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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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友達になろうよ

 アカネの武器製作を鍛冶職人であるドワーフの少女エルが請け負ってくれることになった。エルはゴーレム捕獲クエストの依頼者でもあるので、続けてクエストの打ち合わせもしよう。

「武器製作の話がまとまったところで、次はゴーレムの捕獲クエストについて話を聞かせてもらっていいですか?」

「私の個人的な依頼だし、お店で話すのはやめた方がいいかな。・・・私の部屋で話そうか。」

「そう言う事なら了解でござるよ。エル殿の部屋はどこにあるのでござるか?」

「住み込みの職人用の部屋は別棟の2階なんだけど、女の職人は私一人だから屋根裏を改装して1人部屋にしてもらっているよ。」

「ドワーフの部屋を覗ける機会などそうそうないだろうし、実に興味深いな。」

 事情を知らないと危ない人みたいなセリフだなフィオ。ドワーフの私生活がどんなものか興味があるって意味なんだろうけど。

「それじゃあ案内するから付いてきて。」


 エルに案内されて居住棟へとやってきた。1階は親方とその家族の自宅になっており、キッチン、トイレ、風呂などが揃っている。2階は住み込みの職人用の居住区で、4部屋あるがエルの先輩職人が入居しておりすべて埋まっているようだ。2階の廊下奥にある梯子からエルの部屋である屋根裏部屋へと登っていく。

「えっと、私の部屋にようこそ。」

「お邪魔するでござるよー。」

「お邪魔します。」


 エルの部屋は屋根裏全体を使っているためかなり広いのだが、設計図や機械部品が山積みになっており、ちょっとした工作機械も置かれているため寝るスペース以外はほとんど空いていない。女の子の部屋という雰囲気はなく、まるで工作室のようだ。

「なんだかすごい部屋でござるな―。機械がたくさんでござる。」

「私は機械いじりが趣味だから。」

「鍛冶以外にも機械工作もできるんですね。」

「エルちゃんは錬成もできるって言っていたけど、本来錬成師も専門の職人がいる職業だねー。」

「ドワーフは一つの職業を専門にしていると文献には有ったが、エルのようにいろいろな事ができる者もいるのだな。」

「うん・・・私は少し変わり者なのかもね。」

 エルは少し暗い顔をしたが、すぐに話を続けた。

「ゴーレムの捕獲クエストについて話そうか。」

「そうでござったな。それでは改めて話を聞かせてもらうでござるよ。」


 少し足元を片づけてから椅子と作業台を並べて腰かけ、クエストの打ち合わせを始める。

「ギルドの情報によるとクエストに期限はなかったでござるが、急いではいないのでござるか?」

「いろいろと準備しているうちの一つだからそれほど急いでいないって感じだね。片づけられるなら早い方がいいけどね。」

「なるほど早い方がいいのでござるな。エル殿も同行する必要があるから、拙者達と予定を合わせないといけないでござるな。エル殿はいつなら都合がいいでござるか?」

「今私が請け負っている仕事は、アカネの武器製作だけだからいつでも大丈夫だよ。工房には大口の依頼も入っていないし、みんなそれぞれの仕事をやっている状態だから。」

「それなら拙者達次第でござるか。どうするでござる?」

「今夜は畑の警備をしなくてはならないから、今から鉱山へ向かうのは無理だな。畑の件については今夜解決できなかったとしても、また明日の夜間の警備になるだろう。鉱山に向かうのは明日の朝からでどうだ?」

「私はそれで構わないよ。ゴーレムの生息地は決まっているから迷うことは無いし、朝7時くらいに出発すれば夕方までには捕獲を終えて帰ってこれると思うよ。」

「ゴーレムはエルさんが相手をするって話でしたけど、私たちは何をすればいいんですか?」

「えっとねマキ、お願いってわけでもないんだけど私の事はエルって呼んで欲しいな。さん付けされるとこそばゆいし、敬語もやめてくれると嬉しいかな。」

「え?うん、わかったよエル。」

 クエストの依頼者だし敬語の方がいいかなと思っていたんだけど、そういえばアカネもフィオも普通に話しているな。私だけかしこまっていても慇懃無礼だろうし普通に話すことにしよう。


「話を遮っちゃったね。それで君たちにやって欲しいことだけど、ゴーレムの生息地までの護衛ってことになるかな。ゴーレムの棲んでいる鉱山に危険な魔物は居ないはずだけどね。」

「なるほど了解でござる。他に何か注意することはないでござるか?」

「特別な装備とかも必要ないし、ある程度は私が用意していくから大丈夫だよ。」

「それなら護衛用の装備で明朝7時集合って事でよいでござるかな?どこに集合するでござるか?」

「冒険者ギルドから向かった方が早いし、ギルドに集まろう。」

「承知したでござるよ。クエストについての打ち合わせはこんなところでござるかな。」

「うん、よろしくね。」


 クエストの打ち合わせが終わり、一息ついてから作業台や椅子を元の位置へと戻した。

「打ち合わせも終わったし、そろそろお暇しようか。」

「そうだな。まだ夜までには時間もあるし、次はアカネの服選びに向かうか。」

「私もついて行っていいかな?」

「構わないけど、何か服屋に用があるの?」

「そういうわけじゃないんだけど・・・。」

 エルは言葉を詰まらせるようにして黙ってしまった。何か悪いことを聞いてしまったのだろうか。

「マキ殿は意外と察しが悪いでござるなー。」

「え?何が?」

「拙者にはわかるでござるよー。エル殿はマキ殿と友達になりたいのでござるよ。」

「そうなの?」

 エルは少し照れ臭そうに下を向いたが、すぐにこちらを向きなおした。

「えっと、友達になってください。」

「もちろんいいよ。改めてよろしくねエル。」

「よろー。また毛皮触ってもいい?」

「どうぞー。」

 エルは私の毛皮を先ほどよりも長くワシワシと撫でまわした。

「エルはパンダが好きなの?」

「うん大好き。でもパンダだから友達になりたいと思ったわけじゃないよ。マキには何か私と同じものを感じたから。」

「ふーん?前世の記憶があるからかな?私は私自身の事は全然覚えていないんだけど。」

「マキの友達なら私とも友達だな。」

「もちろん拙者もでござるよー。」

「吾輩もだ。エルフとドワーフは相性があまりよくないという話もあるが、定説など当てにならんさ。」

「みんなもよろしく。」


「よし、改めて服屋に向かおうか。エルはどこかいいお店を知ってる?」

「女性向けのお店はいくつかあるけれど、アカネはどんな服装にする予定なの?」

「町中で目立たない感じでござるな。地味過ぎても派手過ぎても目立つから匙加減が難しいでござるな。和の国なら町娘に扮すればいいのでござるが。」

「落ち着いた服装なら老舗のキンダークレイドンがいいかな。」

「現地の人がいると話が早いでござるな―。」

「私が案内するから付いてきて。」

 アルゴノーツ一行は新たに友達になったエルに先導されて、鍛冶工房イーヴァルドを後にして服屋キンダークレイドンへと向かって出発した。


 エルは前世の記憶保持者なので、記憶についても詳しい話が聞けたらいいな。アカネやフィオの情報と合わせて、記憶保持者の産まれる法則が分かるかもしれない。法則が分かっても特に何か役に立つわけでもないけれど、気になったことは調べておいて損はないだろう。

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