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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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エルの夢 前編 ~巨大ロボット~

 イベント会場で食料を買い込み、アルゴノーツのホームへと戻ってきた。ドワーフの少女エルの初クエスト達成、そして冒険者試験合格が内定したので合格の前祝いも兼ねた打ち上げをするためだ。打ち上げだけならイベント会場で行ってもよかったのだが、エルの力の事や前世の記憶の話を聞く約束をしていたし、エルからもお願いがあるという事だったので、静かに話ができるホームへと場所を移したのだ。


 今夜エルは泊まっていく事になったので、ゆっくりと話ができそうだ。

「アルゴノーツのホームへようこそエル。」

「お邪魔しまーす。うわーすごくきれいな部屋だね。」

「そう?汚れてはいないと思うけど、ちょっと散らかってるよ。」

 部屋は特別きれいというほどでもないのだが、エルの部屋が機械や機械部品が山積みになっており、かろうじて寝るスペースはあると言った状態だったので、相対的に見ればきれいと言えるかもしれない。


 クエスト用の装備を外して片づけ、一息つきながら今夜の予定を話すことにする。ミカは買ってきた料理をとりあえず食卓に置いた。

「さてと、いろいろやりたいことはあるけど、何からやろうか?」

「早速打ち上げと行きたいところでござるが、先にお風呂に入るでござるよ。」

「そうだな。鉱山に潜ったりした一日の汚れが溜まっているからな。食事の前に湯浴みをしようか。」

 エルはゴーレムと戦ったし、全員モグラに乗ったりしたので土や砂で汚れているな。食事の前に洗い流した方がいいだろう。

「エルは知らないと思うけど、この宿舎の大浴場は温泉になってるんだよ。エルは温泉好き?」

「温泉は好きだけど、大浴場か・・・。」

「心配せずとも今ならイベントで冒険者は出払っているはずだから、大浴場には誰もいないと思うでござるよエル殿。」

「あ、そっかー。」

 エルは人見知りだから、知らない冒険者と鉢合わせる事を懸念していたのか。アカネは人の機微によく気が付くな。忍者だからかな?私は不老不死になったせいかいろいろ雑になっていた気もするし、周りの事をもっとよく観察した方がいいかもしれない。

「祝いの席に水を差すようで悪いが、エルは人見知りが治っていないようだな。たしかに試験の条件は満たしたが、本質的な問題がクリアできていないようだが大丈夫なのか?」

「知らない人にも少しは慣れてきたし、これから治していくから大丈夫。フラウさんもそのことは分かっているし。」

「そうか。それならばよいのだが。」

「話はあとにして大浴場に行くぞ。早くさっぱりしたいし。」

「そうだね。行こう行こう。」

「エルは急な話だったし着替えが無いだろう。一番背丈が近いし私の服を貸そう。」

「ありがとうフィオ。」

 入浴の準備をして、施設1階の大浴場へと移動する。


 脱衣場に入ると、例によって見覚えのある服が脱衣籠の一つに畳んであるのが目に入った。

「またアトラさんが入ってるみたいだね。」

「あいつはいつ来ても風呂に居るな。」

「流石に一日中ずっといるわけではないと思うでござるよ。ところで、エル殿はアトラ殿を知っているでござるか?」

「噂は知ってるけど会ったことは無いよ。でもみんなと一緒だしたぶん大丈夫。人見知りは治していかないといけないし。」

「その意気やよし。それじゃあお先でござるー。」

 アカネは素早く服を脱ぎ、浴場へと急行した。相変わらず早いな。

「私も行くよ。」

 エルも豪快に服を脱いでアカネに続いた。エルは人見知りな性格の割に思い切りはいいな。巨大なゴーレムが相手でも果敢に挑んでいったし、別に気が小さいわけではないんだな。実際易々とゴーレムを倒していたから怯える理由は無いんだけど。

「2人とも早いな。吾輩も続くとするか。」

「わびさびのないやつらだな。まあいいか。」

 ミカとフィオも二人に続いてバッと服を脱ぎ浴場へと向かった。2人とも今までは急いでいなかっただけで、別に準備に時間がかかるわけではなかったんだな。私は元から裸なので、そのままで4人の後を追う。


 浴場に入るとアカネは既に体を洗い終えて浴槽に浸かっていた。なんだかどんどんスピードアップしてるなアカネ。これも修行の成果なんだろうか?

「私たち以外はアトラしかいないし魔法で体を洗ってしまうか。別に迷惑にはならんだろ。」

「そうだね。いいんじゃないかな?エルもこっちにおいで。」

「え?うん、わかった。」

「それじゃあ行くぞ。バブルスパイラル。」

 ミカが魔法を発動すると無数の泡が螺旋状に私たちの体を包み込み、一瞬で全身くまなく洗ってしまった。

 体がきれいになったところで改めてエルを見てみると、手足が少し大きい以外は人間のこどものような容姿だ。身長はフィオよりさらに小さいくらいだが、それほど変わらないな。鍛冶仕事をしている割には肌がきれいだけど、あんな薄着で仕事していて火花とか飛ばないんだろうか?ゴーレムを殴り飛ばすパワーの割には筋肉は付いていないようだ。雷を纏った姿の時だけ強くなっているのかな?服を着ている時も上着はランニングシャツ1枚だったから分かっていたけど、胸はまったくないな。


