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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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忍者の普段着

 アルゴノーツ一行は友達になったエルに案内されて、女性服の仕立屋キンダークレイドンへとやってきた。全身黒衣の忍び装束しか持っていないアカネは、町中で活動するにはむしろ目立ってしまっているので、町中に居ても違和感のない普段着を仕立てるためだ。

 店舗の外観は他の建物と同じく重厚な石作りなのだが、他の店とは異なり看板が少しポップなデザインになっている。店舗正面はショーウィンドウになっており、かわいらしい女性ものの服が並んでいる。ディスプレイされているのは種族として小柄なドワーフ用の服なので、こども服のようなサイズだ。外からでも明るい内装の店内が伺えるようになっていて、初めてでも入りやすい雰囲気のお店だ。

「キンダークレイドンに着いたよ。私は作業服専門のお店を利用してるから最近は来ていなかったけど、鍛冶師になる前はよく利用していたよ。」

「他のお店と雰囲気が違って、なんだかかわいいお店だね。」

「ドワーフは合理主義で性能重視なところがあるから見た目に無頓着な人が多いんだけど、ここの店長はデザインにもこだわっているよ。お店作りに力を入れているのもその一環みたいだね。」

「着物と忍び装束以外は初めてだから、ちょっと緊張するでござるなー。」

「どんな服ができるか楽しみだね。とりあえず入ろう。」


 エルに先導され店内へと移動する。店内はほのかに甘い香りが漂っているが、棚やカウンターに飾り付けられたきれいな鉱石から匂いが出ているようだ。これも魔法鉱石なのかな?

「こんにちはー。」

「あらいらっしゃい。ご無沙汰じゃないのエルちゃん。」

「デラさんおひさー。今日は友達を連れてきたよ。」

 デラと呼ばれたドワーフの女性は、店内に飾られたかわいらしい服とは違って落ち着いたシックなデザインの服を着ている。派手さはないがどことなく気品漂う着こなしで、大人っぽい感じがする。


「初めましてでござるデラ殿。拙者は忍者のアカネでござるよ。今はこの通り忍び装束なのでござるが、町ではむしろ目立ってしまうので目立たない普段着を仕立てたいのでござるよ。」

「初めましてアカネちゃん。忍者という事は和の国の出身なのかしら?この辺では珍しいわね。」

「本職は忍者でござるが、今は冒険者としてみんなで旅をしているでござるよ。」

「あら、冒険者さんだったのね。なるほどね。」

 デラはエルの方に目線を向けて頷き、納得した様子で話を続けた。

「それでどんな感じの服をご所望なのかしら?」

「目立たないことはもちろんでござるが、そのままでも戦える格好がいいでござるな。」

「ふむふむ動きやすくて目立たない格好ね。戦闘スタイルや使う武器なんかを教えてもらえるかしら?」

「刀や手裏剣を使うか、あるいは空手で戦うでござるよ。忍法・・・魔法も少々使うけれど、おまけ程度でござるな。手足は自由に動かないと困るでござるな。」

「なるほどね完全に理解したわ。私に任せなさい!」

 何となく不安を感じる言い方だけど大丈夫かな?


 デラは薄い紙をハサミで切ってアカネにあてがい、待ち針で留めて出来上がる服のモデルを作った。ノースリーブでミニスカート丈の和服風のデザインだ。アカネも鏡で自分の姿を確認している。

「こんな感じでどうかしら?」

「すごい似合ってるけど、なんとなく忍者っぽいね。」

「まさに忍者の普段着という感じだな。」

「似合ってるよ。」

「忍者だな。」

 アカネ以外のメンバーが口々に感想を述べるが、そこはかとない忍者感が消せていないのはいいのだろうか?


