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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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冒険者クエスト―スタムメタルゴーレムの捕獲― ~エルの力~

 アルゴノーツとクエスト依頼者のエルはランメル鉱山の奥地にあるゴーレムの生息地に到達し、ゴーレムと契約するための部屋を訪れていた。その部屋には数十体のゴーレムが配置されており、エルは中でも一番強そうなゴーレムを選んで力比べの儀式を開始した。

「マキ、リュックを預かっててもらえる?」

「おっけー。」

 私はエルが担いでいた大きなリュックを受け取る。


 ドワーフの少女エルは身長1m強で細身の小さな体をしている。対するスタムメタルゴーレムは身長4m程で、全身を金属塊に覆われたまるで重戦車のような巨人だ。両者は部屋の中央にある、魔法陣が描かれた土俵のような舞台で向かい合っている。

「力比べって具体的には何をするの?」

「文字通り腕力勝負で祭壇から相手を押し出した方の勝ちだよ。」

「え?到底勝ち目があるようには見えないでござるけど、本当に大丈夫でござるかエル殿?」

「大丈夫大丈夫。私の力を見せてあげるよ。」

 そう言うとエルは右腕に嵌めた腕輪に魔力を集中させた。

「神器ドラウプニル起動!ドンナーゴット・ソール!」

 エルが叫ぶと雷鳴が轟き、全身に雷を纏ったような姿になった。続いてエルは足元の魔法陣に手を置き魔力を流し込んだ。すると魔法陣が光を放ち、ゴーレムが呼応するように動き出した。


「ゴオオオオオオ!」

 魔法陣の起動が力比べ開始の合図だったようで、ゴーレムは大きな声をあげてエルに向かって突進する。エルは突進するゴーレムの正面に腰を低く落として立ち、地面を蹴ってゴーレムに向かってジャンプした。さながら雷のようなスピードでゴーレムの腹部に飛び蹴りを放ち、ゴーレムはたまらず突進を止めてよろめいた。

「おー!すごいでござる。拙者以上の怪力でござるな。」

「ドワーフは力自慢が多いが、さすがにこれは異常だな。エルは雷を纏うと同時に魔力量も倍増したが、これもあの腕輪の力なのか?ドラウプニルといえば北欧神話のオーディンが持つとされる腕輪だが。」

 ゴーレムはエルの力を認めたようで、迂闊に突進することはやめてじりじりと近づいていく。対するエルは再び腰を落としてジャンプする態勢に入った。

「シュラッグ・ツァードラッケン!」

 必殺技っぽい叫び声と共にエルは跳躍し、ゴーレムの顔面に右ストレートを放った。ゴーレムは防御態勢を取ろうとしたが、雷のような速さで動くエルを捉えることができていない。全身の雷を右腕に集中した強烈な一撃はゴーレムを吹き飛ばし、ゴーレムは部屋の壁面へと叩きつけられて倒れた。舞台の魔法陣が放っていた光は収まり、力比べはエルの勝利で終わったようだ。


「勝ったー。」

 エルは全身に纏っていた雷を解除し、両手をあげて喜んでいる。

「おめでとうエル。これでゴーレムはエルのいう事を聞くようになるのかな?」

「そのはずだよ。思いっきり殴り飛ばしちゃったけど、ちょっと様子を見てこよう。」


 全員でゴーレムの近くに集まると、ゴーレムはゆっくりと起き上がりエルのもとに近づいてきた。エルが歩くとゴーレムはすぐ後ろをついて歩き大人しくしている。エルは無事ゴーレムを従えることができたようだ。

「ゴーレムに何か指示を出すことができるのでござるか?」

「ゴーレムは話さないけど言葉は分かるから、簡単な指示ならしたがってくれるよ。えっと、この子の事はなんて呼ぼうかな・・・。」

 エルはゴーレムに名前を付けるようだ。少し考えてからゴーレムの目を見つめて話しかける。

「今から君の名前はゴーくんだよ。よろしくね。」

「ゴオオオ。」

 ゴーレムは喜んでいるのかはよくわからないが、エルの言葉を了承するように返事をした。

「それじゃあゴーくん、右手をあげてみて。」

 ゴーレムはエルに言われた通り右手をあげた。

「よし、いいこいいこ。」

「ばっちりでござるな。そういえばマキ殿はゴーレムの言葉も分かるでござるか?」

「ゴオオとしか言ってないね。言葉を理解しているみたいだけど話すことはできないのかな?」

「そっか、ちょっと残念だね。ゴーくんが何を考えているか分かったら、すぐ仲良くなれると思ったのに。」

「なんにせよこれでクエスト達成だな。改めておめでとうエル。」

「おめでとうでござるよー。」

「おめでとう。」

「小さいのにやるなエル。おめでとう。」

「うん、ありがとうみんな。それじゃあ街に帰ろうか。家に着くまでがクエストだからね。」

「遠足かな?」

 そんな話をしていると、誰かのお腹が鳴る音がした。

「そういえばまだお昼を食べていなかったでござるな。少し遅くなってしまったけれど、昼食にするでござるよ。」

「昼食を取り終えてから、モグラの魔物と合流して街へ戻るとしよう、」

「この部屋はきれいだしその辺に座って食べようか。エル、リュックを返すね。」

「ありがとうマキ。レジャーシートを持ってきたから敷いて食べよう」


 エルはリュックからレジャーシートを取り出して地面に敷き、クーラーボックスと水筒、人数分のコップを用意した。クーラーボックスにはサンドイッチが詰め込まれていた。私もポーチに預かっていたサンドイッチの包みを取り出して開いた。エルが用意したサンドイッチはミカが昨日作ったのとよく似たニザヴェリル式だ。水筒に入った水をコップに注ぎ昼食を始める。

(一同)「いただきます。」

「エルもお弁当を用意してきたんだね。」

「うん、昨日のうちに作っておいたものだけどね。たくさんあるからこっちのも食べてね。」

「ありがとう。ニザヴェリルのサンドイッチだね。フィオが作ったのはオリジナルらしいけど一応ミッドガルド流って事になるのかな?」

「まあそうだな。多めに作って来たからこちらのサンドイッチも食べてくれエル。」

「うん、交換だね。」

「どちらもおいしいし甲乙つけがたいでござるな。」

「私も作ってくればよかったな。」

 ミカは少し残念そうに呟いた。

(一同)「ごちそうさまでした。」

 サンドイッチはすぐに食べることができるので昼食はあっという間に終わった。ゴミをまとめて、レジャーシートや水筒を片づけてから、エルはリュックを担ぎなおした。


 スタムメタルゴーレムの捕獲は無事に達成できたので、元来た道を戻りモグラと合流して街へと帰ることにする。モグラが無害であることを冒険者達に証明する件は、モグラの言葉が分かる私が上手く橋渡しをしないといけないだろう。それはそうとして、エルにとっては初クエスト達成だし今夜は盛大にお祝いしよう。

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