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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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エルの冒険 ~朝食とクエスト準備~

 ミカとの魔力操作の訓練を終えて、夢の中で眠ると現実では目が覚めた。私は不老不死の影響で疲れないし眠る必要もないので問題ないが、普通の人がこの訓練をすると睡眠不足で倒れそうだな。

「おはようマキ。」

「おはようミカ。」

「おはようでござるー。」

「おはようマキ。朝食は吾輩が用意したぞ。」

 私とミカはいつもより少し遅く起きたので、フィオが朝食の準備をしてくれたようだ。

「2人とも朝の修行はもう終わったの?」

「今日はエル殿と待ち合わせが有るから修行は早めに切り上げて、朝食の食材も帰りがけに買ってきたでござるよ。」

「2人はぐっすりと眠っていたからな。」

「そっかー。ありがとう。」

「待ち合わせ前に昨日のクエストの処理もしたいしさっそく朝食にしよう。」


 全員で食卓の準備をして食事を始める。今朝のメニューは昨日と同じくサンドイッチなのだが、フィオが作ったので昨日とは別物になっている。5㎝くらいの高さの薄い食パン1斤を丸々使った豪快なサンドイッチだ。食パンの頭をスライスしてパンの中身を切り出し、箱状に加工してから中に具材を敷き詰め、先ほどの食パンの頭を蓋のようにかぶせてある。具材はパセリやハーブを散らした薄めのステーキが2枚、間にマッシュルームと玉ねぎの炒め物、そして一番上には小さくちぎったモッツァレラチーズをかけて地層のようになっている。料理との相性を考えてか飲み物は牛乳だ。

(一同)「いただきます。」

「これはミッドガルド風サンドイッチなのかな?」

「いや、これは吾輩オリジナルだな。ミッドガルドでは家庭ごとにアレンジメニューが大量に存在するから、あまりミッドガルド特有の料理というものはないかもしれないな。エルフはだいたい料理好きだからな。」

「ドワーフは専門の料理人がいるけど、家庭ではそんなに手間はかけないって感じなのかな?」

「料理好きのドワーフもいるだろうけど、あまり関心がない奴が多いみたいだな。男のドワーフは栄養さえ取れれば同じって感じだしな。」

「合理主義というか雑というか、見た目通り豪快だね。」

「郷に入っては郷に従えというわけで、この国の風習に習って昼も同じものを弁当にして持っていくぞ。クエスト中では昼食を用意する時間もないだろうし、ドワーフ流の生活は冒険者と相性がいいかもしれないな。」

「結構暖かい気候だけど腐らないかな?」

「魔法で処理できるから腐る心配はないぞ。」

「そういえば冷蔵庫の話の時にそんなこと言ってたね。便利だな魔法。」

「忍者は現地調達が基本でござるよ。今は冒険者でもあるから気にしないでござるけど、証拠を残すようなものはできる限り持ち込まないでござる。」

「オスカルさんはすごい証拠残しまくってたけどね。」

「野生の本能には勝てなかったのでござろう。オスカルは忍者の里でもたまに畑に手を出して怒られていたでござる。」

「畑荒らしの常習犯だったのか。」

「大きくなってからは悪癖は収まっていたのでござるが、あのメロンがよほど美味しそうだったのでござろうな。」

 国ごとの習慣の違いや、昨日のクエストについて談笑しながら食事を進める。

(一同)「ごちそうさまでした。」


 食卓を片づけ、クエストに向かう装備の準備をする。エルの護衛任務なので戦闘用の装備になるが、フィオとミカは武器を使わないし、アカネはいつも武器を携行しているからいつも通りだな。

「アカネは今日は忍び装束じゃないんだね。」

「忍び装束は夜以外はさほど擬装効果が期待できないでござるからな。目立つ格好で隠密するのも訓練になるし、普段はこの格好で行動するでござるよ。」

 フィオは朝食と同じサンドイッチを厚紙で梱包して崩れないように紐で縛っている。昼食用の弁当の準備だ。

「お弁当は私のポーチに入れておこうか?」

「そうだな。マキは戦闘に参加しないだろうから、荷崩れの心配もないし任せるとしようか。ついでに非常食も預かっておいてくれ。それならば吾輩は携行品を持たなくともよいしな。」

「うん、任されたよ。」

 お弁当と非常食の包みを受け取りポーチの中へとしまう。フィオは大きなリュックを置いて手ぶらになった。エルフに武器は必要ないし魔法で大概の事ができるので、リュックには非常食と調理器具しか入っていなかったようだ。


 エルとの待ち合わせは7時だからまだ余裕はあるが、昨日のクエストの達成報告もあるので早めに出かけることにしよう。

「アルゴノーツ出発でござる。」

「おー。」


―――時間は遡り朝4時ごろ

 ドワーフの少女エルは初めてのクエストに向けて行動を開始していた。ゴーレムの捕獲クエストはドワーフにとってはそれほど難しいことではない。しかし冒険者ギルドに登録していない場合は、他の冒険者に同行する形でしか生息地に入ることはできない。なので実際に鉱山へと足を踏み入れるのは初めての事なのだ。

「緊張して早く目が覚めちゃった。昨日のうちに準備は終わらせたけどもう一度確認しておこう。」

 大きなリュックに道具を詰め込んでいるが、クエストでは使い道の無さそうなものも多い。初めてのクエストで気負い過ぎているのだろう。昨夜のうちに作っておいたサンドイッチを冷蔵庫から取り出し、つまみながらリュックの中身を広げてチェックしていく。一通り確認してから、小型のクーラーボックスにお弁当用のサンドイッチを入れて、広げた道具とともにリュックに詰め込み直す。

「よし、ちょっと早いけどもう出かけようかな。親方に挨拶してこよう。」

 リュックを担ぎ、宝箱風の収納ボックスから古風な腕輪を取り出して右腕に装備し、自室を後にする。


 自室から鍛冶工房へと移動し、既に仕事の準備に取り掛かっていた親方の元へと向かう。

「おはよう親方。」

「おはようエル。もう出発するのか?」

「うん、まだ早いけどお母さんにも報告しておきたいし。」

「おう、そうか。ゴーレム捕獲くらいエルなら問題ないと思うが気をつけろよ。」

「仲間もいるし大丈夫だよ。」

「冒険者試験の方も頑張れよ。応援してるぜ。」

「うん、ありがとう。いってきます。」

 エルは一層意気込んで初めての冒険への第一歩を踏み出した。

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