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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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悪い魔物じゃないよ ~魔物とパンダ~

 モグラの魔物が人に対して危険な存在ではないと、証明するためのイベントを開くことになった。イベントの参加者を募るのは、冒険者ギルドの受付嬢フラウと職人ギルド所属のエルがそれぞれのギルドを担当してくれている。アルゴノーツはイベントにモグラの魔物を連れてくるために、ニザヴェリルの街を出発してモグラが隠れている森へと向かう。

「モグラさんにも作戦内容を伝えないといけないし急がないとね。私は走っても遅いからラーベに乗せて貰うよ。ミカもまた乗せて貰う?」

「そうだな。」

「ラーベに乗るなら私はマキちゃんのポーチに入っていようかなー?置いて行かれると困るしねー。」

 そう言うとミミルは私のポーチにもぐりこんだ。


 私はポーチから世界樹の種(ユグドラシルケルン)を取り出し、杖で叩いてラーベを呼び出す。ラーベは植物の体を持つカラスで、ユグドラシルの分身のような存在らしい。ただし分身と言ってもユグドラシル本人とは別の意思を持っており一個の生命体のように活動している。

「近くの森まで乗せて欲しいんだ。またよろしくラーベ。」

「私もよろしくな。」

「もちろんいいよ。ところでマキはちゃんと魔力操作の練習をしているみたいだね。これなら前よりも本気に近い力が出せるよ。」

 自力で飛ぶのはまだ無理だったけど、ラーベの力を解放するのには役に立ったのか。飛べるようにもなりたいし、もっと魔力操作を練習しよう。

「拙者達も乗せて貰うでござるかね?すぐ近くでござるし。」

「そうだな。吾輩も一度ラーベに乗ってみたいとは思っていたしな。」

「今なら何人乗っても平気だよ。早く乗って。」

 アルゴノーツ全員でラーベの背中へと乗ると、ラーベは翼を羽ばたかせて飛び立った。

「結構速く飛べそうだから、みんなちゃんと掴まっていてね。」

 言われた通りラーベにしっかりしがみ付くと、ラーベは速度を上げて一瞬でモグラの待っている森まで到達した。

「お待たせ。到着だよ。それじゃあ私は種に戻るね。」

「ありがとうラーベ。」

 ラーベは私たちを降ろすと、魔力を放出して種に戻った。私は種をポーチへとしまう。


「大した距離ではないとは言え、あっという間だったでござるな。ラーベ殿はこの間呼び出した時よりはるかに速くなっているでござるよ。」

「ユグドラシルの分身体という話だしな。本来の力は凄まじいのだろう。」

「ユグドラシルの力は底が知れないねー。本体はもちろんだけど、ミカと戦った時の鯨もすごかったしねー。」

 ミミルは知らないうちに私のポーチから抜け出していたようだ。


 森に到着したアルゴノーツはモグラと別れた地点へと行き、擬装された穴の前で呼びかける。

「モグラさん迎えに来ましたよ。」

 少し間をおいてモグラが穴から顔を出した。

「お前たちか、待っていたぞ。街での準備は終わったのか?」

「はい、街の外でモグラさんが危険ではない事を証明するイベントを開く事になりました。」

「事前の話通りだな。それで、具体的に私は何をしたらいいんだ?」

「私たちと仲良くしているところを見せて、モグラさんが人に危害を加えない魔物であることをアピールすることに決まったんですけど、それでいいですか?今はちょっと別行動中ですけど鉱山で一緒に居たエルも参加します。」

「そのくらいなら構わんが、仲良くと言ってもどうしたらいいんだ?」

「そうですねえ。例えばモグラさんの背中に私たちを乗せて貰うとかですかね。」

「ふーん?そんなことでいいのか?他には何かあるか?」


 仲良しアピールと言っても、モグラと遊ぶ方法なんていまいち思い浮かばないしどうしたものか。私が少し悩んでいるとアカネが肩を叩いてきた。

「マキ殿マキ殿。ちょっといいでござるか?」

「どうしたのアカネ?」

「モグラ殿がただ大人しいだけだと思われても困るので、力も見せておいた方がいいでござるよ。反撃する力を持っているけれど、人が危害を加えなければ大人しい魔物という正しい実態を知ってもらうでござるよ。」

「力を見せると言ってもどうするの?」

「岩盤を粉砕するほどの力でござるからな、手ごろな岩をマキ殿の合図で粉砕してもらったらどうでござる?」

「見ている人がモグラさんを怖がるんじゃないかな?」

「人とモグラの種族は互恵関係にはないし、お互い仲良しになりたいわけではないからな。むしろ双方無関心であった方が都合がいい関係と言えるだろう。であれば、手を出さなければ無害な魔物という正しい情報を伝えるのは重要だろう。」

「そっかー。ところで手ごろな岩なんてその辺にあるのかな?」

「我々が朝の修行で利用している場所に岩石地帯が有るからそこから拝借しよう。岩石を使用していいかフラウに確認したほうがよいな。」

「岩の準備も問題なさそうなんだね。というわけで、モグラさん。」

「どうした?」

「私たちが岩を用意しておくので、私が合図したら思いっきり岩を粉砕してください。モグラさんが強力な力を持っている事も示しておいた方がいいみたいなので。」

「そのくらいわけないが・・・まあ私に人の気持ちは分からんしな、お前たちに任せるぞ。」

「ありがとうございます。モグラさんも作戦内容はこれでいいみたいだよ。」

「そうか。ならば岩石の準備もあるしすぐに街に戻るとしよう。」

「モグラが街にそのまま近づくと驚かれるかもしれないし、最初から私たちが乗っていった方がいいかもな。」

「羽付きの少女も私と会話できるのだな。なぜ黙っていたんだ?」

「ミカは人とか魔物とか関係なく中立の立場らしいので、干渉していなかったんですよ。」

「そうだったのか。お前も人でも魔物でもなさそうだが、なぜ協力しているんだ?」

「そうですね。あんまり考えてなかったですけど、私もこの世界に本来存在しない動物だし、魔物と似たような境遇だからですかね。」

「お前も異界からの来訪者だったのか?この世界の動物だと思っていたぞ。」

「異界出身というわけではないんですけどね。この世界で産まれた事は間違いないですし、モグラさんは転生ってわかりますか?」

「うーむ?転生は知らないが、魔物と近い立場に居るから私を放っておけなかったという事だな。それならば合点がいく。よろしく頼むぞ。」

 モグラはひとまず納得してくれたが、私自身なぜ魔物のために行動しているのかを聞かれると答えに困る。私は人でも魔物でもないし、出会ったばかりのモグラに特別な感情もないはずだ。一応冒険者をやっている以上は人の味方という事にはなるが、それならば魔物に肩入れする理由はない。

 私もミカと出会っていなければ、見た事もない魔物として排除されていたかもしれないし、モグラに自分を重ねているのかもしれないな。


「よし、全員乗ったな?出発するぞ。」

「はいお願いします。」

 アルゴノーツはモグラの背に乗りニザヴェリルの街へと出発した。モグラは馬くらいの速さで走れるので街までは数分で到着するだろう。

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