修行の成果
朝食の準備を終えてごろごろしていると朝の修行を終えたフィオとアカネが帰ってきた。2人は大浴場で汗を流してきたようで石鹸の香りがしている。
「ただいまでござる―。」
「おかえりー。」
「朝食の準備はできているぞ。食事にしよう。」
朝食のメニューはミカが作ったサンドイッチと炭酸フルーツジュースだ。パン屋で買ったライ麦パンをスライスしてバターとクリームチーズを塗り、同じくスライスしたハム、レタス、トマト、キュウリそしてスクランブルエッグを層になるように重ねて挟んでいる。シンプルだが色んな食材を同時に食べられるので栄養バランスは良さそうだ。ミミル用に小さなサンドイッチも作ってある。フルーツジュースはウッドアップルジュースというものを選んでみた。聞いたことがない果物だけどアップルって名前だしリンゴみたいなものかな?
(一同)「いただきます。」
「これがニザヴェリルの朝食か。かなりシンプルだな。」
「職人達の朝は慌ただしいからな。短い時間で食べられるものが好まれるんだろうな。」
「フルーツジュースはなんかイチゴみたいな味だね。アップルウッドってどんな果物なんだろう?」
「それならユグドラシルのところで出てきた茶色の木の実だな。ジャムなどにもされるようだぞ。」
「へー。ところで修行はどんな感じだったの?」
「ああ、ユグドラシルの果実の影響なのか目に見えて成果は出ているぞ。アカネは魔力量が最初に会ったときからざっと3倍に増えているな。今まであまり鍛えていなかった魔力が、ユグドラシルの修行を通して一気に開花したようだな。」
「普通がどのくらいなのかよくわからないけど3倍はすごいね。」
「今まではおまけ程度に忍法を使っていたでござるからな。魔力操作が上手くなって威力も上がっているし、新しい忍法も開発しないとでござるなー。」
「吾輩も身体能力が向上しているぞ。ミッドガルドでは組手をするような相手は居なかったから、本気でぶつかれる相手ができたことで成長が促されたようだ。」
「2人とも強くなってるんだね。アトラさんにもそのうち挑めるようになるかな?」
「アトラに挑むのはまだ無理だな。昨日の吸血鬼は私の見立てではユグドラシルのところで戦ったドラゴンとほぼ同程度の強さだった。しかしアトラは魔法すら使わず身体能力と剣だけで圧倒していたからな。」
「昨日のアトラ殿はすごかったでござるなー。次元が違いすぎる・・・目で追うのがやっとだって感じでござるよー。」
「アカネはアトラの斬撃が見えていたの?」
「一瞬で千の斬撃を放つというやつでござるな。あれは超スピードだとか幻覚だとか、そんなちゃちなもんじゃないでござるよ。一振りで実際に千回斬っているでござる。」
「なぞなぞかな?」
「あれは魔力を使った疑似的な斬撃だな。本気を出せばおそらく剣を振る事すらなく相手を斬ることができるだろう。」
「隕石を吹き飛ばした時も魔力の斬撃を放っていたね。あれと同じ感じかな。」
「アトラが魔法を使わなかったとしても、我々が挑むにはまだまだ遥か遠い存在だな。」
「頑張って鍛えるでござるよ。」
アトラはそんなに強いのか。私は弱すぎてほとんど誰にも勝てないから、強さの差が分からないんだよな。魔力量で大体の強さは分かるんだろうけど、アトラのように魔力をほとんど使わなくても強い人も居るみたいだし。せめて超スピードの戦闘が発生した時に、何をしているか見えるようになればいいんだけど。
「マキも戦闘に興味が湧いたみたいだし、ちょっと鍛えてあげようか?」
「私は不老不死の影響で強くならないんじゃないの?」
「身体能力は変化しないけど魔力操作が上手くなれば、ちょっとした攻撃の真似事はできるだろう、たぶん。あとは昨日アトラがやっていたように魔力放出を推進力に変えた移動とかな。あれは莫大な魔力を持っていないと消費魔力量に見合わない移動方法なんだが、転移や風の魔法で移動する場合には魔法の発動に多少時間がかかるから、そのわずかな時間を短縮できる長所があるぞ。マキは私と同じく魔力量が減少しないから魔力操作さえ上手くなれば使い放題だし便利だぞ。」
「おーすごいね。宇宙でミカがやってたみたいに空も飛べるのかな?」
「え?うん、まぁ頑張れば飛べるんじゃないかな。」
「それじゃあ頑張るよ。」
みんなが戦っているのに見ているだけだとやっぱり悪いし、戦闘でも少しは役に立てるようになれるといいな。世界樹の種で呼び出せる植物は、魔力操作が上手くなれば強力になるとラーベが言っていたし一石二鳥だな。
そうこうしているうちに朝食を食べ終えた。
(一同)「ごちそうさまでした。」
食卓を片づけてから、次はギルドへと向かうことにする。昨日できなかった受注可能クエストの確認と、どの依頼を受けるかの会議が目的だ。何をするにも資金が必要だし、アカネの武器調達費分だけでなく少し多めに稼いでおいた方がいいかな?いずれにせよどんなクエストが有るか確認してから今後の方針を相談しよう。
冒険者パーティアルゴノーツの本格的な活動がようやく始まる。一行は装備を整えギルドへと出発した。