 既に湯船に浸かっていたアカネに合流すると、少し離れてのんびり温泉に浸かっていたアトラが近づいてきた。

「やっほーアルゴノーツのみんな。知らない子が増えてるね。」

「こんばんはアトラさん。この子は鍛冶師で、明日からは冒険者でもあるエルーシアです。」

「初めましてアトラさん。私がエルーシアです。エルと呼んでください。」

 あれ?エルはアトラを知らないはずだけど、普通に挨拶しているな。アトラ相手には人見知りにならないのかな?こどもとか動物が相手なら元々平気みたいだし、エルから見たらアトラもこども判定なのかもしれないな。アトラは少なくとも数百歳を越えているはずだけど。

「それで、エルはアルゴノーツに入るのかい?」

「えっと。まだ分からないです。」

「そういえばエルはどうして冒険者になったんだ?」

「魔物のいる鉱山とかは冒険者でないと入れないから、そのためじゃないんでござるか?」

「そういうわけじゃなくて・・・。」

 エルは少し考える仕草を見せてから話を続けた。

「私が冒険者になりたい理由は、話すとちょっと長くなるんだけどいいかな?」

「もちろんいいよ。」

 アルゴノーツのメンバーも頷いている。

「私も暇だからいいよ。」

 アトラも一緒に話を聞くようだ。そういえばイベント会場でアトラは見かけなかったけど、エルの事も知らないみたいだしイベントに来ていなかったのか。別に強制参加じゃないしいいんだけど、ずっと温泉に居てフラウと会わなかったのかな?


 話を聞くためにエルの周りに集まって並び、それから改めてエルが話を始めた。

「まず私が鍛冶師をやっているのは知っての通りなんだけど、私は元々冒険者志望なんだ。」

「え?そうなのでござるか?鍛冶工房で働いているし、てっきり鍛冶師が本職だと思っていたでござるよ。」

「私が錬成もできる事は話したと思うけど、他にも色々な技能を覚えているよ。趣味の機械工作もそのうちの一つだけど、私が色んな技能を習得しているのは冒険者になって夢を叶えるためなんだ。」

「へー。それで夢ってなんなの?」

「私の夢は巨大ロボットの製造と実用化だよ。」

「巨大ロボ!?」

 アカネが目を輝かせてすごい勢いで食いついた。

「アカネは和の国出身だよね。それならロボットアニメを知っているのかな?」

「もちろんでござるよ。ロボは男のロマンでござるなー、拙者は女でござるけど。忍者ロボは大体強キャラでござるし、ロボアニメは好きでござるよ。」

「私も人並みには好きだよ。すごく詳しいってわけじゃないけど。」

「マキも知ってるんだね。」

「巨大ロボットとはなんだ?それとロボアニメというのも初耳だな。」

 フィオにも私やアカネと同じく前世の記憶があるけど、フィオが前世で亡くなったのは約100年前の事だからロボットアニメは知らないのか。100年前って言うとロボットもアニメも、まだ概念すら存在しなかった時代なのかな?


「巨大ロボは簡単に説明すると、主に人型の大きな機械に人が乗って操縦するものかな。アニメは絵が動く漫画って感じでわかるかな?」

「人型の機械?それは何か利点があるのか?アニメについてはなんとなくわかるが。」

「人型だとかっこいいでしょ!」

「そうそう人型はロマンだよ。利点なんてこじつけでいいんだよフィオ。」

「ドワーフは合理主義的なところがあると思っていたが、巨大ロボというのはつまるところ合理主義とは真逆の発想なのだな。」

「そうなんだよね。ドワーフのみんなには巨大ロボのよさがうまく伝わらないんだ。自分の意思で動くゴーレムが居るのに、あえて人が乗って操縦するのも非合理的だしね。」

「人工知能もロマンだよね。ゴーレムは魔法生物だし、人工知能とはちょっと違うみたいだけど。」

「フィオ殿もアニメを見れば良さが分かると思うのでござるが、こっちの世界には生憎アニメは無いでござるな。」


 前世の記憶がある3人で巨大ロボ談義に花を咲かせていると、黙って話を聞いていたアトラが口を開いた。

「話から察するに、3人は前世の記憶があるんだね。」

「そうですね。言われてみればミカ以外は前世の記憶持ちですね私たち。私は転生者なのでちょっと出自が違いますけど。」

「転生者が吸血鬼ヴァンパイアであるミカと仲間になっているのかい?」

「そうですけど、それがどうかしたんですか?」

「いや深い意味はないよ。私はマキ以外の転生者にも会ったことがあるけど、彼らはみんなアナトステオスに対して敵対的だったから、意外だと思っただけだよ。」

「アナトス?なんですかそれ?」

「今の時代ではそう呼ばないんだっけ?アナトステオスって言うのは、ミカやユグドラシルみたいな不滅の存在の事だよ。」

「なんかかっこいいですね。私もそう呼ぼうかな?」

「随分古い言葉を知っているんだなアトラ。」

「ミカほどじゃないけど、私もこう見えて長く生きてるからね。」

「私たちの事を何と呼ぼうが人の自由ではあるけど、私はその呼び方は好きじゃないんだよな。既に失われた言葉だし、どうせ使うならアナトスにしてくれマキ。」

「うん?何が違うのかわからないけど、わかったよミカ。」

 すでに失われた言葉だとか今の時代だとか言っているけれど、アトラはいつから生きているんだろう?古代語を話せるみたいだし種族もよく分からないし、謎が多いな。すごく強いのだけはたしかだけど。


「話が逸れたけど、私の夢の話の続きをするね。」

 ロボットの話から大分横道にそれてしまったので、エルは仕切りなおして話を始める。

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