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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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鍛冶工房イーヴァルド ~ドワーフの少女エル~

 ホームを出発し鍛冶工房イーヴァルドへとやってきた。工房を訪れた理由は3つだ。1つ目はミッドガルドの雑貨屋店主から預かった手紙を、工房の親方に渡すため。2つ目はゴーレム捕獲クエストの依頼者と打ち合わせするため。そして3つ目はアカネの武器の製作を依頼するためだ。

 手紙はすぐにでも届けたかったけれど、ニザヴェリルへ来る道中で出会ったキャラバンが工房の職人達だったので、彼らが到着するのを待っていたのだ。ミミルの推測によるとキャラバンはそろそろ到着しているはずだ。


 鍛冶工房イーヴァルドは例によって店舗兼自宅になっているようで販売用の店舗と併設する工房、そして居住用の住宅の3棟で構成された大きな建物だ。歴史のある店舗のようで少し近寄りがたい風格があるが、私たちも冒険者だしお店の広告をもらって招待されてもいるので気後れせずに入ってしまおう。

「こんにちはー。」

「いらっしゃいませ。え?パンダ?」

 お店に入ると女の子のドワーフが出迎えてくれた。フィオより背が低いくらいだけど、この子も職人なのだろうか?女の子はボサボサのショートヘアでヘルメットを被っており、上半身は油が染みついて黒くなったランニングシャツ一丁、ズボンはだぼだぼでポケットがたくさん付いたカーゴパンツを履いている。ポケットにはいろんな工具が入っているようでカチャカチャと音を立てて歩いている。


「パンダを知っているってことはあなたは前世の記憶があるんですか?」

「うん、そうだよ。私はここで働いているエルーシア。君は何者?」

「私は冒険者のマキです。エルーシアさんってことは、ゴーレム捕獲クエストの依頼者の方ですね?」

「エルでいいよみんなそう呼ぶし。君たちが私の依頼を受けてくれた冒険者なの?」

「そうでござるよー。拙者は忍者のアカネでござる。よろしくお願いするでござるエル殿。」

「吾輩はエルフのフィオだ。よろしく。」

「一応正体を隠しているんだけど、一緒にクエストに行くなら話しておいた方がいいだろう。私は吸血鬼ヴァンパイアのミカだ。」

「よろー。えーっと、パンダはマキだっけ?毛皮に触ってもいい?」

「いいですよ。」

 エルは私の毛皮を両手でワシワシと撫でてきた。パンダが好きなのかな?自画自賛になっちゃうけどかわいいもんねパンダ。

「モフモフだね。ところで今日は何しに来たの?クエストの打ち合わせ?」

「それもあるんですけど・・・。」

 私はポーチから手紙を取り出してエルに見せた。

「ミッドガルドの雑貨屋店主から、工房の親方宛てに手紙を預かっているんです。親方は居ますか?」

「ちょうどお昼に帰ってきて今は休んでいるところだよ。呼んでくるね。」

「はい、お願いします。」

 エルは早足で店舗と繋がっている工房の方へと駆けて行った。


 ほどなくしてエルに連れられたドワーフの男性が店舗の方にやってきた。やはりニザヴェリルに来る途中で出会ったキャラバンの男性だ。

「お待たせマキ。親方を呼んできたよ。」

「俺に客って聞いたんだが、あんたたちだったか。ちゃんと来てくれたんだな、いらっしゃい。」

「こんにちは。今日はお店にも用があるんですが、それとは別に手紙を届けに来ました。ミッドガルドの雑貨屋店主からです。どうぞ。」

 そう言って私は親方に手紙を渡す。

「ああ、兄貴からか。ありがとよ、後で読ませてもらうぜ。それで店にも用があるってことは何か欲しいものが有るのかい?」

「拙者の武器を新調したいのでござるよ。あ、拙者は忍者で冒険者のアカネでござる。見本はこの通り有るんでござるが、忍具も作れるでござるか?」

 アカネは腰の忍具袋から手裏剣等を取り出し、腰に差した忍者刀も外してカウンターに置いた。親方は忍者刀を手に取りいろいろな角度から覗き込むように観察している。続いて手裏剣や撒き菱、鉤爪、苦無も手に取って吟味する。


