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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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異世界ショッピング

 異世界に来て8日目の朝を迎えた。いろいろあった気がするけどまだ1週間しか経っていないのか。窓を開けて外を眺めると、街道には仕事へ向かう職人風のドワーフの姿や交易の馬車が見える。ドワーフ達は自宅兼職場に住み込みで働いている者がほとんどらしいので、飲み明かして朝帰りする所なのかな。夜間のクエストから帰ってくる冒険者もいるようで、早朝だが街はすでに動き出しているようだ。

「おはようでござるー。」

「おはよう。我々は早速修行に向かうぞ。」

「おはよう。外はもう結構にぎやかだね。」

「おはよう。私は朝食の準備をするぞ。ちゃんとニザヴェリル流の朝食を用意するから期待しておけ。」

「別行動するのか。それなら私はミカに付いていくよ。」

「朝食の方はよろしく頼むぞ。」

「期待しているでござるよー。それじゃあ行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

 アカネとフィオは服装を整え日課の修行へと向かった。


「私たちも出かけよう。まずは買い出しだな。」

「食料品店は早朝からやっているの?」

「冒険者の活動が活発な街だからね。冒険者の活動時間帯は昼夜問わないから、クエスト帰りの冒険者を狙って早朝から開いている店がほとんどだぞ。」

「この街のお店のメインターゲットは冒険者なんだね。」

「武器や防具、アクセサリーなんかが主な特産品だからな。現地住人のドワーフ以外はほとんど冒険者だと思っていいな。交易商人も居るが商人は交易所で取引しているから、街中では馬車くらいしか見かけないな。」

「職人だらけの街も面白そうだと思うけど、観光客には人気が無いのかな?」

「観光向きではないかもね。冒険者以外の一般人でも楽しめるものは温泉くらいだな。酒や食品は交易品として輸出されているから、あえてニザヴェリルに来なくとも大きな都市なら手に入るだろうしね。」

「私達は冒険者だから遺跡とか鉱山とか見るところはたくさん有りそうだね。」

「どこへ行くかは2人が戻ってから決めるとして、そろそろ出かけるぞ。」

「行こう行こう。」


 私とミカも身だしなみを整えて部屋に鍵をかけて出かける。買い物の支払いにはギルドカードが使えるので、ポーチを装備してカードが入っていることを確認する。アカネとフィオは鍵を持っていないので、私たちが先に帰ってこないと部屋に入れなくなってしまうな。食料の買い出しだけなので時間はかからないだろうけど気をつけよう。

「そういえばミカはお店の場所は分かるの?」

「昔に来た時の店の場所は覚えているけど、街並みは少し変わっているからどうだろうな。」

「昨日ギルドに行ったときに地図を見ておいたから私が案内するよー。」

「店の位置を覚えたの?」

「私が見た情報は図書館のノルンに蓄積されるから、情報を引き出して使うことができるよー。」

「ミミルって何気に便利だね。」

「まあねー。」


 ミミルに先導されて食料品店へと歩いて向かう。ミカは私の背中に乗っているが、なんだか久しぶりだ。

「ミカが私に乗るのは久しぶりだね。アカネやフィオと一緒の時は乗ってなかったし。」

「私は賢者なんて呼ばれてるしイメージ壊したら悪いからな。私やユグドラシルみたいな存在は、他の生物をビビらせるのが仕事みたいなところあるしな。」

「私が相手ならいいの?」

「マキも私たち側の存在だからな。不老不死の存在は結構いるって話はしたと思うけど、基本的にはみんな対等だぞ。私たちは戦っても決着がつかないしどっちが偉いとかは無いからな。そもそも強ければ偉いなんて話でもないんだが、強さを重要視するものが多いから便宜上な。」

「私はなんか違う気もするけど、そういうことなのか。」

「不老不死になる過程はいろいろあるけど、マキは中でもイレギュラーだろうな。ちなみに私は産まれつきだ。」

 ミカは産まれた時から今の姿なのか。伝承の吸血鬼は儀式とかで作られるようなイメージだけど、ミカは人から変貌したとかではないんだな。


「食料品店に着いたよー。他にもいくつかあるけれどここはレーヴェって名前のお店だねー。」

 早朝なので店内は静かで私たちしか客は居ない様だ。商品のラインナップは肉類が豊富で、鳥・豚・牛等の生肉とハム、ベーコン、ソーセージといった加工品がたくさん置かれている。野菜や調味料も変わったものはないが過不足なく一般的なものは取り揃えられている。

