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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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冒険者アトラの思惑

 獣害の有った畑の、夜の警備の準備のためにホーム(拠点にしている宿泊施設の一部屋)へと戻ってきた。夜通しの警備になるかもしれないので、夕飯や入浴などを先に済ませてしまおう。

「さてと食事にするか入浴にするか、それとも先に警備に向かうための装備を整えるか?」

「まずは入浴を済ませて、準備を整えてから食事がいいんじゃないでござるか?外食した足でそのまま農園に向かったらいいでござるよ。」

「あまり時間をかけられないし、軽食店のようなものが無いかギルドに寄ってフラウに聞いてみるか。」

「日が暮れるまでには農園に到着した方がいいもんね。」

「ニザヴェリルでは夜間になると、インビスと呼ばれる軽食店がたくさん営業しているぞ。飲み歩くドワーフ向けの出店屋台みたいなものだけど、早い時間帯に空いている店もあるからそこで夕食を取ろう。」

「それじゃあまずはお風呂に入っちゃおう。」

 おおまかな予定が決まったところで、ポーチなどの装備品を外して施設一階の大浴場へと向かう。泥棒なんていないだろうけど鍵はしっかりかけておこう。


 大浴場の脱衣所に入ると先客がいるようで、脱衣籠の一つには服が畳まれている。あまり人の荷物を覗き込むのも悪いが少し目に入ったのは見覚えのある白い服で、ギルド最強と呼ばれている女騎士アトラの物だった。

「アトラさんが入っているみたいだね。」

「今朝拙者とフィオ殿がシャワーを浴びに来た時も、アトラ殿は温泉に浸かっていたでござるよ。」

「もしかして朝からずっと温泉に居るのかな?」

「流石にそれはないだろう。温泉巡りをしていると言っていたし、昼間は街の温泉を巡っているはずだ。」

「結局温泉じゃないか、たまげたなあ。温泉の騎士の二つ名は伊達じゃないのか。」

「お先でござる―。」

 アカネは仕立てたばかりの服を一瞬で脱いで脱衣籠にしまうと、そのまま浴場へと向かった。相変わらず素早い。私は元々裸なのでアカネに続いて浴場へと向かう。2人もすぐに追いつくだろう。


 浴場に入るとアトラがのんびりと半身浴しているのが見えた。ゆっくりしているみたいなので声はかけずに、洗い場へと向かおう。

 洗い場に行くとアカネが体を洗っている最中で、全身真っ白な泡に包まれていた。私も体を洗ってしまおう。

「マキ殿お先でござるよ。」

 私がシャワーで毛皮を洗い流していると、アカネは既に洗い終えたようで湯船に向かっていった。私も早く洗えるように練習してみよう。私はブラシに洗剤をつけて鏡を見ながら全身くまなく洗っていく。自分で洗うのが初めてだった昨日よりも手つきが慣れてきたので、短い時間で体を洗い終えることができた。何事も反復練習は大事だね。

 私が体を洗い終える頃にミカとフィオも洗い場へやってきた。2人が洗い終わるのを待っているのも変だし私も湯船に向かおう。


 湯船に入るとアカネとアトラが談笑していた。

「やあマキ、昨日ぶりだね。」

「こんにちはアトラさん。何を話していたんですか?」

「アトラ殿に畑を荒らした獣について、何か知らないか聞いていたところでござるよ。」

「アカネにも話したけど、この辺りに現れる大型の獣なんて聞いたことないね。私はあまりフィールドワークをしないから、生態系についてそんなに詳しくないけどね。」

「依頼者のゲッツさんも獣害なんて初めてだって言っていたし、この辺に棲んでいる原生種の仕業じゃないのかもしれませんね。」

 3人でクエストについて話していると、ミカとフィオも湯船にやってきた。

「フィオとミカも来たね。アルゴノーツはこれからクエストに向かうらしいけど頑張ってね。」

「ああ、クエストについて話していたのか。アトラは本当に普段はクエストを受けないのか?」

「私はお金に困っているわけじゃないし、ギルドも人手不足ってわけじゃないからね。なんでも私が解決していたら他の冒険者達の成長に影響が出るし、私の力が必要なクエスト以外は極力受けないことにしているのさ。」

「なるほど、ただ温泉巡りしてるだけじゃなかったんですね。」

「こう見えて冒険者歴は長いからね、いろいろ考えているのさ。強くなったら私と勝負してくれるかもしれないしね。」

「アトラ殿に挑めるような冒険者はいるのでござるか?」

「この辺は穏やかで危険な魔物なんかもほとんどいないけど、もっと危険な地域で活動している冒険者には強い子もいるよ。昨日も言った通り強ければ優れた冒険者ってわけじゃないけれどね。」

「世界は広いでござるな。武術大会が有ったら拙者も参加してみるでござるよ。」

 ミッドガルドもニザヴェリルも平和な感じだけど、この世界にも危険な地域があるのか。しっかりと旅行先の情報を集めてから行き先を決めた方がいいかもしれないな。


「マキ、日没前に現地に行くにはそろそろ出発したほうがいいぞ。」

「それじゃあそろそろ出ようか。アトラさん先にあがりますね。」

「気を付けていってらっしゃい。」

「はい、いってきます。」

 アトラに挨拶して浴場を後にした。アトラと話していて少し時間が押してしまったので、足早に着替えを済ませてホームへと戻ることにする。


 ホームに戻ってクエストに向けて出発の準備を整える。アカネは夜間のクエストなので、普段着から黒衣の忍び装束に着替えている。特別に必要な道具などもないし出発しよう。

「夕食を取る軽食店の場所は分かるかなミミル?」

「大通りの広場辺りにたくさんあるみたいだねー。開店時間は一定じゃないから行ってみないと分からないかなー?」

「準備もできたし、アルゴノーツ出発でござるよ。」

「おー。」

 アルゴノーツはホームを後にし、夕食を取るために街の大通りへと向かった。

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