「なかなか複雑な形状だが、こいつはそっくり同じ形じゃないとまずいのか?」

「忍者は道具を選ばないでござるよ。敵の得物を奪って使うのもお手の物でござる。でも忍者らしさは残して欲しいでござるな。」

「形態は近いもので、あとは職人にお任せってところか。ところであんたたち、エルとは知り合いなのか?あの子は結構人見知りするんだが、あんたたちは平気みたいだな。」

「さっき会ったばかりですよ。」

「そうなのか・・・。」

 親方は少し考え込んでから、意を決したように口を開いた。

「エルこの仕事お前がやってみるか?」

「うん任せて。」

「おう、やる気だな。」

「エル殿が拙者の忍具を作ってくれるのでござるか?」

「エルは鍛冶師としての腕前はたしかだから安心してくれ。今まで何度か仕事を任せようとしたんだが、冒険者とうまく話ができなくて断念してたんだ。でもあんたたちなら大丈夫みたいだな。」

「よろしくねアカネ。」

「よろしくお願いするでござるよ。」

 アカネとエルはがっしりと握手を交わした。

「よしあとは任せるぜエル。頑張れよ。」

 親方はエルの肩を叩いて工房の方へと戻っていった。


 店舗にあるテーブルに着いてアカネとエルは打ち合わせを始めた。

「それじゃあ詳しい打ち合わせをしようか。」

「よろしくでござる。」

「まず予算はどれくらいなの?」

「あまり考えていなかったでござるが、拙者一人で決められることではないでござるな。」

「場合によっては命に係わるものだし、一番いいものにしてもらったらいいんじゃない?」

「そうだな、道具はよいものを使うべきだぞ。」

「わかったでござる。一番頑丈で長持ちするようにお願いするでござるよ。忍具は信頼性が一番でござるからな。」

「うん、それならレパリアウーツ鋼で作ろうか。」

「なんでござるかそれ?」

「高硬度の魔法鉱石とスタムメタルゴーレムの外殻を錬成した金属だよ。きれいな縞模様が特徴でしなやかさと強靭さを併せ持った折れにくい素材だね。魔法鉱石の性質を付与することができるから魔法の武器を作ることもできるよ。それと、ちょっとした傷は自動修復するから手入れが楽だよ。材料は自分で用意しないと高いけどね。」

「用意せずに買った場合はどのくらいするのでござるか?」

「魔法鉱石の質次第だけど安くても100万クローネはかかるね。魔法鉱石を用意してくれれば、ゴーレムの外殻と錬成の費用だけだから10万クローネってところかな。だから冒険者は自分で材料を採りに行く人が多いよ。」

「それなら魔法鉱石は採取しに行った方がいいでござるな。」

「使える鉱石の目利きはドワーフじゃないとできないから私もついていくよ。」

「ゴーレムの捕獲任務の件も含めてでござるが、エル殿は魔物が出る鉱山についてきて大丈夫でござるか?」

「ゴーレムくらいなら私一人でも倒せるから大丈夫だよ。」

「えっ?もしかしてゴーレムとの力比べはエル殿がやるつもりなのでござるか?」

「そうだよ。冒険者が同行してくれないとゴーレムのいる鉱山には入れないし、人見知りを直す訓練の意味も含めて今回のクエストを依頼したんだよ。ゴーレムが1体欲しかったのもあるけどね。」

「拙者も戦いたかったのでござるが、依頼者の意向なら仕方ないでござるなー。ところで製作期間はどのくらいかかるでござる?」

「材料さえ用意できれば2日くらいでできるよ。」

「思いのほか早いでござるな。」

 正直早すぎると思うが、雑貨屋でポーチを作ってもらった時もあっという間だったな。ドワーフは仕事が早いのかな?


 エルは打ち合わせの内容から忍具の製作費用を算出している。

「魔法鉱石は用意してもらって、ゴーレムの外殻も捕獲クエストが成功すれば手に入るし、錬成は私ができるからサービスにするね。概算の見積もりだけど製作費用200万クローネってところだよ。」

「今は手持ちがないんですけど、後払いで大丈夫ですか?」

「冒険者は信用が有るからそれで大丈夫だよ。製品受け渡しの時に用意してくれれば問題ないよ。」

「それなら心置きなく正式に注文するでござるよ。よろしくお願いするでござるエル殿。」

「1人でやるのは初めてだけど任せて。頑張るよ。」

 アカネの武器注文がひとまず完了した。エルには武器製作以外にも魔法鉱石採掘などでたびたび世話になることになりそうだ。せっかくだから仲良くなれたらいいな。

 次はゴーレムの捕獲クエストの具体的な打ち合わせをしよう。

イラストも描きたいけど時間が無いからそのうち描こう。

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