「たしかに要望通りなのでござるが、懐かしさすら覚えるフィット感というか、修行時代の服にそっくりでござるな。」

「あら?お気に召さなかったかしら?」

「いや、実際着てみて分かったでござるが、着慣れた服装が一番動きやすいでござるな。このデザインでお願いするでござるよ。」

「はい、ご注文承りました。戦うこともあるなら丈夫な布を使った方がいいわね。仕立料はエルちゃんの紹介だし、ちょっとおまけして2万クローネよ。」

「おまけしてもらってるとはいえ、オーダーメイドにしてはお手頃だね。」

「ちゃちゃっと作っちゃうから、アカネちゃんはちょっとそこに立っててもらえるかしら?」

「採寸でござるか?了解でござるよ。」


 デラは布と裁縫セットを用意して作業机の上に広げた。ドワーフ用なので裁縫セットは小さいがプロ仕様のようで、一見して高価そうな道具が揃っている。

「それじゃ行くわよ。」

 デラは掛け声とともにあっという間に布を裁断して、裏布と合わせてほつれ止めの処理をしていく。続いて裁断した布をアカネにあてがいながら素早く仮縫いした。

「はい、もういいわよ。」

「いきなり本番で採寸とかしないのでござるな。ちょっとびっくりしたでござる。」

「ドワーフは目がすごくいいからね。単純に視力がいいって意味じゃなくて、寸法を高精度に読み取れるって意味だけど。」

「言われてみればミッドガルドの雑貨屋でも、採寸なしで私のポーチを作ってくれたね。」

「お父さんが作ったポーチだったんだねそれ。」

「え?あの人がエルのお父さんだったの?」

「うん、そうだよ。」

「そうなんだ。世間は狭いねー。」


 そんな話をしているうちにアカネの服が仕上がったようだ。

「はい完成よ。帯は和の国から取り寄せたものが有るから、色合いのいいものをつけるわね。すぐにでも着られるけど早速着替えていく?」

「そうさせてもらうでござるよ。とう!」

 アカネは目にも留まらぬスピードで服を入れ替えるようにして着替えた。アカネは全身毛皮に覆われているから問題ないのかもしれないけど、人前でいきなり脱ぐとビックリするな。

「すごく似合ってるよアカネ。」

「ありがとうでござる。」

「我ながら完璧ね。冒険者さんならお支払いはカードかしら?」

「そうでござるな。カードでお願いするでござる。」

 アカネはギルドカードをデラに渡し、レジで精算を済ませる。アカネが脱いだ忍び装束は畳んで袋に詰めてもらった。

「ご利用ありがとうございました。他の子も服を仕立てたくなったらうちに来てね。」

「はい、ありがとうございました。またよろしくお願いします。」

 デラに挨拶をして店を後にした。


 店を出てすぐに、アカネは新しい服の着心地を確認するように走ったりジャンプしたりしている。

「何年も着ているお気に入りのような着心地でござる。ドワーフの職人はすごいでござるな。」

「さっきも言ったけどドワーフは目がいいし、みんな手先も器用なんだ。ものづくりの職人が多いのはそのためだよ。」

「私も服は自作だけど、魔法も使わずにあの速度で作るのは流石に無理だな。」

 ミカにもできない事があるんだな。でも逆に言えば魔法を使えばできるって事か。


「話は変わるんだけど、エルは人見知りって聞いたけど、デラさんとは普通に話せていたね。」

「ドワーフ相手なら問題ないよ。私が小さいころからみんな顔見知りだし。知らない冒険者と話すのがちょっと怖かったんだ。」

「そっかー。私たちが相手の時はどうして平気だったの?」

「私にもよくわからないんだけど・・・みんなこどもだからかな?たぶん。」

 年齢的には全員こどもじゃない気もするけど、私以外の3人は見た目はこどもだしそれがよかったのかな。


 アカネの服の着慣らしを兼ねて、街中を散歩していると時間は夕暮れになっていた。

「そろそろ夜の警備の準備を始めるか。」

「夕飯は済ませておいた方がいいよね。あとはお風呂にも入っておこうか。場合によっては朝まで帰ってこられないかもしれないし。」

「エル殿はどうするでござる?一緒に夕飯を食べるでござるか?」

「私は明日の準備もあるし今回は遠慮しておくよ。また誘ってね。」

「そうでござるか。それじゃあ今日はここでお別れでござるかね。」

「うん、また明日ね。」

「また明日。気を付けて帰ってね。」

 エルは1人で鍛冶工房の方へと帰っていった。心置きなくエルと一緒にクエストに行くためにも、畑荒らしの犯人は早々に捕まえてしまいたいな。賢い動物が犯人のようなので話し合いで解決できるといいんだけど、どうなるかな。


 アルゴノーツ一行は夜の警備の準備のために、ひとまずホームに戻ることにした。

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