「ここでは何を買うの?」

「この国の朝といえば具だくさんのライ麦パンサンドイッチだ。だからここで買うのはサンドイッチの具材だな。」

「ここにはパンは売っていないみたいだね。」

「パンはパン屋に行かないとだねー。ドワーフにはパン専門の職人も居るし、すごくおいしいらしいよー。」

「それなら次はパン屋へ向かうか。」


 必要な食材を集めてレジへと持っていく。購入するのはサンドイッチの材料のバター、クリームチーズ、ハム、卵、トマト、キュウリ、レタス、そしてフルーツジュースだ。昨日のレストランでも出てきたけど、炭酸入りフルーツジュースが街の名物なのか種類も量もたくさんある。

「おはようございます。会計お願いします。」

「いらっしゃいませー少々お待ちくださいね。」

 会計をしているのはドワーフの女性で慣れた手つきでレジ打ちをしている。

「全部で1500クローネになります。」

「ギルドカードで支払いお願いします。」

「はいお預かりします。変わった動物だと思ったら冒険者なんですね。」

「なりたての新人ですけどね。」

「カードをお返しします。頑張ってくださいね新人さん。」

「ありがとうございます。」

 会計を済ませてから店を出て、再びミミルに案内してもらい次はパン屋へと向かう。


「ドワーフは私を見てもそんなに驚かないみたいだね。」

「この街は冒険者が多い関係上変わった動物なんかも割と出入りするからね。冒険者をやっている動物は他には居ないだろうけど。」


「パン屋に着いたよー。」

 食料品店から少し歩くと比較的小さな建物のパン屋へと到着した。看板にはドヴェルグベッカーと書かれている。店と併設された工房でパンを焼いているようで、煙突から白煙が上がっていて外まで香ばしいパンの香りが漂っている。

 店に入るとドワーフの女性がカウンターで焼きたてパンの品出しをしていた。ドワーフのお店はどこも受付や会計は女性がやっているんだな。ドワーフの男性は結構むさくるしいからかな?

「おはようございます。」

「いらっしゃいませ、初めてのお客さんですね。ごゆっくりどうぞ。」

 商品棚に並べられたもの以外にも壁にかけられた木の枝に引っ掛けられたパンや、天井から吊るされたパンもありなかなか個性的な商品展示をしている店だ。種類が豊富でプレッツェルやクロワッサンといった私でも知っているものも多い。木の実入りのパンやバウムクーヘンもあるがサンドイッチには使えなさそうだな。

「どのパンを買うの?」

「サンドイッチに使うのはライ麦パンだ。丸パンでもいいんだけど、今回はスタンダードに四角い黒パンにしよう。4人分だし一番小さい500gの奴でいいかな。」

「ライ麦パンの小は300クローネですね。」

「支払いはカードでお願いします。」

「はいどうも。初めてのお客さんだからサービスで焼きたての菓子パンを1個ずつおまけしますね。冷めないうちに食べてね。」

「ありがとうございます。」

「おいしかったらまた来てね。」

 商品を包んでもらい、カードを返してもらってから店を出る。


 朝食の食材が揃ったので、サービスで貰った熱々のドーナツのような菓子パンを食べながら宿泊施設への帰路につく。

「専門店だけあって美味しいね。」

「私もパンを焼くけれど、自家製とはひと味違う感じだな。何か特別な食材でも使っているのかな?」

「私も一口貰ってもいいかなー?」

「はいどうぞ。」

 ミミルにドーナツを一口分ける。パンの成分を分析しているようだ。

「成分的には特別なものは入っていなさそうだねー。特別に美味しいと感じるなら職人の技術のせいなのかなー?」

「熟練の技術というやつか。まあ私のパンは趣味みたいなものだからな。」

「ミカのパンも美味しいけどね。」


 そうこうしているうちに宿泊施設へと帰ってきた。荷物を整理して早速調理を開始する。

「魔法でパパっと作っちゃうからマキは食卓の準備をしておいてよ。」

「おっけー。」

 ミカは風の魔法を使い食材を一瞬でカットして、スライスしたパンにバター・クリームチーズを塗って食材を挟みサンドイッチを完成させた。私はテーブルを拭き、サンドイッチ用の皿とフルーツジュース用のコップを用意した。食器や台拭きはキッチンに備え付けのものが有ったのでそれを使っている。

「あとは2人が戻ってくるのを待つだけだね。」

「いつも通りならあと30分くらいかな。半端な時間だしゆっくりしていようか。」

 ミミルも居るけど、ミカと2人きりになるのはしばらくぶりなので、アカネとフィオが戻るまで2人でごろごろして待つことにした。

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