一緒に後で話すよ。巨大ロボに乗りたいという私の夢にもかかわる事なんだけどね。」

「了解でござるよー。」


「あまり長々と料理の講釈をしていると、料理が冷めてしまうな。そろそろ食べようか。」

「そうだね。」


 大皿の料理を小皿に取り分けて食事を始める。

(一同)「いただきます。」

「それじゃあ改めて冒険者試験合格おめでとうエル。」

「うん、ありがとう。ところでアルゴノーツのパーティとしての目的って何なの?」

「パーティとしては特に目的があるわけじゃないかな?旅仲間のグループって感じ?」

「そうでござるな。拙者は元々武者修行のために一人旅していたのでござるが、マキ殿とミカ殿に出会って、ミカ殿の強さを学ぶために同行することにしたのでござる。」

「私とミカはランメル鉱山に行く道中で話した通り、世界旅行が目的だね。」

「吾輩もまあ似たようなものだな。世界中の文化を学び共産主義を発展させることが目的ではあるが、旅をする中で自然とできる事だから、そのために何かをするというわけではないな。」

「強いて言えば世界中を旅して回る事が、アルゴノーツのパーティとしての目的って事になるのかな?」

「なるほど。最初からそのつもりだったんだけど、その話を聞いて決心したよ。」

「決心ってどうかしたの?」

「クエストが達成できたらお願いがあるって言ったよね?」

「そんなこと言っていたね。達成後じゃないと意味がないから話せないとかなんとか。」

「クエスト達成後、つまり私が冒険者になれたらって事だったんだけど・・・。」

 エルは深呼吸してから、神妙な面持ちで話を続ける。

「私もアルゴノーツに入れて欲しいんだ。」


 突然の告白に少し驚いたが、エルは友達だし特に断る理由は無いな。エルの夢の事や前世の話の事もあるし、もっと詳しく話を聞いてみよう。

前の話で魚料理を買ってたのに忘れてたから追加

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